セールスからまさかの人事へ。『謎に満ちた怖い場所』という印象だった本社の人事に馴染むまで

埼玉県内に33の店舗を展開し、新車・中古車の販売を行う、ネッツトヨタ東埼玉。1966年に設立し、50年を超える歴史を持つ同社で、人事を務めるのが橋本さんです。橋本さんは検討時から購入後まで長くお客さまとの関わりが続く自動車ディーラーの仕事に興味を持ち、同社に営業として新卒で入社。2年経った頃に、本社に異動し、人事のキャリアが始まりました。前編では、そんな橋本さんが人事という仕事に辿り着き、慣れるまでの過程について話を聞きました。

後編では橋本さんの視点で見た自社の人事課題や、今後の取り組みについて紹介

Profile

橋本 光正

ネッツトヨタ東埼玉
管理部 人事グループ

営業職で入社後、本部にて人事制度改定に伴う要員として異動。社会保険業務や労務管理、退職年金管理、資産形成案内、入退社管理・手続き、給与業務などを担当するほか、グループ会社の人事制度統一にも携わる。

「人が好き」という思いで営業として入社。2年後にまさかの人事へ

もともと、ネッツトヨタ東埼玉に入社を決めた理由は何だったのですか?

橋本さん

「シンプルに『人が好き』だったことが大きいですね。実は、私は幼少期に母を、中学生のときに父を亡くしているのですが、身寄りがない私に友人のご両親が『一緒に住もう』と言ってくれたのが、原体験として心の中にずっと残っています。友人のご両親には、本当の家族のように接してもらえていて、血縁関係よりも濃い絆で結ばれているように思います。この原体験があるからこそ、人が好きって思いますし、人とのつながりを人一倍、大切にしたいと思うんです。そのなかで、検討時から購入後まで長くお客さまとのつながりが続くディーラーに興味を持ちました。車ってライフステージの変化など、これからの生活を想像しながら買うことが多いので、実際にお客さまの話を聞きながら、一緒にイメージを膨らませていきたいと思ったんです。加えて、地元の埼玉県内で仕事できることも決め手でした」

ディーラーの営業として入社した橋本さんが、人事になったタイミングを教えてください。

橋本さん

「新卒で営業として入社し、2年ほどで本社の総務部門へ異動となりました。弊社の本社メンバーは、基本的に中途採用などは行なっておらず、営業やサービスエンジニア、フロアスタッフといった店舗で働く別の職種からの異動がほとんどです。私はそのなかでも早い方で、もっと営業の仕事をやると思っていたので、まさか2年で本社に異動するとは思ってもいませんでした。営業のときは店舗で働いていたので、ほとんど本社の様子や仕事内容は知らない状態でしたね。でも、私もいまでは17年目。現在も業務で各店舗に行くことは度々あるのですが、いまの営業の方たちは、僕が営業をやっていたことは一切知らないと思います(笑)」

入社して2年で営業から本社の人事へ異動することになるわけですよね。物足りなさや不安は感じませんでしたか?

橋本さん

「物足りなさと言うより、営業のときは本社のことも人事の仕事内容も何もわからない状態だったので、不安でいっぱいでした。正直、『本社は、よくわからない怖いところ』と思っていましたね…。でも異動してみると、社長や役員、部長クラスの方も気軽に話しかけてくださったり、会議の場でも『どう思う?』と意見を求めてもらったりとウェルカムな環境で温かく迎え入れてもらい、良い意味でギャップがありました。人事制度を見直すことが異動の目的の一つだったので、まずはプロジェクトに議事録係として入っていきました。そのプロジェクトにはこれまで関わってこなかった店長や部長、役員がいましたので最初の頃は緊張したのを覚えています。その後、回数を重ねるうちに意見を求められるようになってきました。そこで、意見できないと悔しいというか、情けない気持ちになりましたね…。こうした悔しさがトリガーとなり、わからないことは夢中で調べました。当時はここまでインターネットも普及していませんでしたが、インターネットで検索したり、社内の詳しい人と会話したりすることで、議論できる状態に持っていったんです。すると、プロジェクトで意見した際に議論のきっかけになることもあり、なんとか一員になれてきたかなと思いました」

元々は、よくわからないという印象があったんですね。

橋本さん

「はい、現場で働く人は少なからず思っているところだと思うので、これからはできるだけ本社で考えていることをどんどんオープンにしていきたいんです。というのも、店舗では本社の部署ごとの担当領域について、詳細には把握できていない方が多いんです。私が店舗で働いていたときにも、本社に電話をしたら『その件はこちらでは対応できません』と断られてしまったことがあったんですよね…。いまもよく店舗から問い合わせが来ますが、気持ちが分かるので、私宛に受電したときにはできるだけ調べて教えたり、対応できる部署に繋いだりしています。でも、『とりあえず橋本に電話すればOK』と広まってしまったのか、最近は店舗からの電話の頻度が増えてしまって(笑)。本社の情報をいまよりもオープンにできれば、店舗メンバーが本社へ問い合わせをしたいときに、問い合わせ先に悩むことも少なくなると思ったんです。また、本社の仕事内容を理解したうえで挑戦したい人が挙手できるような社内公募制度も導入したいんです。さらに本社と現場、お互いに納得感を持って施策などを進めるためにも、情報をオープンにすることは大事だと思っています」

向き合う相手がお客さまから従業員へ。相手の求めることを想像する点では変わらない

最初はどんな仕事かもわからなかったという橋本さんが、『人事に慣れてきた』と思えた瞬間は、いつですか?

橋本さん

「印象的だったのは、東日本大震災のときです。地震のあと、埼玉県内では計画停電*があったのですが、川口の本社は偶然にも停電が起らないエリアに入っていたので、各店舗に情報が発信できる基地として機能できていました。何か店舗の役に立てることをしたいと思い、店舗ごとに何時から何時まで停電するのかをまとめて全店舗に発信したのですが、このとき頭にあったのは『やらずに後悔するなら、やって反省すればいい』というマインド。現場の方が本当に求めている情報かどうかはわからなくても、あったら助かるかどうかを想像し、出せる情報を提供することを心掛けました。人事に慣れたというか、人事として自分のやるべきことが分かった瞬間でしたね。また、小さいことかもしれませんが新入社員研修のとき、アイスブレイクのために毎回違った『小話』を入れるようにするなど、仕事に一工夫入れることができるようになってから、『あぁ、ようやく慣れてきたな』と感じました。毎回、ややウケくらいなのですが、それでも仕事に一工夫入れるのが好きなんですよね」

*大規模な停電を防ぐために、地域ごとに時間帯を決めて電力供給を停止する措置のこと

営業時代の経験も活きているのでしょうか?

橋本さん

「そうですね。営業のときも『お客さまの立場に立って考えよう』と言われていましたが、人事もまったく同じ。お客さまから従業員に変わっただけで、相手の求めていることを想像して行動することは、なにも変わりません。例えば高額療養費の『限度額適用認定証』の発行依頼があった際、『大丈夫?』などと気遣うことは忘れないですし、医療費の支払い方法を限度額適用とするか、高額療養費として後日払い戻しの方が良いかなどのアドバイスを行うケースもあります。簡単に言うと、問い合わせに対して相手が知りたいと思う情報を想像して付加価値をつけるということです」

「人が好き」という理由で営業として入社したものの、2年後には人事になっていた橋本さん。最初は、仕事内容も想像できなかったポジションに戸惑いもあったようですが、ご自身の得意なことや、これまでの経験も活かしながら、橋本さんならではの人事像を確立してきました。続く後編では、そんな橋本さんの視点で見た自社の人事課題や、今後の取り組みについて話を聞きました。

*本記事の掲載内容はすべて取材時(2024年3月6日)の情報に基づいています。

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会社概要

社名 ネッツトヨタ東埼玉
設立 1966年
事業内容 トヨタ車新車販売、自動車用品・部品販売など
従業員数 711名/835名(トヨタ東埼玉グループ、NTソリューション含み) ※2023年3月現在
会社HP https://mynetz.jp/

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