「内発的な動機こそ組織の力を高める」PCショップ店長から人事になった後も大切にする軸(前編)
株式会社ショーケース |
人事部 部長
山田 剛さん
2022.07.03
「おもてなしテクノロジーで人を幸せに」というコアバリューを掲げ、EFO(入力フォーム最適化)を軸とした企業と顧客をつなぐプラットフォーム「おもてなしSuite」などのWebマーケティング支援サービスや、顔認証などのオンライン本人確認(eKYC)サービスなどを提供する株式会社ショーケース。同社で人事部門の立ち上げから携わり、新制度の運用をはじめ、「ワンチーム採用」などのユニークな採用法を取り入れたのが山田さんです。元々、臨床心理士を目指していたと話す山田さんですが、そこからどういう過程を経て、人事へと辿り着いたのか。その道のりに迫りました。
Profile
山田 剛
株式会社ショーケース
人事部 部長
立命館大学産業社会学部を卒業後、大阪教育大学大学院で臨床心理士を目指すも中退。1999年にバイト先のPCショップにそのまま就職し、店長から取締役へ。2001年、ITセキュリティ大手に転職し、家電量販店営業、リテールマーケ、EC営業、BtoB営業を経てHRビジネスパートナーに。2019年11月より現職。人事部の責任者として、採用、制度設計、人材育成などを担当。
初めての会社で『”努力”は”夢中”に勝てない』を実感
ご経歴を拝見すると、元々、臨床心理士を目指されていたんですね。
「ケガで入院して医療にお世話になったことがあり、自分も同じようにつらい人や困ってる人を助けたいと思ったのがきっかけでした。その中で、心の病に興味を持ち、心理学を学べる大学に進学したんです。心という目に見えないものをどうやって認知し、言語化するのか、学べば学ぶほど奥が深い世界でしたね。ただ、大学院まで進んだのですが、英語の論文の読解などに苦戦し、途中で中退。資格取得の条件を満たせなかったので、臨床心理士は諦めました…。とはいえ、社員の方にどうやって意欲的に働いてもらうかなど、人事は人の理解も欠かせない仕事。当時の学びは、今に活きていると感じています。『人事心理学』という分野もあるぐらいですから、当時の学びは決して無駄ではなかったですね」
そして大学院を中退された後、当時、アルバイトをしていたPCショップにそのまま就職されたんですね。
「はい。元々のきっかけは、たまたま募集を見て応募したバイト先。販売も、修理もする店舗でした。大学院を中退するとき『やめることになりました』と社長に話をしたら、『じゃあ店長を任せるから、うちに来いよ』と言っていただいたんです。奈良県に数店舗ある会社だったのですが、日本全体に大きく展開していきたいと言う野心を持つ方。そんな社長の姿勢にも惹かれて二つ返事でOKしました。小規模な会社だったこともあり、社長や副社長と近い距離で働ける環境でしたね」
今の人事の仕事に、そのときの経験が活きている部分はありますか?
「そうですね…思い返すと、当時はとにかく無我夢中で、気づいたらもう深夜3時みたいな生活でした。内から湧き出る『働きたい』という内発的な動機があったからこそ、夢中になれた。『努力は夢中に勝てない』という言葉がありますが、それを初めての仕事で体感できたんです。 学ぶことだらけで、できることが増えていくことに、すごくやりがいを感じました。元々、アルバイトの方以外、社長と副社長、そして自分の3人しかいない状態。そこからどんどん人が増え、会社も自分もまだまだ成長途中でした。試行錯誤の余地があり、初めて入社した会社で『もっと働きたい』と思えたからこそ、夢中になって大きなパフォーマンスを発揮できたんです。自分の経験も踏まえ、人事になってからもいかに『働きたい』と思える環境を作れるか。つまりは、内発的動機づけを引き出せるかが、自分の中で軸になっています。それが結果的に、組織の生産性向上にもつながると思っているんですよ」
とくに、どういった業務に面白さを感じたんですか?
「店舗を運営するので、販売も、仕入れも、ディスプレイもします。そのほか、お得意のお客様対応や修理など、多岐にわたるのですが、中でもマーケティングが面白かったですね。例えば、どの場所にPOPを設置したら、お客様が立ち止まってくれるのか。また、商品をどう配置したらお店の入りやすさや商品の購入につながるのか、売れる仕掛けを試行錯誤するのが楽しかったんです」
試行錯誤の余地がある所に面白さを感じたわけですね。
「はい。人事の仕事もこれという正解がなく、自社の課題やビジネスに応じて試行錯誤の余地があるからこそ面白いと感じますね」
面白いと感じた店舗運営ですが、その後、どういうきっかけで転職しようと思ったのですか?
「数名の会社でしたので、最後には取締役という肩書きまでいただきました。ただ、ネット通販や比較サイトの登場で、パソコンの価格競争が起き、経営状態が徐々に悪化していったんです。また、その会社で、十分にやれることをやった感覚もあり、新しい会社への転職を決めました。それで、面接を初めて受けた会社が、二社目。家電量販店でパソコン用のセキュリティ製品を取り扱ってもらう営業から始めました」
プレイヤーから組織全体を見るようになり人事への興味が湧く
人事にキャリアチェンジしたタイミングはいつ頃ですか?
「2社目で家電量販店の営業、リテールマーケティング、BtoB営業などを合計10年以上、経験した後、人事に異動しました。人事に興味を持ったきっかけは、2つあり、一つは営業の管理職として組織全体を見るようになったこと。プレイヤーだった頃は自分が成長して、成果をあげるという観点しかなかった。ただ、管理職になるとチームで成果を出すために、メンバーの育成やマネジメント、またほかのチームとの連携など、組織全体に目を向ける機会が増えてきました。会社である以上、一人ではなく、組織全体で売上を上げることが大事だと改めて気づいたんです。ではその組織がパフォーマンスを発揮できるようにするために何をすれば良いのか。人事であれば、組織全体の生産性向上という、大きな視点から仕事に関われると思ったんです」
もう一つのきっかけは?
「会社のカルチャーを醸成する社内のプロジェクトに参画したことです。先輩が誘ってくれたのですが、その中で会社のビジョンの深掘りをやったんです。そこで、ビジョンによって会社の進むべき方向は大きく変わるというインパクトの大きさを実感しました。ビジョンなどの会社の価値観は、評価制度などともつながっていますし、人事として会社の価値観を浸透させる仕事をしたいと思ったんです」
それで、自ら手を挙げて人事になったんですか?
「プロジェクトに関わっていると、人事の方とすごく仲良くなるんです。営業のマネージャーだった頃、人事は何してんのか、よくわからなかったんですよ。でも、人事の方と話してみると、逆に現場のことが分かんなくて困っていました。そこで、人事の方によく話を聞かれるようになり、人事担当者との接点が増えたことで、人事にも異動できたんです」
人事になる前後で、仕事内容のギャップはありましたか?
「実はあんまりなくて…。あるとすれば、労働基準法など、インプットしなければいけないルールが想像以上に多いと感じたぐらい。人事へと異動後、ミーティングなどでぼくが現場にいるときの感覚で発言をすると、結構、重宝されたんですよ。ぼくを通じて、現場のことを知りたい気持ちがみんな強かったんです。だから現場として課題に感じていた話が、人事施策につながることもあったんです。現場で感じていた課題を解消するという点で、ギャップはあんまり感じなかったですね」
人事の施策は「一貫性」と「継続性」が大事
人事へと異動後、最初はどういう業務を担当されたんですか?
「部門付きの担当人事として評価制度の運用から研修の設計、採用の調整など、現場の課題に応じていろいろなことをやりました。各部門の部長さんが、いわばクライアントのようなイメージ。社内にいる人事コンサルタント的な立場で仕事をしていましたね」
今思い返して、当時苦労されたエピソードはありますか?
「若手の定着率を上げるために、いろいろな施策を打ったことです。評価制度を変えたり、フィードバックの仕方が変わるように管理職への研修を行ったりしました。次世代リーダー育成プログラムと題し、事前に課題図書を読んでディスカッションするようなワークショップも行いましたね。マーケティングの発想と一緒で、施策を一回だけ打っても一瞬知られるだけで、浸透はしません。人事の施策も同様です。アプローチは変えつつも、モチベーション向上という『一貫』した目的のもと『継続』して施策を打つからこそ、社員の方のマインドを変えられる。もちろん、現場のニーズと合致しない施策を打っても、やらされている感が強くなってしまう。そのため、管理職を含め、現場側の意見を聞きながら、その声を施策に反映していきました」
続く後編では、ショーケースに転職した経緯や、「ワンチーム採用」などの山田さんが取り組んだ施策について紹介します。
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会社概要
社名 | 株式会社ショーケース |
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設立 | 1996年2月1日 |
事業内容 | SaaS事業、広告・メディア事業、クラウドインテグレーション事業、投資事業(株式会社Showcase Capital)、情報通信関連事業(日本テレホン株式会社)、リユースモバイル事業 |
従業員数 | 87人(2021年3月現在) |
会社HP | https://www.showcase-tv.com/ |