多様な個性を活かす秘訣は「まず聞くこと」。サッカー選手から人事への転身で気づいた両者の共通点(前編)

「スカルプD」で、頭皮ケアシャンプー市場を確立させたアンファー。そんな同社の人事部労務研修ユニットでリーダーとして活躍する中村さんは、幼少期からサッカーを始め、プロを目指して海外クラブにも挑戦した経歴の持ち主。残念ながらプロにはなれなかったものの、現在は人事として社員と積極的にコミュニケーションを取りながら人材開発に注力しています。

この前編では、中村さんの価値観形成に大きな影響を与えたサッカー経験と、人事の仕事にたどり着くまでの道のりに迫ります。

【後編では、中村さんが注力する人材開発の取り組みやアンファーが大事にする組織の行動指針をご紹介】
*本記事の掲載内容はすべて取材時(2022年11月4日)の情報に基づいています

Profile

中村 竜次郎

アンファー株式会社
人事部 労務研修ユニット リーダー

大学卒業後、サッカーでドイツ5部リーグにトライアウト挑戦。その後、帰国し、新卒で食酢メーカーに入社し、人事業務を担当。整骨院専門の経営コンサルタントを経て、アンファー株式会社に人事として入社。サッカーで培ったチャレンジ精神、現場第一の目線、コンサルで得たロジカル思考を活かしながら、日々人事課題の解決に取り組む。

自己主張が強くなった高校時代。チームをまとめられなかった経験が今に活きる

海外でのサッカー挑戦は、小さい頃からの夢だったのですか?

中村さん

「そうですね。夜中3時に目覚ましをセットし、BSで海外サッカーの試合を見ていました。寝不足が続くのですが、世界最高峰のプレイを見たい欲は止められなかったんです。その頃からサッカー選手を夢見るようになりましたね。ただ、その後、中学生になると背が伸び悩み、レギュラーから外されるなど悔しい思いもしました…。とはいえ、高校に入ってからは1年で10センチも背が伸び、プレイにも良い影響が出てきて、選手として評価されるようになったんです。でも、当時を振り返ると反省点もあり…」

どんな反省点があったのですか?

中村さん

「サッカー選手としての自信が芽生えるに従って、自分の主張ばかりが強くなり、チームメイトの話がちゃんと聞けなくなりました。例えばぼく自身、当時は誰よりも練習し、努力したら報われると思っているせいか、思うように上達しないメンバーを練習不足だと決めつけて責めるばかりで、チームをうまくまとめられなかったんです。今になって思うと、同じチームでも、一人ひとり考えていることは違う。だから、チームをリードする立場の人間は、メンバーの考えに耳を傾けた上で、どうやってチームとしてパフォーマンスを最大化するか、考える必要がありました。人事になった今でも大切にしていることです」

大学に入ってからはどうでしたか?

中村さん

「大学のサッカーチームは、同じレベルで努力するメンバーが揃っており、居心地が良かったです。ただ、選手としては、国内のJリーグから声がかかるレベルではなかったので、普通に就職するつもりだったんです」

でも、そこから海外に渡ってサッカーをやることになるんですよね?

中村さん

「そうです。エージェントから声がかかったんです。ただ、プロ選手の契約ではなく、日本で行われるトライアルに合格すれば、ドイツのクラブに契約前提で練習参加できるという話でした。その育成期間にクラブからオファーをもらえればプロになれるんです」

そこでまずはトライアルを受けたのですね?

中村さん

「はい。トライアルでは、イギリスから来ていた代理人に『You are crazy』とプレイを褒められ、合格することができました。リズム感やステップなど、プレイスタイルが日本人っぽくないと言われたんです。小学生のときにテレビで見た海外選手の動きが刷り込まれていたのかもしれません」

とはいえ、プロになれる保証もなく、海外に渡るのは不安ではなかったですか?

中村さん

「むしろ海外だからこそチャレンジできると前向きでした。当時は、海外でサッカーやろうという人は周りにはおらず、人と違った経験が得られるならおもしろそうだなと思ったんです」

いざはじまった海外での生活は、どうでしたか?

中村さん

「楽しかったですよ。ただ、最終的にはサッカーを諦める決心もつきました。というのも、ほかの選手は、手を骨折してもギプスはめて練習に参加するくらい、プロになることにこだわっているんです。その人にあとで『なんでそこまでしてサッカーをするの?』と聞いたんです。そしたら、『ここで契約をとらないとおれには後がない。家族を楽にしたいから、なんとしてもプロになる必要があるんだ』と言うんです。切実さが違うと思いました。ぼくはこれまでずっと、自分のためにプレーしていたんです。周りと比べて低い自分の志に気づき、これではプロでは通用しないと、日本で就職する道に切り替えることができました」

それぞれが何を思っているのか聞くことから始める。人事とサッカーの共通点

海外から帰国したあとは、すぐに就職されたんですか?

中村さん

「はい。大阪にある老舗の食酢メーカーに入社しました。海外から帰国したタイミングだったので、日本食を海外で展開することに興味を持ったんです。その会社はジェネラリストを育成する方針だったので、人事や広報、製造や販売も幅広く経験しました。なので、初めて人事業務を経験したのもその会社ですね。主に新卒採用を担当しました。といっても、社会人1年目なので、右も左もわからず上司の指示を聞いて動く感じでしたけど」

初めての人事業務で苦労したことはありますか?

中村さん

「人事業務に限らずですが、理論的には『こうしたほうがいい』ことでも、関係性がなかったり、相手が考えていることと違ったりすると、なかなか賛同を得にくい点です。仕事をやるのは当たり前ですが、人ですよね。そのため、論理的な正しさよりも、もっと感情的な部分が優先されます。正しいと思ったことははっきり言う性格だったので、最初はモヤモヤすることも多かったですね。あとは、ぼくが良かれと思ってやったことも、喜ぶ相手がいなかったら怒られるんです。1社目の会社で、誰かのために何ができるかを考えるという、社会人に必要なマインドを叩きこまれました」

どのように乗り越えましたか?

中村さん

一人ひとりの考えを理解できるよう、社員のみなさんの話を積極的に聞くようにしました。これはサッカーの経験から学んだことでもあるんですが、試合に勝つという目的は同じでも、一人ひとり異なった考えや個性があります。ただ、チームスポーツなのでみんなの力を結集して最大化することが、試合に勝つためには必要。そのためには、それぞれが何を思っているのか聞くことから始めるんです。人事の仕事もそう。社員はもちろん経営陣の意向も聞きながら多様な個性を活かし、組織というチームのパフォーマンスを最大化する必要があると考えています」

チャレンジを後押ししてくれる場所が、アンファーだった

そこから、アンファーに転職したきっかけはなんだったのですか?

中村さん

「ワークライフバランスを考えた末の行動です。食酢メーカーのあと、コンサルティング会社に入ったのですが、ハードな働き方をしていて、プライベートな時間を取れない日々が続いていました。仕事に対するやりがいは十分に感じていたのですが、結婚を機に、家族との時間を作ることも考えて転職を決めたんです。転職活動は、3日間で30社にエントリーし、複数の会社とお会いしました。何社かお話させていただくうちに、ぼくの熱量と、面接をしてくださった方々との熱量がぴったり合ったのがアンファーだったんです」

熱量がぴったり合ったのが入社の決め手だったのですね。

中村さん

「はい。アンファーは人事の求人には珍しく『未経験者歓迎』という求人でした。なぜならチャレンジを後押しする会社であり、既存人事の枠に留まらず、変化に対応しながら業務を進める人が欲しいという意図だったそうです。内定をもらったあと、本当はちょっとゆっくりしてから働き始めるつもりだったのですが、『可能であればすぐにでも来てほしい』とお話をいただいて、入社時期を早めました。それくらい、合っている会社だと思ったんです」

入社後はまずどんな業務を担当しましたか?

中村さん

「研修に手が回っていないという話を聞いたので、新入社員研修や階層別研修などから取り組みました。当時はリアル会場で社員が研修を受けるスタイルだったのですが、本社から別の場所へと移動する必要があり、利用率もそこまで良くなかったんです。そのため、Eラーニングを提案しました。Eラーニングシステムを提供する会社を10社ぐらいリサーチし、良いと思った会社を提案したところ、すぐに予算がつきました。入社したのが3月頭で、4月1日から施策の実行というスピード感です

入社して1ヶ月ですか…。それは速い。とはいえ、新たに取り組む業務に不安はありませんでしたか?

中村さん

「経験がなかったり、わからなかったりしたら調べればいいというスタンスなので、あまり不安は感じませんでした。例えば、研修設計のあとに任された中途採用では、サッカーつながりで人材業界で働いている友人がいたので、いろいろと教えてもらいました。どんなエージェントがいいのか、エージェント以外に効果的な採用方法は何があるのか……話を聞くうちに、こちらが何をすればエージェントが動きやすいかもわかったので、早速、友人から得た情報を仕事に活かしましたね」

続く後編では、アンファーでの中村さんの現在の仕事や、組織として大事にする行動指針について話を聞きました。

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会社概要

社名 アンファー株式会社
設立 1987年10月8日
事業内容 化粧品、サプリメント、健康食品、専門医師監修によるクリニック専売品などのオリジナルエイジングケアプロダクツの研究開発及び製造・販売・卸業務
従業員数 235名(2022年6月時点)
会社HP https://www.angfa.jp/

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