未来を見通し現状のフェーズを意識しながらダイナミックに組織を動かしたい

新卒で人事キャリアをスタートさせた後、さまざまな業務に携わることで培った冷静さや緻密さを武器に、現在は製造派遣業界ナンバーワンのUTグループで辣腕をふるう出羽氏。創業20余年の企業に単身乗り込んで施策している人事制度改革について語り尽くす。

Profile

出羽 亮

UTグループ株式会社
社長室 人事企画ユニット 統括部長

大学卒業後、株式会社リクルート(現・株式会社リクルート・ホールディングス)に入社。採用担当を経験後、社長秘書をしながら経営企画業務に携わる。その後は営業職、事業開発を経て、2015年にリクルートが買収したQuipper Ltd.にて合併後の統合プロセスを担当し人事制度の構築、運用変更を行う。2018年2月よりUTグループ株式会社に転職し、主に一般職社員に対しての戦略人事を一手に担っている。

前職で人事制度を構築したノウハウを生かし、UTグループの人事機能を強くする

まず、御社の事業紹介をお願いいたします。

「ひと言でいうと製造とエンジニアの派遣の会社ですね。具体的にはトヨタ自動車グループやパナソニックグループなど、大手メーカーに技術職社員2万人を派遣しています」

UTグループといえば、正規で雇用をした上で他社に派遣するというスタイルが特徴的ですが、そこが同業他社とは違うところですよね。

「はい。今、製造派遣という分野においてはUTグループがナンバーワンなのですが、ほぼ9割の技術職社員を正規雇用した上で派遣しているというのは非常に珍しい。派遣法の改正とともに、派遣社員の育成をやらなければという流れになったと思いますが、UTグループはその感覚を前倒しで持っていたと認識しています」

そういう他社との差別化があるがゆえに2万人も雇用できるという強みになっているんですね。

「UTグループは『はたらく力で、イキイキをつくる。』というミッションを掲げています。そのDNAを繋いでいくにはどうしたらいいかということを考えたら『正規雇用という安心提供・安定化、そしてそれをベースとしたキャリアアップ支援ではないか』というところで事業を展開しているのも大きな強みだと思います」

では、これまでの出羽さんのキャリアを教えていただけますか。

「キャリアの半分は人事含むスタッフ系、もう半分は営業事業開発のようなセールス&マーケティング系の職種です。前職の最後はリクルートマーケティングパートナーズ社に籍を置いて、リクルートが買収した企業でPMI担当として人事制度を作り、浸透するプロジェクトに携わっていたんです。そこにアサインされた当初から自分の中では『片道切符で』という前提だったので、感覚的には転職したような気持ちでしたね」

UTグループに転職したのは、どんな理由からだったのですか?

「面白そうな会社だなというのが一番です。ポイントとしては、前職での経験を踏まえ、人事としてのキャリアをもう一段階深めるためには、人事部だけで100人、200人もいるような大手企業でいち課長をやるだけではしょうがないな、と。ある程度の全体権限がありながら、ダイナミックに動かせる場所と成長率があって、スピード感もある……そのバランスで考えると真ん中くらいの企業がいい。そうなるとUTグループは絶妙のポジションでした。

しかも、製造派遣という業界自体は、2008年頃の派遣切り問題などがあった際に、業界ごと消えるのではないかという懸念があった中、逆行して頑張っていたのが当時のUTグループ。そういうところでも口先だけではない一貫性がある。一方で、一般職社員の千人に対しての人事機能が弱いということを入社前にいろいろ耳にしており、そこに関しての自分がこれまでの経験の中で培ってきたバリューも発揮できるだろうと思い、入社を決めました」

一般職社員を生かす3つのポリシーで新たなマネジメントと文化をつくりたい

現在の出羽さんの人事としての役割は?

「技術職社員2万人に対して、それを支える千人の一般職社員がいるのですが、私はその一般職社員の人事をメインに担っています。実は、この一般職社員は、若干置いてけぼりのような部分があったんですよ。私自身も、そこが今後の会社のアキレス腱になるという印象がありました」

出羽さんが考えたのはどんな施策でしたか?

「我々の派遣業としてのビジネスでいうと、どうしても売上に直接繋がる技術職社員が優先されてきた歴史があります。一般職社員が軽視されていたということではないけれど、あくまで最優先は、技術職社員の方々。その前提を乗り越えつつ、一般職社員を生かす新たなマネジメントと文化をどう作って行くかというのが私に期待されていることだったので、まずこれまで定められていなかったHRポリシーを3つ設けました。

1つ目は『公平公正な機会提供に向き合う』。大規模の組織でありながら、業務が仕組み化されておらず、それぞれ部署によってルールが違っていて、属人化している部分が垣間見えました。これでは全体バランスとしての公平公正さが欠けてしまいます。それをいかに公平公正に評価し、挑戦しようとする人や努力する人に向き合っていくかというのは考えなければいけない課題だと思いました。

2つ目は『挑戦に向き合う』。UTグループが重要視する価値観のひとつが『挑戦心』です。これはコアなDNAでもあり、もともと持っていたいい文化ですから、より強化していきたいと思いました。

3つ目が『人に向き合う』。ヒューマンビジネスをやっている会社なので当たり前ですけど、とはいえ『本当に向き合えているのか?』という問いとともに、多様な人材が活躍し、チームや組織が高まるように、会社として、ちゃんとそこに向き合わないと、会社としてのコアバリューを失いかねないという意味合いもあって掲げています」

社員一人一人の人材育成方針を話し合う人材開発会議で公平公正な人材マネジメントを目指す

人事戦略の具体的な取り組みとしては、昨年から千人の一般職社員に対して「UTコミッティ」という人材開発会議を導入されたそうですね。

「はい。これは、昇格や降格を決める異動会議ではなく、あくまでも人材育成方針を決める会議です。各拠点の管理職が集まって、1回3時間あたりの会議を20~30回くらいやっています。一部の会議には上位レイヤー議論のために社長も出席しています。

 一般職社員には、事前に『やりたいこと』や『できること』を『Will・Canシート』に記入してもらい、それをベースに、『次は●●さんにはどういうミッションを振ろうか』とか、『今この部署にいるけど、違う部署の方が力を発揮するかもね』ということを話し合うんですね。次のテーマは、そこで決定した育成計画が実際に稼働しているかどうかを追いかけることです。ただアンケートをとったら、会議に出席された皆さんの満足度は相対的に高かったようなので、それは小さなひとつの一歩ですね」

改めてそういう機会や時間を作って向き合えたことはすごくポジティブに考えてらっしゃるのですね。

「はい。管理職にとっても非常にいい武器になっているようです。管理職一人でマネジメントをやっていたら、一方向からしか部下の見立てはできないし、どんどん閉じていくじゃないですか。でも、『UTコミッティ』を介すことで情報交換ができます。直属の上司からは悪い評価であっても、他部署からは『彼は最高だよ』と見られていることもありますね。その逆もしかり。そういうギャップがなぜ起きているのかを議論することで見えてなかったことに気づくこともできるようです」

客観性が生まれるぶん、公平公正さも保たれますしね。

「そうですね。部下に対しても、『UTコミッティ』の会議のフィードバックを通じて、『あなたはこう言われていたよ』ということがなされると、その上司との信頼関係がなくても『UTコミッティでそう言われていたなら自分にも何か原因があるのかもしれない』と考えてもらうきっかけにもなるわけです」

管理職の研鑽にもつながっているのですね。

「はい。『UTコミッティ』での人事の裏の目的としてはそこが大きい部分もあります。

ちなみに、この『UTコミッティ』で、カオナビを活用させていただいています。『Will・Canシート』の内容や、『コミット・シート』という通常の半期評価もカオナビにすべて入力して、ゆくゆくは『UTコミッティ』そのものをカオナビに置き換えたいと思っています。今後は、フィードバックがすごく大事になってくるので、カオナビを介して上司にも部下にも一律に平等に情報が渡るようにしていきたいと思っています」

UTグループの強い文化“挑戦心”にドライブをかけて、チャレンジしやすい土壌作りをしていきたい

今後、出羽さんが取り組みたいことはありますか?

「まずは『3つのHRポリシー』に従った文化を作り続けるということが大前提。また、UTグループのいい文化でもある『挑戦心』にドライブをかけて、いかに社員が挑戦しやすい土壌を作るかということにも取り組んでいきたいですね。

例えば、『チャレンジエントリー』という制度。これは、技術職から一般職に挑戦したり、一般職の中でも、部署を超えて他の業務に行ったり、昇進にもチャレンジできる制度です。ある意味、人間の非連続の成長を促すいい制度でもあるのですが、ジャンプって難しいので、多くの人は失敗します。だから、今まではジャンプして落ちた人は重症を負っていたけど、そこにセイフティネットを張ったり、ラダーを用意したりすることも必要かなと。そういうことがUTらしさにも繋がると考えています。

普通の会社は『Will』よりも実績を評価するじゃないですか。人事的にも『やりたい!』ということを評価していたらきりがないですから、新卒を採用するときも学生時代の実績を評価しますよね。ただ、その人の有言実行的なところを大事にするというのは非常に大事なことではないかと。」

過去だけではなく、未来の可能性にも賭ける、と。

「まさに。だからこそ、『挑戦心』という文化は大切です。ただ、どうせラダーや階段があるからと思うと甘えも出てしまうので、ジャンプやラダー、階段を並列で運用するのは難しいんですよ。でもそれを運用する面白さもあると思っています」

最後に、出羽さんが人事の仕事をする上で大事にしていることを教えていただけますか。

「私自身、何年か先はどんな風になっているのかという見立てとともに、人事制度は変えていくべきだと思っています。その意思は6割とけっこう強めです。残りの4割はちゃんと現場感を持つ。もしかしたら51:49くらいで言った方がいいのかな。社会や会社の状況に応じて制度を変えていける柔軟性を51くらい持ちつつ、あとの49では現場で何が起きているのかをしっかり把握して、現状のフェーズを意識する。これが人事において重要なことなのかなと思っています。結局、ちゃんと運用されなければ、何も浸透しませんから。」

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会社概要

社名 UTグループ株式会社
設立 2007年
事業内容 製造・設計・開発・建設分野等の無期雇用派遣事業
従業員数 約21,000名
会社HP https://www.ut-g.co.jp

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