採用して終わりじゃない。人事3年目の気づきを施策に落とし込み、推進していくまでの道のり(後編)

前編では、これまでの経歴から神崎さんの人物像に迫りました。続く後編では、そんな彼女がうるるに未経験人事として入社し、発見した課題や実行した施策について話を聞いていきます。
前編はこちらから

Profile

神崎 智恵

株式会社うるる
人事部 採用・組織開発課 課長

大学卒業後、新卒でITベンチャー企業に営業職として入社。二度の転職を経て、2017年に株式会社うるるへ入社。入社以来、一貫して全社の採用を担い、現在は成長支援・人事評価制度の設計も担当する。自身のビジョンは、仕事を通じて「今が一番幸せ」と言える人が増える世の中創りに貢献すること。

「いまが一番幸せだと胸を張って言える人を増やしたい」自分とうるるの価値観がマッチした

うるるさんには、いきなり人事として入社されたわけですよね。元々、人事をやりたいと思って入社されたんですか?

神崎さん

「いいえ、実は転職活動で人事のポジションを受けていた会社さんって、うるる以外にないんですよ。もともと転職活動自体、『神崎さんだったらこれだよね』という軸を見つけたいと思い、改めて始めたことでした。これまで自他共に認める器用貧乏で、少し頑張れば平均点より少し上まではいけるものの、何かで尖っているわけではないことがコンプレックスでもあったんです。20代の折返し地点に差し掛かった当時、自分のキャリアを改めて考えようと思い、営業やコンサルなど、あまり職種を限定せずに受けていた中、エージェントの方に私自身の『価値観と合うと思うよ』とうるるを紹介していただいたのがきっかけでした。そのため、うるるだから人事をやっているという表現が正しいかもしれません」

自分が働く上で、軸となりうる手段として人事があるわけですね。

神崎さん

「はい。ただ、入社当時は人事と自身の軸の繋がりには気付いていませんでした。うるるは、お子さんがいるものの保育園に預けられない、働きたくても思うように働けない方を幸せにしつつ、その方々の力があるからこそ提供できるサービスを生み出し、企業活動を続けていくというビジョンがある。『いまが一番幸せだと胸を張って言える人が増える世の中であって欲しい』という自身のビジョンがあるからこそ、自分自身の価値観とうるるが合っているなと思ったんです。そんなうるるで人事として働く中で、自分のビジョンは人事という仕事にも大いに通ずるものがあることに気付きました」

「入社後の社員にまったく関わってこなかった」という気づきが施策の実行につながる

会社の価値観と自身の価値観が合ったことが大きかったんですね。そんなうるるに人事として入社され、仕事にようやく慣れたタイミングはどのくらいでしたか?

神崎さん

「慣れたというか、深く考えられるようになったのは3年目くらいですね。それまで採用業務に携わってきた中で、ずっと『採用における成功って何なんだろう?』と考えてきたんです。もちろん、内定を通知した方に入社をしていただけたら嬉しいですし、『ようこそ、うるるへ!』って気持ちにはなるんですけど。ただ、それだけだと両手を挙げてやりきった感覚がなくて。それをようやく言語化していけたのが3年目。やりきったと言えない理由は、新入社員の方々に入社以降はまったく関わってなかったからだと気づいたんです。そこで、まず第一歩目として新卒1年目のメンバーに丸1年間かけて行う成長支援フォローアップを実施しようと考えました。この施策を実行するときがうるるに入って一番緊張した出来事で『今こういう課題があるからこういうことをやらせてくれ』と、代表をはじめ役員・管理職総勢35名くらいにプレゼンをしたんです。そこで無事、承認が下り、各部署にお任せするだけでなく、人事としても1年間横串で入っていく成長支援フォローアップに取り組みはじめました」

フォローアップ自体は例えばどういうことを行っているんですか?

神崎さん

「人事が行っているのは大きく分けて2種類ですね。一つは、毎月、育成担当と新卒の方に対して面談を実施しています。そこで話した内容を、各直属の上司にフィードバックすることで、現場での育成にも活かせてもらえたらなと思っています。事実、人事面談の結果が、現場での育成に役立ったという声をもらっています。もう一つは、メンター同士、育成担当同士、新卒同士で合同研修の場を設け、情報共有を行っています。同じ立場だからこそわかること、アドバイスができることがあるという理由からです。そういった場を設定することで、横とのつながりも持ちながら会社として新卒社員を育てていきたいと思っているんです」

「納得感を持って取り組んで欲しい」からこそ大切にした、現場の声

施策を実行する中で苦労したことはありますか?

神崎さん

「関係する人たちがかなり多いので、いかに賛同してもらうか、目に見えない定性的な部分は非常に大変でしたね。机上の空論にならないよう、このプロジェクトを立ち上げる前に、すでに新卒で入社をしていたメンバーや、新卒育成を担当していた社員からヒアリングを行い、私が捉えている現状と各現場での現状とのギャップを埋めていきました。私はうるるに新卒で入社していなければ、当時、新卒メンバーとうるるで一緒に働いたこともなく。そのため、生の現場の声をまずはキャッチした上であるべき姿・解決すべき課題を言語化しようと考えていました」

お話を聞いていると、仕事を進める中で「言語化」を大事にされてきたんですね。

神崎さん

「そうですね。新卒1年目が目指す姿なども『だいたいこのぐらいまで成長して欲しい』という認識はあるけれど、定義はされていなくて。そこで、改めて言語化していきました。組織規模が大きくなればなるほど、雰囲気のみでは伝わらないことが増えていきますしね」

言語化するための材料はご自身の思考もそうですし、あとは現場の声も聞いて定義されたイメージですか?

神崎さん

「そうです。人事として偉そうに何か話したい訳ではなく、納得感を持って取り組んでもらいたかったので。プロジェクトが始まる前段階から、現場のヒアリングも兼ねて『これからこういうことをやろうと思うんですけど』と、いろいろな職種や部署の人たちに話していたこともあり、いざプロジェクトが始まると『これ前から言ってたものだよね』と、これまでの対話の積み重ねで事前に私の思いを知ってくれていた人も少なくはなかったのかなと思います」

従業員と会社のハブとなる存在でいたい

今現在の人事課題はどう捉えられているんですか?

神崎さん

「組織として最も大きいのが管理職が足りないことです。事業が成長していく中で、やはり人が必要だよねとなり、一昨年あたりから全社的に採用人数を増やしたんです。そうすると、管理職に昇格する人も毎年もちろんいるんですが、そのスピードに追いつかないぐらい今は人が増えています。役員が、部長などを兼任している部署もあるんです。ただ、うるるが未来を作っていくためには、役員・管理職が未来について考えられる時間がまず絶対的に必要。とはいえ 、マネジメントや現場の仕事もやりながらでは絶対的に不可能なので、今は管理職候補の研修を実施するようになりました」

管理職候補の成長支援に、力を入れているんですね。

神崎さん

「はい。昨年度、私も管理職候補の研修を受けたんですが、ここを次は”線”での取り組みにしていきたいと思っています。研修は人材コンサルティング会社さんと一緒に行っていて、受講者当人にとってはすごく有意義なものになっているかと思います。ただ、その研修を受けた人だけのスキルが上がるのではなく、上司や受講生の部下とも連動性がないと意味がない。そこで、今年度からは過去に研修を受けたメンバーと今年研修を受けるメンバーの上司に対する人材開発会議を行い、管理職候補となる人材の成長支援を開始しています」

管理職候補のみの成長に目を向けているわけではないのですね。管理職候補に対する研修はどういったことをやるんですか?

神崎さん

「大きく分けて2つです。一つはコトマネジメントについてで、問題解決のフレームワークのインプット・アウトプットを行います。例えば、あるべき姿を設定して現状とのギャップは何なのか、そのギャップを発生させている真因は何かを深堀りする。そこに対する打ち手として現実性やインパクト、実現スピードを加味した上で解決策を複数案出すなど。もう一つは自身のビジョンと部下のビジョン、そして会社としてお願いしたいミッションをどう位置づけて、連動させていくのかといった人のマネジメントを中心に学びます

研修内容は他の会社さんにとっても参考になりそうです。ありがとうございました!最後に、これから目指す理想の人事の姿があれば教えてください。

神崎さん

従業員と会社のハブでいられる人事ですね。これは人事になったときから意識して続けていることです。入社当時と今の大きな違いは、労働環境です。弊社では2020年の4月頃からコロナ対策の在宅勤務が始まり、7割強が毎日在宅で仕事をしている状態です。そんな中、人がどんどん増えていき、コミュニケーションの希薄化や、弊社の行動指針であるうるるスピリットを感じ辛い人たちが増えてきているのも事実。昔から在籍をしている私ですらそう思うので、新しく入ってきた人はもっと感じているはずです。なので、そういった社員の気持ちをケアしながら社員同士の接点を増やしたり、うるるで働く意義を感じてもらえるような働きがけができたり、そんなハブであり続けたいと思っていますね」

編集後記

自分の中で内省を繰り返しながら、これまでの行動の理由を的確に言語化している姿が印象的だった神崎さん。おそらく、すでに一度は質問に対する答えを言語化したことがあるためか、自身の考えをよどみなくお話いただきました。また特に神崎さんのすごさを感じたのは、自分の頭の中で考えるだけにとどめず、そこで言語化された仮説を他者に伝えたり、行動としてアウトプットしたりすることで、思考の精度を自ら高めていっているところ。この一連の過程が、神崎さんの挑戦を支えているのかもしれません。

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会社概要

社名 株式会社うるる
設立 2001年
事業内容 CGS事業、クラウドソーシング事業、BPO事業
従業員数 222名(2021年3月31日現在)
会社HP https://www.uluru.biz/

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