宣伝で培われた関係各所への”配慮力”が武器になる。人事と宣伝の意外な「共通点」(前編)
株式会社ポニーキャニオン |
人事総務本部 人事総務1部 マネージャー 兼)HR戦略室
森 ひとみさん
2022.02.09
音楽、アニメ、映画といったエンタメコンテンツの企画・制作・販売を手掛ける株式会社ポニーキャニオン。同社に新卒で入社し、営業、宣伝を経験後、現在は人事として人事制度改革や人材開発に携わるのが森さんです。前編ではそんな森さんが、エンタメ業界を目指した理由や、携わる期間が最も長かったという宣伝の経験が人事業務にどう活かされたのか、話を聞きました。
後編ではポニーキャニオンの人事課題や施策に関する話をお届け
Profile
森 ひとみ
株式会社ポニーキャニオン
人事総務本部 人事総務1部 マネージャー 兼)HR戦略室
大学卒業後、ポニーキャニオン入社。音楽部門の営業、制作宣伝を経て、2018年より人事総務業務に従事。HR戦略室では人事制度改革や組織・人材開発に取り組む。
東京から離れた地にも届いた曲。その裏にあった宣伝という仕事に興味を抱く
森さんは大学卒業後、ポニーキャニオンに入社され、人事の前は音楽部門の営業と宣伝を経験されているかと思います。就活時から、エンタメ系の企業を志望していたんですか?
「そうですね。テレビ局をはじめ、当時はミーハー心というか華やかな世界に興味があったんです。また、宣伝など伝える仕事をやりたいという想いがありました。ポニーキャニオンを選んだ理由は音楽だけではなく、映像もあり、そういったコンテンツの宣伝に携われたらいいなと考えていた部分もあります。一番は、アナウンサーになりたかったんですけどね。私は九州出身なんですけど、メディアを通じて社会現象が起こったり、テレビという華やかな世界に身を置く仕事に憧れたりしていた部分があったんです」
宣伝もアナウンサーの仕事も、どちらにも共通して言える「伝える」ことに興味があったんですね。
「いま思うと、そうかもしれません。あと、高校生の頃、受験勉強をしているときでした。『くるり』の『東京』という曲をラジオで聞いたとき、この曲を遠くの土地にまで届けてくれる人がいるんだなと衝撃を受けた記憶があります。それが宣伝という仕事だったのかと、そのときはまったく気づかなかったんですけどね。就活を進める中で、あれはアーティストの曲を各媒体に売り込んで流してもらう『宣伝』という仕事が関係しているんだなと知り、その仕事をやってみたいという想いは強くなりましたね」
ポニーキャニオンに決めた理由は何だったんですか?
「ポニーキャニオンは選考が少しだけ遅かったこともあり、ほかの企業の内定を待ちつつ、受けようと思ったのが最初のきっかけです。ポニーキャニオンでは、選考の過程にいまで言うインターンシップの期間を設けていて、一週間働かせてもらう機会がありました。そのときに接してくれた人がすごく温かく、面白くて……。そんな人に惹かれて、この会社に入りたいと思ったのをすごく覚えています。選考が進むにつれて志望度が上がった会社でした。大学生の自分にも、いち社員として接してくれて、仕事の話だけではなく、趣味の話や何が流行っているのかなど、大人との会話がとにかく楽しかったんです。豊かな人間力を持った人が、昔から多かったんだなと思いますね」
昔に限らずいまも、社員の人の良さを支えているのは、人事の方々の努力もあるんだろうなと思います。
「いえいえ、そんなことはないですよ。社員一人ひとりが共鳴し合っているというか、そういう人が自然と集まってくる会社なんだと思います。とはいえ、人が良いと自分たちで言うのは、なんかくすぐったい……。もちろん、自分もそこに魅力を感じて入って来たんですけど、アットホームな会社ほど危ないなどの書き込みを見ても、簡単に口には出しにくいですよね。でもうちの会社にとって、人の良さは魅力の一つであるのも事実。その点、組織課題を発見するために行ったエンゲージメントリサーチでも、社員の多くが『人間関係で悩んだことがない』と言う結果が数字として出たんです。そのおかげで『リサーチした結果』といったかたちでお話できるようになったのは大きいですね」
「人数が多いと自分を出せない」と感じた就活時代
就活の話に戻ると、ポニーキャニオン以外にはどんな企業を受けていたんですか?
「エンタメ系で言うとテレビ局のほか、大手旅行会社さんなども、腕試しで受けていました。そして、ある大手企業さんに内定をいただき、内定式に行ったんです。ただ、そこにものすごい人数の内定者がいたんですよ。そこで、直感的に『私にここは合わないな』と思ったんですよね。目立ちたいわけではないんですけど、人数が多いと埋もれてしまって自分を出せない気がしたんです。一方でポニーキャニオンは当時、内定者の枠は10人ほど。こっちの方が自分らしく働けるかもなと思ったんです。大勢の中の一人ではなく、私、個人を出せる気がしたんですよね。学生のときは働いた経験がないから、まずは知名度の高い企業がぱっと思い浮かぶと思うんです。でも、必ずしもそういう企業が自分に合うわけではないんだなと、そこで気づきましたね。今、人事として採用を担当していますが、学生にもそれを話します」
大人数の中で働くのも一つの選択肢だと思うのですが、そこであえて「自分らしくあるならここじゃない」という決定をされたんですね。
「本当に、直感でした。ポニーキャニオンの社員と話したときの空気感を肌で感じ、こっちの方が合っているなとも思ったんです」
ポニーキャニオンに入社され、理想と現実のギャップはありましたか?
「一番最初に衝撃だったのは、握手会などでファンの方を順番に流していく業務も、私たちレコード会社の社員が担当していることでした。その業務が嫌とかではなく、こういうこともするんだなと思った記憶があります。本当に、あらゆる方面からアーティストや販売の方々を支える仕事なんだな、と実感しましたね」
エンタメ企業というと、一般的にはきらびやかなイメージもありますが、そういった業務も担当されるわけですね。
「はい。あと、大阪で営業をやっていたとき。初めて挨拶に行った老舗のレコードショップで、経験が浅い新入社員という見られ方をして、とても悔しい思いをしたんです。そのとき、仕事のときはもっと強気で、あまり大人しくしていても駄目だなと、見せ方が大事だということを学びましたね。もともと、強気なところもあるんですが(笑)」
自己を主張する部分と人の意見を受け入れるバランスは、どういうふうに考えているんですか?
「例えば、社内の会議にしてもここまで言っても良いんだなと、経験を通じてバランスが分かるようになった気がします。今のは言い過ぎじゃないかと、注意してくれる先輩たちがいたのも大きかったですね」
関係各所、あらゆるところに配慮する現場の経験が人事業務に活きる
ポニーキャニオンで働き、エンタメ企業ならではのやりがいを感じた部分はありますか?
「それで言うと、営業から宣伝に異動し、テレビ局の担当をやっていたとき。業界では比較的、花形と言われる仕事ではあるんですが、実際は芸能事務所と弊社のスタッフ、テレビ局のスタッフの間に挟まれながら、出演や演出交渉が大変なんですよ……。だからこそ交渉がうまくいき、アーティストが望む演出ができたときなど、終わった後に双方から『ありがとう』と言ってもらえた瞬間やSNS等で反響があるとすごくやりがいを感じます。関係各所、あらゆるところに配慮しなくてはいけない仕事でした。それが、いろいろな部署への配慮が必要な人事の仕事にも活きているなと思います」
なかなか気力や体力がいる仕事ですね……。
「そうなんです。私は宣伝の経験が一番長かったのですが、例えばテレビ局に行って出演交渉する際、当時はアポを取って行く習慣がありませんでした。まずは行き、テレビ局のスタッフに話しかけて良いタイミングを見計らって話しかけるスタイル。『いま話かけて良いかな』『今日はここまで言って帰ろう』など、相手のタイミングや顔色をうかがいながら話す。とにかく、人の間に立って調整することが多かったんです。天職だとそのときは思っていましたが、部署間や、経営陣と社員の間に立って調整するなど、人事の仕事も似ているなと気づきましたね。人事となった今は社外に向けていた目を、今度は社内に向けているイメージですね」
天職とまで感じた宣伝から人事へと異動を打診された当時、どういう心境でしたか?
「2018年に異動して来ましたが、そのときは正直、自分の持っている現場が少し大変な時期だったこともあり、ほっとしたのを覚えています。同僚などは異動を本当に心配してくれたんですが、周りが思っている以上に自分はすんなりと馴染めましたね。最初に採用担当と言われ、今まではアーティストの宣伝をやってきましたが、これからは会社の宣伝をするんだなと、自分なりに納得したのを覚えています。それに、これまでとはまったく違う部署に異動したからといって、モチベーションが上がらないというのもカッコ悪い。そのため、与えられたことをやるだけやり、それでも嫌なら辞めればいいと、開き直る気持ちもありました」
異動前後で感じたギャップはありませんでしたか?
「ありましたよ。私は外部の人と話すのが好きだったので『なんで、こんなに社内にいなきゃいけないのか』と思いました(笑)」
現場を経験したからこそ人事の業務に活かせたところもありそうですね。
「そうですね。やはり、人事として現場の声を聞いたとき、自分の過去の経験を踏まえて課題を具体的に想像できますよね。現場の社員の悩みに寄り添いやすくなるし、施策を実行する際も、現場の考え方と大きなギャップが生じにくいと感じます。とくに弊社の人事総務本部は、ほとんどが現場経験者。人事のプロフェッショナルがいた方が良いと思う瞬間もありつつも、現場の声を聞くときは現場経験者の方が良いと感じますね。求人を出すにしても、現場を理解して募集するのとしないのとでは、訴求内容や面接の仕方に大きいな違いが出ますから」
ポニーキャニオンのカルチャーが染みついたメンバーの方々が人事だからこそ、人が良いという文化も守られているんですかね。
「それはあるかもしれません。もちろん人事経験が長い方もいるため、その方たちが大事な業務は支えてくれているおかげもありますが」
未経験で人事をやられてきて、今の仕事に慣れてきたなと思う瞬間はありますか?
「うーん…まだまだ慣れないですね。人事経験者しか分からない、話せないこともやっぱりあるので、いろいろな会社さんとつながる機会も多いのですが、私もまだ人事歴3年。歴の長い方とお会いすると、まだまだだなと思います。新人という気持ちでやっていますね」
九州で受験勉強をしていたとき、ラジオから聞こえてきた曲が心のどこかに引っかかり、就職してからはエンタメを届ける側の仕事に就くことになった森さん。営業、宣伝と現場を経験し、人事に就任してからはどういった想いで施策に取り組んできたのか。後編で詳しく聞いていきます。
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会社概要
社名 | 株式会社ポニーキャニオン |
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設立 | 1966年10月1日 |
事業内容 | 音楽、教養、文芸、スポーツ、映画、娯楽など各種オーディオ・ビジュアルコンテンツ、及び書籍の企画、制作、販売、映画配給、イベントの企画制作、地方創生事業 |
従業員数 | 450名 |
会社HP | https://www.ponycanyon.co.jp/ |