「社内DX」という言葉は使わない。既存ツール活用による社員一人ひとりの生産性向上が私のミッション|後編

新卒で配属された経営戦略室時代から人事に至るまで、試行錯誤を繰り返しながら未知の仕事に取り組んできた古田さん。考えることが好きだと話す古田さんの目下の思考材料となっているのが、社内教育制度の運用です。

そこで後編では、現在課題として向き合う社内教育制度の運用や、古田さんの今後のミッションについて話を聞きました。
【前編はこちら】

Profile

古田 慎悟

株式会社JEMS
人事労務課 人事チーム

大学では空気の研究をするために気象学を専攻。新卒で、これからの時代に欠かせないITと環境問題をかけ合わせた事業に目が止まり、JEMSに入社。入社直後から経営戦略室に配属され、幅広い業務を経験。カオナビの導入をきっかけに人事業務にも携われるようになり、現在は社内教育制度の運用や社内規程の整備、テレワークなど新しい制度の設計なども行う。

「社内教育」を「業績向上」に結びつけることの難しさ

現在、人事として向き合っている課題を教えてください。

古田
さん

「新卒研修、既存社員向け研修、映像研修をはじめとした社内教育制度の運用に課題を感じています。社員に対してどんな目的で勉強して欲しいのか、そして教育を受けた結果どうなって欲しいのかをうまく伝えることが非常に難しいんです。会社からの押し付けになってしまうと、社員の学習意欲を削いでしまいます。そのため、社員の意欲を高めるように目的を共有する必要があり、能動的に学んでもらうための仕掛けを模索しています。また、教育の効果を反応、学習、行動、結果の4段階で表すカークパトリックの4段階評価法にもあるように、教育では受講者の満足度や理解度だけでなく、業績にどう影響を与えたのかまで評価することが重要です。そのため、会社の業績向上に紐づくような教育制度をどうやって設計するかも課題に感じているところです」

単純に教育制度を整えるだけでなく、それをどう成果に結びつけるかまで考えるわけですね。

古田
さん

「はい。たとえば外部研修を受けてもらい、レポートを提出してもらっても、その後の行動変容や、組織の業績にどう貢献したのかまでは追えていません。研修を受けても3ヶ月後に内容が活かされていないと受けた意味がなくなるので、それを教育制度の運用担当者としてどうにかしたいと日々試行錯誤しています」

 

手段を目的化しないために「社内DX」という言葉は使わない

教育制度の運用以外に感じている課題はありますか?

古田
さん

「JEMSは、ここ数年の企業成長と共に社員数を増やしてきたため、各等級や役職で求められる役割が明文化できていません。そうすると、上に上がるためにどうしたらいいのかわからないですし、役職が上がったとしてもそのあとどうすればいいのかわからない。やはり、どんな役割を果たせるようになったら役職が上がるのかわからないと、仕事の意欲が湧きにくい部分もあると思います。そのため、社内教育制度の運用と並行して、各等級や役職ごとに求められる役割を定義したいと考えています」

具体的に、どのような取り組みを検討していますか?

古田
さん

「現在考えているのは、eラーニングシステムと連動させて、求める役割を定義したいと考えています。まず、eラーニングシステム上で、役職や等級ごとに学習コンテンツを選定します。その学習コンテンツを受けた上でテストを行い、基準をクリアできれば、定義した役割を果たすために必要な能力は身についていると判断し、昇格・昇進の機会を得るという仕組みです」

 

eラーニングシステムを使い、役割の定義だけでなく、学習コンテンツやテストも受けてもらう予定なのですね。

古田
さん

「そうです。なかでも人間的な成長を含め、どこの会社でも通用する普遍的なスキルを身につけてもらいたいと考えています。ほかにも、社内研修を含めたさまざまな制度に関する内容を動画化し、いつでも受講できる、かつ短い時間で学びや理解を得ることができる状態にしようと考えています。講師の方々も忙しいので、何度も依頼するとなるとスケジュール調整が大変ですので」

ありがとうございました。最後に、古田さんが今後、取り組みたいことを教えてください。

古田
さん

「JEMSでは、カオナビを用いてエンゲージメント分析を実施しています。この情報は機密的情報のため、社内に公開することは現状できませんが、社内教育制度や人事制度など、従業員が関わるあらゆる制度にその結果を活かしていきたいと思っています。そうすることで、会社からの押し付けにならない制度の実現につながると考えているためです。これらの実現に向けて、どう落とし込んでいくかを現在模索しています。また、社内DXの促進が、今後の私のミッションです。ただ、正直に言うと「社内DX」という言葉には仰々しさを感じており、DXという手段を目的化してしまわないためにも、この言葉はあまり使わないようにしたいと思っています。そのため、私自身は社内DXの促進とは、既存ツールの活用による社員一人ひとりの生産性向上に寄与することだと解釈しています。カオナビやeラーニングシステムはもちろん、当社が使っているすべてのITツールを、いかに社員の方たちが使いやすく、また業務効率化につながるように運用するかが勝負です。それだけでなく新しいツールやAIなどの新技術もキャッチアップしながら、一人ひとりの生産性が向上する仕組みを構築していきたいですね」

 

編集後記

穏やかな表情ながら、熱量のある話ぶりが印象的だった古田さん。「カオナビの運用から離れたくない」と言ってもらえるほど、ITツールを使って何かできないか考えるのが好きなようで、アップデートされたり、まだ使いこなせていない機能があったりするからこそ、考える余白を持てることが嬉しいようでした。また、幼少期に感じた空気に対するちょっとした違和感を見逃さず、自ら問いを立てて環境問題に興味を持ったエピソードを聞き、自然と物事に疑問を持って考えることができる人なんだなと感じた取材でした。

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会社概要

社名 株式会社JEMS
設立 1994年4月1日
事業内容 排出企業向け廃棄物処理手続きにおけるリスク可視化、適正管理支援、資源循環企業向け基幹システム構築、自治体向け基幹システム構築、災害廃棄物に関わる管理システム構築
従業員数 288人(2022年10月時点)
会社HP https://www.j-ems.jp/

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