急成長する組織で一人ひとりのエンプロイーサクセスを実現。自走度の高いチーム作りを支援する人事部の役割とは

法人向けクラウド名刺管理サービスを主軸として事業を成長させ、急激に人員を増強しているSansan株式会社。組織が急成長する中でメンバー一人ひとりのエンプロイーサクセス(社員の成功)を実現するために、人事担当者にできることとは?人事マネージャーの我妻氏に話を聞いた。

Profile

我妻 小夜子

Sansan株式会社
人事部 Employee Success Group マネジャー

大学卒業後、新卒で商社に就職して営業と人事を経験。その後、2013年にSansanへ転職。人事部で各種制度の見直しやエンプロイーサクセス領域における施策推進に携わり、2018年からはEmployee Success Groupのマネージャーを勤めている。

自走度高く有機的に動く理想のチーム作りのために独自の社内コーチングを実施

まずは御社の事業内容やサービスコンセプトを教えてください。

「法人向けクラウド名刺管理サービス『Sansan』と、個人向けの名刺アプリ『Eight』を提供しています。2007年に創業し、今年で13期目です。現在Sansanの契約数はおよそ6000件、Eightは250万人のユーザー様からご利用いただいています。
当社のソリューションは、どんな企業にもあって当たり前の、例えていえばパソコンやコピー機と同じような「当たり前の存在」を目指しています。そんな企業に欠かせない「ビジネスプラットフォーム」になるべく挑戦を続けています」

今年の6月には東証マザーズに上場するなど、企業として急激に成長されていますよね。やはり組織も大きく変わっているのでしょうか?

「私が入社したとき、従業員数は100名ほどでしたが、5年間で500名に増え、今でも毎月のように新しいメンバーを迎え入れています。会社のフェーズごとに大きな変化の波を体感してきました。入社したばかりの頃は、私自身そのスピード感についていけず、正直戸惑うこともありましたね」

急激に人員が増えることは人事部にとっても、かなり負荷が大きいことだろうと察します。そんな中でも人事部として、「どんなチームをつくりたいか」などの理想はありますか?

「一人ひとりが自走度高く有機的に動けるチームが理想です。
例えば現場で困りごとがあったときに、突然人事に相談が入ることがあります。そんなときは『それ、上司には話しましたか?』と切り返すのですが、何かしら上司やチームメンバーには言えない理由があるというケースも多いんです。現場で話せばいい方向に解決できるはずなのに、お互いに気を遣いすぎてそれができないというケースもありました。
このようなことが起こらないようにするために、まずはお互いを知るところから始めるワークショップを行い、『チームビルディング(作り)をしましょう』と促す活動をしています」

自走度の高いチームビルディングのために、具体的に取り組んでいることや実施した施策はありますか?

「いくつかありますが、中でも『コーチャチーム』という社内制度がよく活用されています。これは、ビジネス・コーチング(※)の専門資格をもつメンバーにコーチングを依頼することができる制度です。現場から気軽に依頼することができ、チームごとにワークショップ形式で課題に合わせた研修が受けられます」

※ビジネス・コーチングとは:部下または後輩との双方向の関わりを通して、目標達成、問題解決、技能向上の促進を援助するコミュニケーションのこと

それはいいですね。しかし、実務の達成目標もある中で「コーチングなんて受けている暇はない」みたいな否定的な考えをもつ人もいるのではないですか?

「数年前まではそういう人もいましたが、最近は中長期的な視点に立った考え方が根付いてきて、毎月10件ほどワークショップが開催されています。
また、コーチ本人が専用サイトをつくってこれまでのコーチングの実績を紹介するなど、社内営業的なこともしているので、口コミでも利用が広がっているようです」

OKRや360度評価
多くの施策でエンプロイーサクセスを後押し

チームビルディングについて伺いましたが、新入社員のオンボーディング(※)に関する施策として取り組んでいることはありますか?
※新入社員の早期定着、即戦力化や離職防止を目的とした仕組みの整備

「新入社員の“立ち上がり”を加速させるために、入社して1ヶ月の間に受けるべき研修を複数用意しています。また、働く側と企業側のミスマッチを防ぐために試用期間を6ヶ月と長めに設け、4~5ヶ月目に正式採用か否かの判断をします」

しっかりと教育をして支援しつつも、一方ではマッチングをシビアに見ていくのですね。とても興味深いです。

「長くコミットしてほしいという思いはもちろんありますが、初期の段階で定着しないとお互いにとって良くないと考えています。必要に応じて、試用期間中に何度か面談を行い、入社前後でギャップがないかヒアリングするなど、採用された本人側のケアをしつつ、受け入れる側の部署にも定期的にヒアリングをし、ミスマッチが起こっていないか状況を把握するようにしています」

なるほど。ではその先のステップとして、正式採用となった社員はどのような目標設定をして、キャリアを築いていくのでしょうか?

「目標管理の方法として、2015年からOKRを採用しています。取り入れたきっかけは、ズバリ代表寺田の鶴の一声でした(笑)。Sansanのカルチャーとして『世の中のベストプラクティスは取り入れる』という考えが根付いていまして。GoogleやFacebookが取り入れている手法にいち早く目を向けました。もちろんそのまま取り入れるのではなく、Sansanの価値観に合わせてチューニングを繰り返し、今はかなり定着しています。OKRの根底にあるボトムアップの思想が当社に馴染みました」

個人の目標が会社の目標、ビジョンに直結するイメージが持てるということですよね。

「はい、そのイメージを“見える化”することで、個人のモチベーションが上がり、結果として、先ほど話した“自走度の高いチームビルディング”にも繋がります。
目の前にある仕事と向き合っているとしても、将来との繋がりが見出せないとしんどいじゃないですか。会社の方向性と自分が向いている方向が同じであることを常に意識し『自分の成長が会社の成長につながっている』と感じてもらうことが大切だと思っています。
他にも、OKRと並行して360度評価も取り入れているのですが、当社ではこれを『アチーブメント評価』と呼んでいます。社員が同僚、他部署の仲間などの中から自分の働きや頑張りをよく知る人を評価者として最大5名選び、評価をしてもらうという手法です。評価結果は昇給や昇格を検討するうえで、ひとつの参考情報となります」

かなりいろいろな施策をされていますね。御社は、変化を恐れず挑戦を続けるという姿勢が感じられます。現場で働く社員の反応はいかがですか?

「おっしゃる通り、目まぐるしく状況が変わるので、驚いているメンバーもいますが、それでも疲弊せずに受け入れてくれるのは、変える理由を必ず示しているからだと思います。また、『古くからある慣習でも現代に馴染まないことはどんどん変えていく』といったメッセージも常に発信しています。決して気分や思いつきなどでやっているわけではない、というのは理解してくれているので、変化に対する否定的な意見は少ないですね」

代表の想いに惹かれて入社
入社後の戸惑いと気持ちの変化

少し我妻さん個人のことを教えてください。我妻さんはどのようなキャリアを経てSansanに入社したのでしょうか?

「Sansanは中途入社で2社目です。大学卒業後は新卒で携帯電話の販売代理店に4~5年勤めていました。最初は窓口対応をしていましたが、人事に異動となり、4年半新卒採用を経験しました。そこで人事の仕事の面白さを知り、成長フェーズの比較的小規模な企業で人事を一手に引き受けたいという軸で探した結果、Sansanに出会い、2013年末に転職をしました」

最初はどんな印象でしたか?

「一番覚えているのは、やはり代表寺田の存在感ですね。面接の時点で、本気で目標を成し遂げようとしている人なのだということが伝わってきました。そんな熱量を感じる一方、入社して社内を見渡すと、合理的に仕事をする人たちが多くて驚きました。考えてみると、当時から仕組み化するのが得意な会社でしたね」

先ほど「入社した時は戸惑うこともあった」といった言葉がありましたが、どんなことで戸惑いましたか?

「当初、人事部として『既存の制度をどう改善・運用していくか』といった取り組みをしていましたが、日々の業務に追われてアウトプットがなかなかできず、自分の価値が全く見出せませんでした。自分の考えに自信がなかったんです。しかし、2年くらい経った頃からようやく“Sansanらしさ”というか、この会社で仕事をしていくうえで大切にすべきことがしっかりと理解できるようになりました。メンバーとの関わりも深くなって『もう少し自信をもって発信してもいいのかもしれない』と、気持ちが変化していきました」

“Sansanらしさ”を理解してから変わっていったのですね。

「はい。それからは、自分が直接的に関係のない議論の中でも、発言できるようになりました。そのうちに部内でのディスカッションなどで意見を取り入れてもらえることが増えてきて、さらなる自信につながっていきました」

同じ土俵に立ち、同じ目線で社員を支える
人事担当者にとって大切なコト

今後我妻さんがSansanの人事としてやっていきたいことはありますか?

「Sansanの社員にも、育児と両立する社員も徐々に増えてきたので、育休後、『いかに戻ってきてくれるか』を経営陣含め課題として捉える段階になってきました。子育てをしながらでも働きやすい職場環境を整えていきたいです。他にも働く時間を抑制したい人に対して新しい雇用区分を用意するなど、色々とやってはいますが、まだまだ追いついていません。経営陣に対して現場のリアルを伝達しつつ、上流工程から見直していきたいと思っています」

最後に、人事の仕事をするうえで我妻さんが大切にしていることはどんなことでしょうか?

「自分が人事として『社員にとってどんな存在でありたいか』というイメージをもつことが大切だと思います。また、私個人として大事にしていることは、“心理的に近い人でありたい”ということです。よく人事は、閉ざされた空間にいて現場との距離が遠く、何をしているのかわからないと思われがちです。私はいつも、みんなが言いたいことを言いやすい雰囲気作りを心がけ、同じ土俵に立ち、同じ目線で一緒に会社をつくっているという意識で人事の仕事と向き合っています」

ありがとうございます。それでは最後に、これからの人事に求められることとは?

「『井の中の蛙』にならず、常に学び、変わり続ける姿勢でしょうか。これは人事だけでなく、他の職種にも言えることかもしれません。『私はこういう性格なので』とか『これが専門なので』と開き直ると、そこで自分の成長が止まってしまいます。また、人事は社会問題とも向き合うため、社会との繋がりに対する理解や感度を保つことも大切だと思います。常にアンテナを伸ばし、変化に合わせて柔軟に対応する。時には、これまでの“当たり前”に対しても”そもそも”を恐れずに考え、捨てたり刷新したりする大胆な発想も必要だと思います」

気になる企業の人事と気軽に情報交換できます!

  • 時間や場所に縛られずにタレントマネジメントを学ぶ!カオナビユーザー様限定サイト カオナビキャンパス オンライン。お申し込みはこちら
  • ユーザー会随時開催中!詳細を見る。お気軽にご参加ください!

会社概要

社名 Sansan株式会社
設立 2007年
事業内容 クラウド名刺管理サービスの企画・開発・販売
従業員数 約593名(2019年8月末時点)
会社HP https://jp.corp-sansan.com/

この記事をシェア

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

人事のヨコガオTOPに戻る

あわせて読みたい記事

社員一人ひとりの個性と向き合う人事の方にも個性がある 社員一人ひとりの個性と向き合う人事の方にも個性がある

正解がないと言われる人事の仕事。お手本も「一つ」に限定する必要はありません。
いくつもの生の声を聞きながら、最適解を導いていく。

人事のヨコガオは、人事として奮闘する人たちの
あまり知られていない“ヨコガオ”に焦点を当て、
行動思想やストーリーから正解のない人事の仕事のヒントをお届けします。