社員と会社の双方が成長。「人と事業をつなぐ」のが人事の役割(後編)

前編では、松原さんがウィルグループに入社し、食品工場でのマネジメントを経験後、人事に就任するまでの道のりに迫りました。続く後編では、これまでとは役割がまったく変わったと話す本社での中途採用や、タレントマネジメントの実現に向けた施策について話を聞いていきます。
【前編はこちらから】

Profile

松原 輝

株式会社ウィルグループ
人事本部 採用戦略部

高校卒業後、自動車整備業を経て航空物流会社へ。その後、ウィルグループに転職し、食品工場において組織マネジメントを経験。中途採用組織の立ち上げを経て現在は、採用戦略部で中途採用領域とタレントマネジメントを担当。

まったく知らない職種や上層部の採用。異動後1年で経験した苦労

本社へ異動後も継続して中途採用をメインに担当されたんですか?

松原さん

「異動前は一般社員の中途採用をメインで担当していたのですが、異動後はマネージャー以上のマネジメント層や、エンジニアなどの専門職の方を採用する必要がありました。そのため、今までのように有料媒体に求人広告を載せるといったやり方ではなく、エージェントやスカウトという手段に変わったんです。上の層の採用は各部門が独立して動いていることもあり、それを巻き取っていく作業も必要でしたね」

役割が変わったことによる戸惑いはありましたか?

松原さん

「もちろん、ありましたよ。その当時は正直、辛かった…。異動後は、私がまったく知らない職種や自分よりも圧倒的に上のポジションの人を採用しないといけない。どんな人を採用すれば良いか、本当に分からなくて…。エンジニアのエの字も分からないし、経理って簿記は分かるけどくらいの感じ。採用が必要な職種に対し、理解するというフェーズがものすごく長く、異動後の1年間はわからないことだらけで本当に辛かったですね」

先が見えない感じがしますね。

松原さん

「はい。社内から依頼が来る求人が毎回知らない職種。膨大なインプットが必要なので、本当に頭がパンクしそうでした」

相談できる相手がいない状況で、とにかく人に会い、試行錯誤

どうやって職種を理解したんですか?

松原さん

「書籍などでインプットするのはもちろん、採用したい層と同じ層に位置する社内の方々と、ご飯や飲みに行きました。そこで、この人たちはどういう事業に携わっていて、どういう人柄なのかインプットしました。事業から仕事内容、そして人柄まで理解するようにしましたね。その当時は、本当に週3~5日で飲みに行ってましたよ(笑)」

その方たちとはどのようにしてつながるんですか?

松原さん

「異動してきたばかりということもあり、『ご飯に行ってもらえませんか?』と誘ったら『嫌です』という人はいませんでした。もちろん裏の目的は伝えず、普通に飲みに行きましたよ」

そうやってこれまで触れたことのない事業や職種、役職の理解を一人でやられていたんですね。

松原さん

「そうなんです。チームとはいえ、中途セクションを担当しているのは一人でしたし、相談できる相手がいなかった。新しいセクションなので、これまでの知見もない。だからこそ色々な話を聞けたり、試行錯誤しながら施策を回したりするのは勉強になったし、今になって思えば貴重な経験ができたと思いますね」

いざ採用面接となったときにも、やはり苦労されたんじゃないですか?

松原さん

「私の感覚でいうと、例えば専門職の場合、相手のスキルを6割理解できるかどうか。ただ私は人事という立場なので、スキル以上に社内のカルチャーとマッチするか、人物面での判断を任されている部分が大きい。スキルと人物面の二つの軸で見ているので、相手のスキルを100%理解できなくても、ある意味ではしょうがないと割り切っている部分もあります。ただ、採用するかどうか、自分なりの答えは出したいので、これまで触れたことない職種であってもスキルの勉強は欠かさずやるようにしていますね」

お話を聞いていると、シンプルですが、インプットとアウトプットを繰り返して目の前の課題を解決してきたわけですね。

松原さん

「インプットしてアウトプットするのが仕事だというのを、後輩にも伝えてきたし、両方好きというのもあります。インプットしたことを自分というフィルター通し、目標達成に向けてどのようにアウトプットしていくか、考えるのが楽しいんですよね」

「定量・定性データ × 経験」で適正配置の実現へ

現在の業務でいうと中途採用だけでなく、タレントマネジメント領域も担当されているんですよね?

松原さん

「そうですね。カオナビを導入した背景から話すと、これからの事業成長に向けて組織構造を変え、より人の成長も支援する必要がありました。そのために、タレントマネジメントを定着させたいと考えているためです。今から3年ほど前、採用関連のイベントでカオナビを見て、これはすごく良いなと思った記憶が残っていました。これを起案したら良さそうだなと思い、本社での採用業務にも慣れてきた頃、会議で提案したら、とんとん拍子でやることになったんです。当社の場合、『適正配置にまず着手すべき』という課題があり、だったらどういう活躍をしてきたかなど、個人の情報を蓄積して見える化しないといけないよねと。そのためにタレントマネジメントシステムが必要ということで、カオナビの導入がスタートしました」

「適正配置が必要だよね」となった経緯は、グループ会社が多いからですか?

松原さん

「そうですね。当社はグループ会社が多く、これまで異動を勘や経験に頼って上層部が行ってきたんです。ただ、異動してみたら本人の趣向と合わなくて早期退職につながるといった課題もありました。そこで、もっとデータドリブンに適正配置を実現しないといけないよね、ということでデータの置き場所としてカオナビを導入したんです」

適正配置を行うため、カオナビは今どういった使い方をされているんですか?

松原さん

「データの蓄積や分析は3年ぐらい前から動いていました。そのデータが徐々に溜まってきたこともあり、それをカオナビに入れて社員の情報をより見える化する。そして、今までの経験と掛け合わせて、適正配置を実現したいと考えています」

カオナビに蓄積した定量・定性データを参考にしつつ、あとは現場や部長クラスの方々の経験も組み合わせていくイメージですね。

松原さん

「はい。社員の情報を見える化することで、隠れた人材を見つける狙いもあります。1on1の結果など、定性情報もカオナビに残していくことで社員の意向にも沿った適正配置を実現したいですね」

人事は「人」にも「事業」にも目を向ける存在

今後、取り組みたい施策があれば教えていただけますか?

松原さん

「2030年という10年先を見て、事業の再編を今年から進めており、それを加速させる人材の発掘と配置が今のミッションです。事業再編にあたり、これまであまりいなかったタイプの社員も採用していかなければなりません。そのためにも経営層とも話しながら、人だけでなく事業の理解も深めているところです」

ありがとうございます。松原さんとしては元々、予想していなかった人事というキャリアですが、振り返ってみてどう感じますか?

松原さん

「本当に一歩一歩進み、壁を乗り越え、挫折して、川に流されるように気づいたら今のポジションに辿り着いていました。手に職をつけたいと思っていた高校卒業当時の私はまったく予想していなかったルート。でも、前進はしてきていると思うし、全然後悔はありません。これからどんな道があるか分からないですけど、これまでと変わらず、今は人事として目の前を一歩一歩進んでいくだけですね」

最後に、そんな人事の仕事をする上で大事にされていることを教えていただけますか?

松原さん

「人事の仕事は『人に着手する』『事業に着手する』という双方が組み合わさった言葉だと解釈しているので、その両方を大切にしたいですね。片方だけを見ると、社員の成長は支援できるものの、それが事業の成長につながっていないこともある。各グループ会社、さまざまな職種やレイヤーの採用を通じて気づいたことです。特に当社はグループ会社が多数あり、それぞれ事業フェーズも異なる。例えば、事業フェーズに応じて0から1を生み出す人を求めているのか、もしくは1を10にする人を採用した方が良いのかも変わりますよね人と事業をつなぐ役割が人事だからこそ、人だけでなく事業の理解も大切にしています」

編集後記

自動車整備業から始まり、人事へと辿り着いた松原さんのキャリア。未知の領域であってもハードルを感じることなく、むしろ新しい経験ができることを面白がる。だからこそ、前例のない中途採用組織の立ち上げに自ら手を挙げ、未経験の人事という分野にも飛び込めたのでしょう。当社のコミュニティ内で、積極的に発言してくださっている背景も垣間見えました。未経験の分野だからこそ、わからないことも多く、当事者しか知りえない壁もたくさんあったかと思います。それでも、好奇心を大切に、インプットとアウトプットを繰り返しながら常に目の前の課題と向き合う姿勢が、松原さんの前進を支えているように感じました。

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会社概要

社名 株式会社ウィルグループ
設立 2006年4月3日
事業内容 人材派遣、業務請負、人材紹介を主とする人材サービス事業を行うグループ会社の経営計画・管理並びにそれに付帯する業務。
従業員数 4845名(連結、2021年3月末現在)
会社HP https://willgroup.co.jp/

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