迷ったら「全部やってみる」。人事として成長するためのシンプルな行動指針

ネッツトヨタ東埼玉に営業として入社した橋本さんですが、2年後には本社へと異動し、人事になります。最初は本社のことを「よくわからない怖いところだと思っていた」と笑いながら話しつつも、現在では業務の幅が大きく広がり、グループ会社の人事制度統一なども担うようになりました。続く後編では、そんな橋本さんの視点で見た自社の人事課題や今後の取り組みについて話を聞きました。

前編では営業から人事になるまでのエピソードや、業務に慣れたと感じた出来事について紹介

Profile

橋本 光正

ネッツトヨタ東埼玉
管理部 人事グループ

営業職で入社後、本部にて人事制度改定に伴う要員として異動。社会保険業務や労務管理、退職年金管理、資産形成案内、入退社管理・手続き、給与業務などを担当するほか、グループ会社の人事制度統一にも携わる。

新しいシステム導入は「現場の作業負担が減るか」も大事な視点

改めて、橋本さんの現在の業務について教えてください。

橋本さん

「労務管理、給与管理、資産形成教育、健康管理など…ほかの皆さまもそうだとは思いますが、一口に人事といっても各社ごとに線引きはさまざまだと思います。こと、『私』という個人では、採用や教育以外のいわゆるHR業務を幅広く行なっています。また、グループ3社の人事制度の統一や制度改定にも携わっており、全グループの給与水準を統一するために、モデル賃金のシミュレーション表作成なども行なっています」

さまざまな業務を経験されていると思いますが、印象に残っている業務はありますか?

橋本さん

「勤怠ツールの導入や変更には、苦労しましたね。以前は、各店舗から手書きの勤怠表がFAXで送られてきて、目視でチェックしていたのですが、合っていなかったら差し戻し、また訂正版をFAXでもらって…と、かなり時間と手間がかかっていました。そこで、勤怠ツールの導入を会社として決断したのですが、今度は慣れないログイン作業に現場から『前の方が良かった』『余計にめんどくさい』といった声も挙がるようになってしまいました。どうしても前例がないものや新しいものへの抵抗感はあるので仕方が無いことだとは思いますが、内心『よかれと思ってやっていることはエゴなのか…』と思ってしまうこともありましたね…。ただ、地道にコツコツと問い合わせに対して対応を行うことで、こうした声も減ってきています。システムによる見える化に前向きな声もありましたが、人事側はシステムの導入によって楽になる反面、従業員側に負担を強いることもあります。そのため、こうしたツールの導入は私たちの作業負担だけでなく、現場の作業負担が減るかどうかも視野に入れる必要があると感じています」

業務内容を聞くと、人事のなかでもとくに労務領域に携わっているかと思いますが、ご自身の性格に合っていると感じますか?

橋本さん

「中学・高校の頃は、弁護士や検事といった法律に関わる仕事にも興味を持っていました。そのため、自然と法律に関わることの多い、労務の知識を覚えることもあまり苦ではありません。トリビアのような豆知識に出会えるのが、楽しいんです。ややこしい内容も多いので、それをどうやってほかのメンバーに分かりやすく伝えられるか、考える過程もおもしろいですね」

「誰かの役に立ちたい」成果が見えにくい人事の仕事に前向きに取り組める理由

橋本さんの視点から、現在、貴社が抱える人事課題について教えてください。

橋本さん

1つは、業務の属人化です。弊社は、他部署への異動もほとんどなく、本部の新規採用もありませんので、どうしても一人ひとりに業務が属人化してしまうところは課題だと感じていますね。現状では、担当者が不在の場合、業務が滞ることになってしまいますので。また、会社全体で見たときに女性管理職がまだまだ少ないなど、多様な働き方にも課題があると思っています。ジェンダーへの配慮や性別を問わず働きやすい環境をいま以上に整えていき、それを社外に発信することで採用候補者も増えてくると思いますので、このあたりは今後注力して取り組むべきだと考えています。加えて、現場の方にも『人的資本経営』や『ESG』など、人事・経営場面でよく出るキーワードを知ってもらいたいと思っています。その結果、会社の施策に関しても一定程度、理解を示してもらえると思いますので、こういったキーワードを分かりやすく伝えるのも、人事の役割の一つだと思っています」

いまお話いただいた課題の解決に向け、検討している取り組みがあれば教えてください。

橋本さん

「属人化についてはカオナビなどのシステム導入が1つの解決策だと思っています。ただ、数々のシステムを導入すると、今度はIDやパスワードの管理が煩雑化してしまうといった状態に陥ります。そのため、シングルサインオンなどを使って、できるだけシステムまわりをシンプルにしていく必要もあると感じます。加えて『健康経営優良法人』や『えるぼし』などの取得を積極的に行っていくことで、誰もが働きやすい環境を整えていく。その一端を、担えればと思っています」

そんな橋本さんが、人事の仕事に前向きに取り組める原動力を教えてください。

橋本さん

「シンプルに、誰かの役に立ちたい気持ちです。頼ってもらえたことには応えたいという思いが常にあります。人事の仕事って成果が目に見えにくいので、やりがいや達成感を得づらいかもしれません。ただそれでも、最初に話したシンプルに『人が好き』というのが出発点で、だからこそ人に頼られるのもうれしいんです。また、相手からの要望に『最初からNGを出したくない』という思いも強いんです。いままでは依頼がなかったのに急に、『この供託*やっておいて』と言われたことがあり、自分で対応方法を調べてなんとか対応したことがありました。『できません』と言うこともできたのですが、そこで『やります』と返事をするところが、私の良さであり、良くないところでもあるんですよね…。仕事を抱え込んでしまうこともありますので…。ただ、期待をしてもらったらできるだけ応えたいですし、自分の成長のためにも、最初から諦めることはしたくないんです。経験のない領域だとしても、任せられた業務に合わせて勉強します。『知見がなくてできません』というのは、悔しいので」

*金銭、有価証券、その他の財産を、国家機関である供託所に寄託し、供託所を通じてその財産をある他人に受け取らせることによって、一定の目的を達する制度

ありがとうございました。最後に、橋本さんが仕事に取り組む上で大事にしていることを教えてください。

橋本さん

「いま話したことにも似ていますが、好きなアーティストがライブで言う『全部やって確かめればいいだろ』という言葉が大好きで、私のバイブルなんです。やるかやらないか迷ったらやるを選択したいですし、『やらずに後悔するくらいならやって反省したい』というのが持論です。そうやって人事としても成長してきたと感じます。もちろん、引き受けてから大変だと思うこともあると思いますが、明けない夜はないとか、止まない雨はないとか言うように、大変な状態がずっと続くわけではないですしね」

編集後記

「自分自身の取材経験は初めてで新鮮でありながら、実はとても緊張していました…」と、取材後にメールをくださった橋本さん。とはいえ、取材中、緊張している様子はまったく感じず、とくに驚いたのがお話してくださるエピソードの詳細具合です。ありありと情景が浮かぶように話していただき、本当に記憶力の良い方なんだなと、話を聞きながら感心してしまいました。「全世界に公開するには申し訳ない内容でただただ恥ずかしい」とおっしゃっていましたが、包み隠さず、繕うことなくお話いただいたからこそ、そんな橋本さんの人柄をテキストだけで伝えるのはなかなか本当に難しい…と感じた、今回でした。

*本記事の掲載内容はすべて取材時(2024年3月6日)の情報に基づいています。

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会社概要

社名 ネッツトヨタ東埼玉
設立 1966年
事業内容 トヨタ車新車販売、自動車用品・部品販売など
従業員数 711名/835名(トヨタ東埼玉グループ、NTソリューション含み) ※2023年3月現在
会社HP https://mynetz.jp/

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