ルールは守るものではなく、作るもの。評価を適切に伝えられる仕組みで“共育”を目指す
株式会社ドームユナイテッド |
業務部 部長
吉澤 広和さん
2019.03.28
銀行マンだった吉澤氏は、行内改革を通じて人事の大切さに気付きキャリアチェンジ。以来、2社で20年近く人事に携わっている。組織が急激に大きくなる中で人事ができること、目指すことは何なのか、お話を伺った。
Profile
吉澤 広和
株式会社ドームユナイテッド
業務部 部長
大学卒業後、都市銀行で16年間、主に企画を担当。株式会社ファーストリテイリングへ転職し、人事へキャリアチェンジ。ユニクロ大学の立ち上げなどに携わった後、2008年に株式会社ドームへと転職。2016年より子会社の株式会社ドームユナイテッドへ移り、約1200名の人事管理を担う。
「人の意識を変えないと会社のカルチャーは変わらない」と転身
まずは御社の事業紹介をお願いいたします。
「母体のドームでは、アンダーアーマーというブランドの高機能スポーツウェアとサプリメントなどを取り扱い、アンダーアーマー直営店と物流センターを運営しているのが子会社のドームユナイテッドになります」
物流センターはどちらに?
「福島県のいわき市にあります。震災直後、ドーム社長の安田ら役員が冬物衣料やサプリメントを届ける支援をした際、ガソリン満タンで行って戻ってこられる最北がいわきだった。震災のものすごい風景を目の当たりにし、なんとか復興に力を尽くしたいという思いがある中で、候補物件の中に偶然いわき市もあったので『これしかないよね』と」
雇用を通じた復興支援ですね。吉澤さんのご経歴も教えていただけますでしょうか。
「実は大卒後、銀行に16年いたんです。その後ユニクロ(※注:株式会社ファーストリテイリング)に8年弱いて、そこからドームに転職して今年で11年目。一昨年、ドームからドームユナイテッドに出向しました」
今までずっと人事に携わっていらしたんですか?
「いや、銀行では主に企画畑にいたのですが社内改革がなかなかうまくいかなかった経験がありまして。自分なりに『人の意識を変えないと会社のカルチャーは変わらない、会社はやっぱり人事が大事』と思い至り、たまたま人事未経験者を募集していたユニクロに転職したんです。当時は年間50店舗を出店するような時期だったので、若い人たちを店長にせざるを得ない。そのため店長育成の仕組みとしてユニクロ大学を立ち上げ、教育という観点から現場の問題解決にあたりました」
そこからなぜ、ドームに転職を?
「ユニクロも相当大きくなって組織も重層化し、自分でやっている感が薄くなってきた。もう少し小粒でもいいから手応えがほしいなと思いまして。ドームはすごく活気があって、面接でも“人の可能性にかける”という雰囲気を強く感じたんです。『うちは特許や生産設備を持っているわけでもないから、一番大きな財産は人。だからもっともっと強い人の集まりにしたい』と言われ、この会社は本気だなと」
店長ら現場スタッフには、なるべく接客に注力してほしい。テクノロジーの活用で、人材管理をシンプル化
日本全国にいらっしゃる従業員を、効率的にとりまとめる工夫はありますか?
「アルバイトや物流センターを含め1,200人の従業員を8名の人事で管理していて、評価や勤怠などの付随業務はペーパーレス化を意識しています。とは言っても僕たち人事が楽になるからではなく、現場(店舗)がどれだけ簡素化した運営になるかどうかが大切。メンバー管理などの事務作業を効率化することで、なるべく接客・販売に集中してほしいんです。
余裕があればテクノロジーを自前で作るけど、そんな予算があるわけではない。だからこそ外部のいいものを使う。そもそも僕がドームに入社したときは、人事システム自体がなかったんです」
え?そこから……?
「そう、わずか3人の人事担当者がエクセルで名簿を管理していた(笑)。そこで2011年にオールインワンの人事管理システムと社会保険手続き・給与計算のアウトソーシングが一体となった企業に業務委託をしました。第二人事部的な位置づけでした。
2012年にドームユナイテッドを立ち上げたのですが、組織が大きくなる中で毎日入退社があるし、さらに物流センターが稼働したことで10時間×4日や夜勤シフトなど、様々な働き方が出てくるようになった。勤怠システムなどのカスタマイズにコストや時間がかかり、また自社開発を目指すもうまくいかず。
そこでいっそのこと、給与計算、メンバー管理(タレントマネジメント)、人事評価など、機能を特化したシステムを組み合わせ、API連携したらコスト減になるのではと方向転換しました」
システムを組み合わせるというのがすごく合理的な発想ですね。カオナビはどのような経緯で導入されたのでしょうか。
「ドームの人事部にいたとき、社長から『組織編成用に、簡単に組織シミュレーションを図ができるシステムがないか』と相談され、カオナビを探し出しました。当時は社員数が300~400人で、組織編成は役員がホワイトボードでマグネットを入れ替えしつつ考え、組織図はエクセルで作成していました。現在所属しているドームユナイテッドでは、今はRPAも導入して毎日1回データを連携し、最新の情報がカオナビに登録されるようになっています」
なるほど。様々なデータを集約した人材管理ツールとしてカオナビを活用されているんですね。
教える側も一緒に成長する“共育”を目指す
システム化の他に、どんなことに取り組まれましたか?
「ドーム時代を通じてですが、会社の成長に合わせ、従来の仕組みや人事制度の合わない部分を変えています。それから、会社の考えをいかに社員へ伝えるか模索し、2010年にドーム社員手帳というのを作りました。ドームで働く意味、社員と会社の関係についてなど、主に会社が社員に期待することを社長の安田が記したものをもとに編集し、全員に配っています。」
組織が小さいうちに結ばれていたミッション・ビジョンやコミュニケーションは、成長の過程でどうしても弱くなっていく。だからこそ、それらをきちんとまとめられたわけですね。
「そう、そしてマインドを共有している。以前は圧倒的に中途採用が多く、マインドでも習慣でも、前職から引きずってくる人が多かったんです。
ドームユナイテッドでも昨年手帳を作りましたが、そこでは社会人になったら何が変わるのか、カルチャーは自分たちで作っていくといった内容を入れています。どちらかというと新卒中心で新しい会社なので」
御社はスポーツに関わっていた若者を積極的に採用し、育成されることを目指していらっしゃいますよね。
「教育の教を共の字に変えた、“共育”というのを人事理念の一つにあげています。上から一方的に教え込むのではなく、教える側も一緒に成長していきましょう、と」
そんな造語が……と感銘を受けました。
ルールは“作るもの”だからこそ、評価を適切に伝える仕組みを整えたい
今、吉澤さんが感じていらっしゃる人事課題はありますか?
「やっぱり人の育成ですよ。新店舗や店舗面積が増え続けているのに、それに見合う“運営する人”が足りない。人繰りだけでバタバタな状況なので、きちんとカリキュラムを組んで育成に力を入れていきたいというのが課題、そして意思でもあります」
なるほど。教育課題はなんでしょうか?
「まずはマネージメント。今は若いスタッフが多いし、メンバー管理だけで精一杯。そうではなく、お客様の声をキャッチし、それを商品開発・企画に活かすループをちゃんと作らないといけないな、と。
そのためにもまずは“マネージメントしやすくなる仕組み”を作らないといけないでしょうね。自分の良い点・不足点を本人が認識できるようなシステムで、評価のサイクルを着実に回せるのが理想。“各々が勉強できる”という最大公約をテーマにしたいですね」
これまで、各人の評価などをきちんとフィードバックできていましたか?
「いや、今まで出来なかったからこそ変えていきたいんです。エリアマネージャーが店舗を訪問するのはせいぜい月1回くらいで、行った時点の状態しかわからない。でも僕が店舗応援に行ってみたら、その他にも色々と気になる点が見えてきた。細かな部分も確実にフィードバックできるシステムに変えたいですね」
個々に評価が適正に届くのは重要ですよね。では、御社の人事に求める人物像はありますか?
「やはり現場経験のある人が来てほしい。今の人事部にも店長経験者が2人いますが、2~3年前の経験なのでちょっとステージが変わってきている。加えて、どういう仕組でどう利益が上がっているのかを把握し、その上で経営者的視点で見られる人。人事しか経験していないと、どうしても視野が狭くなりがちだと思うんです」
なるほど、広く、会社としての視点を持っていることが大切なんですね。
「そう。そしてルールに縛られていないこと。ルールはあっていいけれど、作るものだと思うんですよ。守るものじゃなくて。そういう柔軟な発想を持つためにも、きちんと評価し、それを伝えられる仕組みが大切」
では吉澤さんが仕事をする上で、大切にしていることを教えていただけますか。
「とにかく密にコミュニケーションして、現場を大事にすることかな。社員が元気よく働けるためには、自分も元気でモチベーション高くいなきゃと考え……2018年には東京マラソンに初挑戦しました! 気持ちはいつも27歳でいたいんです(笑)」
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会社概要
社名 | 株式会社ドームユナイテッド |
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設立 | 2012年 |
事業内容 | 各種スポーツ用品の販売代行業務、飲食業の代行業務、物流請負業務、 カスタマーセンターの運営代行業務 |
従業員数 | 約1,200名 |
会社HP | http://du.domecorp.com/ |