顧客満足は、従業員満足によってもたらされる。 よりボルボを愛していただくために、人事ができる仕組みづくりとは

スウェーデンの自動車メーカー「ボルボ」の日本法人であるボルボ・カー・ジャパン社(以下、ボルボ社)。設立から40年以上続く同社は、ボルボ愛にあふれる社員が多く離職率も低い。だが、それに満足することなく「顧客満足度の向上は、従業員満足を高めずして成し得ない」という信念のもと、さまざまな人事施策に取り組んでいる。

Profile

太田 久美子

ボルボ・カー・ジャパン株式会社
人事総務部 スーパーバイザー

新卒で人材総合サービス会社に就職し、法人営業を担当。香港支社への赴任や事業企画担当などを経て、2015年にボルボ・カー・ジャパンへと転職。以来、一貫して人事業務に携わる。

離職率が低く、居心地の良い社風。
それでもトライを重ねる理由とは

素敵な空間でお話を伺えて、とても光栄です。こちらのスタジオがオープンしたのはいつ頃ですか?

「2年前になります。イタリア・ミラノに続いて世界で2つ目のカフェ併設のブランドコンセプトストアとなっております。また一般のお客様にご利用頂くだけでなく、メディア向けのプレスカンファレンスや新入社員の入社式を行ったり、最近ではファッション雑誌の撮影も頻繁に行われています。事業も販売台数含め、業績は非常に好調に推移しておりまして、昨年、一昨年は、輸入車として初めて、2年連続で日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞いたしました」

まさに絶好調とお見受けしますが、そんな中で抱える人事課題について教えてください。

「ボルボ・カー・ジャパンの設立は1977年で、親会社が変わるなど紆余曲折がありましたが特にこの数年は離職率が比較的低い状態にあります。ボルボ愛にあふれる社員が多く、ブランドごと愛されている点も『長く働きたい』と考えてもらえる長所であると捉えています。
しかし社員満足度調査を実施してみると、期待したほど高い数字は出ませんでした。なぜそのようなギャップが生まれているのか、まずはその要因を探りつつ、新たな人事施策を積極的に取り入れている状況です」

社員満足度の向上は、多くの企業様が抱えている課題ですよね。

「弊社のビジネスは、自動車の販売業ではなく、“お客様のニーズにお応えするサービス業”と位置づけていますので、顧客満足度が非常に重要な指標となっています。そして、顧客満足度を向上させるためにはベースとなる従業員満足度の向上が重要であると考えています。ボルボが大切にしている“安全性”や“居心地の良さ”といった哲学、優れたものに対し敬意を払うなどの価値観を、幅広いお客様に知っていただくためには、従業員がそれらを理解し、体現できることが重要です。ですから、居心地の良さや社員に愛される会社といった企業風土は大切に残しつつ、働き方改革をはじめスピーディな世の中の動きに沿うような、プラスオンの働きやすさを常に提案し続けていきたいのです」

人が辞めないから良し、ではなく
顧客満足度を上げるために、トライし続ける

なるほど、人事施策も顧客満足度を上げる戦略のひとつなのですね。働きやすさを向上させるために、どのようにテクノロジーを活用されていますか?

「会社として『世の中と一緒に変化し、より良い会社にするための取り組みには、どんどんトライしよう』という方針なので、テクノロジーツールの導入にも積極的です。紙ベースで進めていたオペレーションもどんどんデジタル化していますし、組織活性化の一環として、昨年末にカオナビを、今年の夏にはピアボーナスを導入しました。各拠点を回りツール説明会を開催しましたが、かなり手応えを感じています」

どのような手応えを感じましたか?

「まずはコミュニケーションの増加ですね。導入前は組織間のコミュニケーションが一つの課題でもあったのですが、店舗や部署をまたいだ情報交換が増えている、または可視化されてきていると感じます。
もう一つは、働く楽しさをこれまで以上に感じる社員が増えたこと。お客様と接する機会が少ない部門では、なかなか労働満足度やモチベーションをキープすることが難しい傾向にありましたが、いくつかの施策やツール導入などの相乗効果もあり改善されつつあると感じています。
こちらのカフェスタッフもピアボーナスに参加しているのですが、社員から『コーヒーがとても美味しかったです』といったメッセージが届くこともあります。導入から数ヶ月間が経過しましたが、利用率は7割前後をキープできており、私どもの予想以上に早くシステムが浸透していますね」

システム導入がスムースに進んだ秘訣は、なんでしょうか?

「全ての拠点を回り、Face to Faceでコミュニケーションをすることで、会社の意図や真剣度が伝わったからではないかと思います。
導入直後は『これまでのフローでも十分機能していたのに、あえて新しいシステムに置き換えなくても良いのでは』という声も上がりました。また、現場で働く社員の中には、日々の業務に追われるあまり『労力がかかるのでは』とネガティブなイメージを抱く人もいました。
そこで、ツール説明会では『入力する情報はこれまでと同じで、システムが変わっただけです。導入によって、こんなメリットがあります』といった良い変化や目的をしっかり伝え、新しいツールへの抵抗感を少しでも下げられるよう心がけました」

情報の可視化によって、
評価されるべき人がきちんと浮かび上がるように

新たな施策をスムースに浸透させるのはなかなか難しいものですが、太田さんはこれまでずっと人事に携わっていらしたのですか?

「新卒で人材総合サービス会社に入社し、営業のほか香港駐在や事業企画など幅広く経験しました。やりがいや成長感はありましたが、次第に社内人事として組織や人の成長により深く携わりたいという思いが強くなり、4年前に弊社へ転職しました。長年、家族でボルボ車に乗っていたため、安全性や人を中心とした考え方を大切にするブランドに対して親近感を持っていましたが、入社をしてもそのイメージは変わらずブレていないですね」

なるほど。色々な企業文化や人事課題を、外側からご覧になった経験をお持ちなんですね。多角的に人事に携わられてきた太田さんだからこそ感じる、テクノロジー活用のメリットはありますか?

「カオナビ導入前は、人事異動や評価において記憶や経験に頼るケースが散見されていました。例えば『こんな仕事をしたいけれど、○○ができる人は誰だろう?』、『それならA部長に聞いてみれば?』といった具合に。
それがカオナビを使い、個々の経験や知見を可視化したことで、意外な人が活躍しそうだとわかったり、もっと評価されるべき人が見つかった事例が出てきています。カオナビは人事情報の整理や業務効率化だけでなく、評価されるべき人をきちんと浮かび上がらせる“可視化”の効果が大きいと実感しました」

それはまさに、カオナビが目指している理想的な効果です。

「また、弊社ではSHUFFLE FACE機能を評価制度にも活用しています。様々な要素でフィルタをかけたり、マトリクスで見たりする配置バランス図が便利ですね。人事業務・人材情報のシステム化は実施して本当によかったと思います。社歴や部門歴が異なるマネジメントも、同じ情報を見て同じ土俵で議論できるので、社員のチャンスが増えることにもつながります」

コミュニケーション面でテクノロジーが役立った場面はありますか?

「『カオナビへ情報を入れたいのでインタビューさせてください』と、各部署にヒアリングする機会が増えたのは予想外のメリットでした。これまではわからなかった現場の問題が見えてきましたし、コミュニケーションを図る良いきっかけとなりました。
また、情報の可視化という意味では、ピアボーナスも“コミュニケーションを可視化”するツールです。なんとなく通じ合っていたという状態がツールを通じて組織内外問わず感謝や思いを伝えるようになり、それがやりがいや組織への愛着を向上させるのに役立つのではと期待しています」

最後に、今後求められる人事像について、太田さんのお考えを伺えますか?

「身近な存在として認知し、信頼してもらえる人事でしょうか。先日も、とある社員と面談をした際に、話すことで心が軽くなった、もっと早く話せばよかったと言ってもらえました。ともすれば敷居が高いと思われがちの人事ですが、こんなこと話していいのかな?相談していいのかな?と思ってしまうことでも、まずは話してみようと思ってもらえる身近なご近所感が大切かなと思っています。そのためにはオフィスで座っているだけの受身の人事ではなく、私たち人事の”お客様”である社員とのFace to Faceのコミュニケーションを大切にした、発信型の人事でありたいと思います」

(*スタジオ紹介)
ボルボ スタジオ 青山
東京都港区北青山3-3-11
電話:03-6896-1141
ショールーム&カフェ 10:00~18:00
シャンパン・バー 18:00~22:00(L.O. 21:30 )
年末年始を除き、無休

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会社概要

社名 ボルボ・カー・ジャパン株式会社
設立 1977年
事業内容 ボルボブランドの自動車の輸入販売、関連部品・用品の開発販売、アフターセールスビジネス、車両整備・サービス及び保険業務取扱等
従業員数 280名
会社HP https://www.volvocars.com/jp

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