何よりも大切な経営資源は“人”。だからこそ、人事の「既定路線」を壊したい
株式会社ミュゼプラチナム |
人事部 部長
畠中 裕一さん
2019.03.28
もともとは証券会社勤務だった畠中氏。ミュゼプラチナムに転職後、様々な転機が重なり人事を担当することに。人事という側面から社内改革を推し進める畠中氏に、これまでの課題解決法や人事に求められる要素などについてお話を伺った。
Profile
畠中 裕一
株式会社ミュゼプラチナム
人事部 部長
大学卒業後、証券会社に入社し13年間務める。株式会社ミュゼプラチナムの創業オーナーに出会い、2012年冬に転職。当初は営業として全国を飛び回り、ミュゼブライダル(当時)の企画開発などを担当。2014年に人事部へ異動。以降、人事制度や採用システムの整備などを手がけ、同社の経営基盤を底支えしている。
前職から培ったロジカルシンキングとデータセンスが、強力な採用戦略につながった
はじめに、御社の事業内容についてお伺いできますか?
「全国に美容脱毛サロンを180店舗運営しています。最近では350万人以上の会員に向けた化粧品の販売やECサイトの運営、そして会員を媒体と捉えたメディア事業(ミュゼマーケティング)も展開しています。」
そんなミュゼプラチナムに畠中さんが入社された経緯とは?
「新卒で証券会社に入社し資産管理を担当していたのですが、先に弊社に転職していた元同期の一人から創業オーナーを紹介されたんです。その際に新規事業の話を聞いて、自分のキャリアが活かせて面白そうだと感じ転職しました。入社後は、結婚式場との提携企画を立ち上げ全国を飛び回る日々。前職時代から続けていたマーケティングの勉強が役に立ちました」
営業としてお忙しい中で、人事に異動されたきっかけは何だったのでしょうか?
「入社当時から、なぜか当時の人事部長に『人事に来い』とずっと誘われていまして。2年間断り続けていたものの、人事評価面での課題を感じていたこともあり、自分が人事に携われば何か変えられるのではと思い始めました。そこで、『評価制度を変えられるのであれば異動します』と交渉して異動が決まり、人事企画として働く……はずでした」
はず、とは?
「当時の採用担当に経営やマーケティングに強い人がおらず、エリア特性に合わせた採用計画が組めなかったり、人材要件フレームが噛み合わなかったりということが続いていました。そこで『きみは論理的に考えられて、数字にも強いだろう』と採用課にアサインされ、現在は年間1000名の採用に従事しています。
弊社の事業は、サロン開店後は機材面の設備投資がほとんど必要ありません。 “最大の投資先は人”であり、適正人数を適正配置することこそ、弊社の成功戦略です。どの地方も一律的に採用するのは難しいため、どのような採用計画を練り、いかに計画に沿って採用していくかが重要。実際に人事に携わってみると、前職時代からずっとマーケティングの勉強をしてきたことが非常に役立っていますね」
効率化を図った人事改革が、“思考や基準の共有化”という思わぬメリットももたらす
一見かけ離れている人事とマーケティングですが、実は密接につながっていますよね。異動後は、どのような改革を推し進められましたか?
「社員がどんどん増えていることもあり、まずは人事評価システムをカオナビに変え効率化を図りました。システムを内製すると、使いたいときに使えない、仕様を変更したくても時間がかかるといったことが起こりえます。外部のクラウド型サービスなら、その点をクリアできます。
また、マネジメント層の意識自体を変えていくためにも、使いやすく主体的に評価できるシステムにしたかったというのもあります。例えば、本社にいる約170名の社員のうち新卒は2名だけ。中途入社のメンバーは前社のマインドを引きずりやすいですし、これだけ新卒社員の割合が低いと下からマインドを醸成できません。今でもマインドの軸の作り方を試行錯誤しています」
マインドの浸透に四苦八苦している企業は多いですよね。その他に取り組まれたことはありますか?
「2015年から、サロンスタッフの採用は基本的にすべてWEB面接を活用しています。予め設定された15問程度の質問にテキストで回答していただき、最後に3問だけ応募者自身がスマホで動画撮影して応募するシステムです。取り入れる前は、6名の採用担当者が面接のために全国を飛び回り会社に揃うことがほぼなかったため、選考基準にどこかしらズレが生じていました。それが、採用担当者たちが同じ動画を見て情報交換することで、基準が明確になり統一されていったのは採用効率を高める以上のメリットでした」
嬉しい誤算ですね。
「はい。また、入社決定までの時間も短縮できました。以前は地域によっては応募から決定まで1ヶ月かかることもあったのですが、現在は平均4日。ときには来週から働いてくださいということもあります」
お話を伺っていると、即決即断でどんどん動かれている印象があります。
「社風もあるかもしれませんね。創業オーナーをはじめ経営陣はみな『立ち止まるくらいなら動け!』と言い、理にかなっていれば導入でもなんでも早いんです」
社外に出てステップアップするキャリアプランを示し「ミュゼで働いていてよかった」と思う人を増やしたい
御社の人事的な強みを教えていただけますか?
「復職する女性が多く、勤続年数が比較的長いことでしょうか。ライフステージの変化を考慮し、女性に向けた新たな人事制度の導入にも積極的です。弊社は女性4,300名に対し男性はわずか60名ですが、男女差を抜きにしても業界初の人事制度はいくつもあります。例えば2年前に設けた“リフレッシュ休暇制度”は、有給休暇と組み合わせて5日間の休みが取れて、しかも4万円がもらえるという制度です」
休める上に補助金とは! コストがかなりかかるのでは……。
「確かに何もしないよりはコストがかかります。でもこの制度のおかげで社員が働き続けてくれるのであれば、新しく人を採用するコストより安いと考えています」
たしかにそうですね。では、畠中さんが感じられている人事課題などはありますか?
「キャリアプランの明示化ですね。サロンスタッフから店長、エリアマネージャー、ブロック長、営業部長とキャリアを積んでいくのですが、エリアマネージャー以上の役職は人数も限られ固定化しているのが実情。となると、店長以降の新たなキャリアプランも示さないと、社員のモチベーションが上がりません。
そこで、例えば採用を手伝ってもらう新しいポジションを作ったり、店長経験者の独立・転職を成功例の一つとして見せたりすることを考えています。“ミュゼにいる意義”と“いつでも帰ってこられる環境”を用意することで、ミュゼで働いてよかったと思ってもらえるのではないかなと」
今の時代、外に出てキャリアアップしている人も確かに増えていますし、様々なキャリアパスが示せそうです。
「一方で、これからは離職率の低い新卒採用に軸足を移したいとも考えています。どんな比率がいいかを探り、中途採用と新卒採用とで役割分担するためにも人事の人数を増やしたいですね。メンバーを増やすにも、もちろんロジックと説明が必要ですが」
退職する“本当の理由“は何なのか?見えない情報を拾い上げ、人事の既定路線を壊したい
数字を読めること、ロジカルな思考という畠中さんの強みが多方面で発揮されていますね。その他に感じていらっしゃる人事課題はありますか?
「1年以内の早期離職対策ですね。ほとんどの退職理由は“一身上の都合”ですが、マネジメントなのか、勤務体制なのか、何かしらに対して不満を感じたことがあったはず。そういう“本当の理由”を拾い上げて傾向を掴み、制度的に解決できないかと。ゆくゆくは人事評価も採用面接と同じように動画で出来ないかとも考えています」
あらゆることを“仕組み化”することに取り組まれていますね。
「そうですね。だからこそ、“情報をいかに集約するか”にも気をつけています。評価シートのテキストだけでは見えないものをいかに拾うか、一つのフィルターしか通さないことで欠落してしまう情報がないようにする、など。どこかしら、人事の既定路線を壊したいなという思いがあるのかもしれません」
まるで企画開発担当者のように新しい策を模索されていらっしゃいますね。そんな畠中さんが、人事の仕事をする上で最も大切にしていることはなんでしょうか?
「人の話を聞くこと、です。部長などの肩書き問わず、また外部も含め様々な人から話を聞くことを心がけています。トレンドや新たな手腕を知る上で外部の話は大切ですし、どの部署で何が起こっているか、どんな事業展開しているかを把握することも人事に欠かせません」
最後に、これからの人事に求められる要素について教えてください。
「幅広くアンテナを張ることでしょうか。人事に限定した本ばかり読むより、マーケティングでもなんでもあらゆる情報に触れ、様々な知見を人事に活かしていくほうがこれからの時代の流れに即していくのではないかなと思います」
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会社概要
社名 | 株式会社ミュゼプラチナム |
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設立 | 2012年 |
事業内容 | 美容サロン運営、化粧品・美容商材企画・開発、Eコマース運営、メディア企画・開発 |
従業員数 | 約4,300名 |
会社HP | https://musee-pla.com/ |