「誰と働くかが大事だから人柄を前面に出す」ショーケース”らしい”採用スタンス(後編)

PCショップの店長からキャリアスタートし、2社目の会社でカルチャーを醸成する社内プロジェクトに参加したことなどをきっかけに興味を持ち、異動した人事。後編では、その後、ショーケースに転職しようと考えた経緯や、「新制度の浸透」「ワンチーム採用」など山田さんが取り組んだ施策について話を聞きました。
【前編はこちら】

Profile

山田 剛

株式会社ショーケース
人事部 部長

立命館大学産業社会学部を卒業後、大阪教育大学大学院で臨床心理士を目指すも中退。1999年にバイト先のPCショップにそのまま就職し、店長から取締役へ。2001年、ITセキュリティ大手に転職し、家電量販店営業、リテールマーケ、EC営業、BtoB営業を経てHRビジネスパートナーに。2019年11月より現職。人事部の責任者として、採用、制度設計、人材育成などを担当。

新制度浸透のために取り組んだことはいたってシンプル

ショーケースに転職した経緯について教えていただけますか?

山田さん

「当時、『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』という、いわゆる『人生100年時代』をどう生きるのかについて書かれた本が流行っていました。その本を読み、改めて45歳から一般的な定年の65歳まで働くとすると、あと20年で何をするか改めて考えたんです。まだまだ時間はあるのに、同じ環境で仕事をしていたら、自分の成長につながらないかもしれない。そう感じ、45歳のときに新しい経験をしたいと、転職を決意したんです」

ショーケースを選んだ理由は何だったんですか?

山田さん

「一次面接に社長が出てきたんですよ。そこで、『第二創業』という言葉にかける思いや課題感を隠すことなく、いろいろ教えていただきました。その思いに共感したのはもちろん、社長が話した課題の解決に、これまでの経験が活かせるなと感じて入社を決めました」

入社した当初、どういった人事課題があったんですか?

山田さん

「第二創業で人事制度を変えたばかりということもあり、社内にあまり浸透していなかったんです。というのも、社内に浸透させる役割を担う人事自体があまり機能していなかった。そこで、人事組織を刷新した上で、制度を社内に浸透させるための取り組みから始めました」

具体的に、どうやって制度を浸透させたのですか?

山田さん

「シンプルですが、『きちんと説明する』ことにしました。新しい人事制度をちゃんと説明する資料の作成と、説明会を開催したんです。人事制度について、制度と運用を切り分けたとき、多くの課題は運用側にあると言われますよね。ただ制度が曖昧だと、運用に困ってしまいます。例えばショーケースには職務等級制度があるんですが、ぼくが入ったときはグレードに関する説明はパワーポイントのスライド一枚だったんです。グレードの定義も、一言書いてあるだけの状態…。社員からすれば、グレードは昇格など、自分の成長の道しるべですよね。グレード3から4に上がるにはどうしたら良いのか、何が足りないのか、それを上司と擦り合わせながら仕事に取り組むわけです。ただ、定義が曖昧では上司もフィードバックのしようがありません。そのため、会社としてグレードをどう定義しているのか、きちんと説明する資料の作成から始めました。そして、資料の配布だけでなく説明会まで行い、社員や管理職の方に少しずつ浸透させたいったんです」

チームで内定を目指す「ワンチーム採用」を取り入れる

現在の人事課題はどう捉えていますか?

山田さん

「一番は採用ですね。とはいえ、単純に応募数を増やしたいわけではありません。制度や働いている人が魅力的かどうかを含め、ショーケースに入りたいと思う人を増やせるかどうかが大事だと考えています」

そのために取り組んでいる施策はありますか?

山田さん

「まず初めに取り組んだ施策で言うと、個人ではなくチームで内定を出す『ワンチーム採用』があります」

初めて聞きました…!ワンチーム採用を始めようと思ったきっかけはあったんですか?

山田さん

「当初、就活生なら必ず登録するような大手求人サイトでの募集を予定していました。ただ、社長に提示したところ、そこは我々の主戦場ではないんじゃないかと言われまして…。『たくさんの企業の中からショーケースを見てもらえるのか』と。だからこそ、ショーケースにしかできない採用をやって欲しいと言われたんです」

なかなか難しいお題ですね…。

山田さん

「そうなんですよ(笑)。かなり悩みましたが、電車の中で思いついたのがワンチーム採用でした。ワンチーム採用は一人ではなくグループでエントリーし、当社の役員に対してビジネスアイデアのプレゼンをする選考方法。合格なら、そのグループ全員が内定という、チームで内定を出す仕組みです。通常、一人ひとりの選考ですよね。でも、当社はチームで成果を出すというコンセプトにこだわっているので、内定自体もチームで出そうという理屈です」

なるほど、会社の価値観にも合った採用方法だったわけですね。

山田さん

「はい。質を高めながらショーケースらしさを出そうと思ったときに、やはり採用プロセスに注目する必要があると感じたんです。そこで思いついたのが、ワンチーム採用でした。自分の成長も大事なことですが、チームで取り組むことで、新しい発想や一人ではできない成果が出る。チームという単位で成果を出すことは、第二創業となる2019年から大事にしていることでもあったんです」

ワンチーム採用を実際に始めてみて効果はどうでしたか?

山田さん

「それが、一年目の採用は0でした…。ただショーケースには、PDCAを高速で回すことを優先し、失敗を失敗とは思わないカルチャーがある。採用という結果につながらなくてもそれはそれでいいと思っています」

どうやって応募者を集めたんですか?

山田さん

「SNSを活用することで、合計で24人の学生にエントリーいただくことができました。1年間に2回開催したのですが、1チーム3人で、4チームまで参加できるルール。ビジネスアイデアを考える時間が3時間程度あり、2回ほど役員に相談できる時間も設けています。人に相談して良いアドバイスを引き出せるのか、また、まだ未完成のアイデアを人にどう説明するかといった点も選考の中で見ています」

二年目に実施したときはどうだったんですか?

山田さん

「2年目は、組むチームは知り合いでなくても良いルールにしました。ただ、2年目も合格は残念ながら0チーム。とはいえ、選考を受けた方がショーケースのことをすごく気に入ってくれた。『個人選考にもエントリーさせて欲しい』ということで、入社までつながった人もいます。役員に直接プレゼンをしてアドバイスをもらえることもあり、ショーケースらしさを体感してくれたはずです。また、チームメンバーと協力し、スピーディーにアイデアをアウトプットする場として貴重な経験になったのではないかと思います」

ショーケースらしさを形成するのは技術ではなく「働く人」

今後はどういった方針で採用を行う予定ですか?

山田さん

「ワンチーム採用は一旦やめ、通常の採用活動を行う予定です。ただ、2年間ワンチーム採用をして、やはり誰と働きたいかで選んでもらえる会社なんだとわかりました。そこで、誰と働くかにより魅力を感じてもらえるよう、社員の人柄をもっと前面に出す取り組みに注力していきたい。話は少し脱線しますが、最近、『ジョブ型』を聞くようになりましたよね。たしかに、理屈はわかります。ただ、仕事内容が合うかどうかではなく、会社のビジョンに共感し、入社して欲しいので、どんな仕事であっても究極はメンバーシップ型だと考えているんです。なので、ショーケースの人柄を出しながら、『この会社で働きたい』と思ってくれる人に来て欲しいですね」

人柄を出すために、やろうとしていることはあるんですか?

山田さん

「SNSやnoteでの発信もそうですし、こうやって取材を受ける機会もそう。広報的な役回りも担当しながら、露出を増やしていこうと思っています。ぼくらは『おもてなしテクノロジーで人を幸せに』と、技術よりも人にフォーカスしたコアバリューを掲げている。人柄を出すことは会社の価値観にも一致しているんです。おもてなしという言葉自体、人が感じるもの。技術ももちろん大事ですが、やはり働く人がショーケースらしさを形作っている。そういう人の部分をもっと強く打ち出して行きたいんですよね」

採用以外の面で感じる課題はありますか?

山田さん

「先ほど話したようにコアバリューの体現を社員一人ひとりに求めているのです。ただ、これをどう自分たちの行動に結びつけてもらうかが、直近の課題ですね」

そのために、今後やろうとしている施策はありますか?

山田さん

「数年ほど前にもクレドの策定を通じて行動指針を掲げようとしたことはあったのですが、残念ながらそのときは形にできませんでした。そこで今回、経営陣や人事主導でクレドを形にするよりも、コアバリューや行動指針の意味を再定義するプロセスから社員の方に入ってもらおうと考えています。例えば、一人ひとりがおもてなしをどうイメージするか。各々のイメージを集めて、その中から共通するものをクレドとして策定していきたいと考えているんです」

社員の方も巻き込んでクレドを作成するわけですね。

山田さん

「はい。そのためにも、まずは20名ぐらいの社員を集めてワークショップを開催しようと考えています。ワークショップの中で、なぜ自分がショーケースで働くのか、考えるきっかけにも使ってもらいたいと思うんです」

編集後記

取材中、山田さんが次のように話していたのが、印象に残っています。「面接って本当は、相手がどういう人か見極めなきゃいけないですよね。でも、ぼくは否定したり、ツッコミを入れたりせずに相手を持ち上げようとするからか、みんなよく見えてきちゃうんですよ(笑)」。単に回答の良し悪しを判断するわけではなく、まずは相手を受容する。臨床心理士を目指されていた頃、実習の一環としてカウンセリングをやる中で、否定も肯定もせずに相手を受け入れる大切さを学んだそうです。個性を受容する姿勢は、多様な価値観の人に「この会社で働きたい」と思ってもらうために大事なことかもしれません。

気になる企業の人事と気軽に情報交換できます!

  • 時間や場所に縛られずにタレントマネジメントを学ぶ!カオナビユーザー様限定サイト カオナビキャンパス オンライン。お申し込みはこちら
  • ユーザー会随時開催中!詳細を見る。お気軽にご参加ください!

会社概要

社名 株式会社ショーケース
設立 1996年2月1日
事業内容 SaaS事業、広告・メディア事業、クラウドインテグレーション事業、投資事業(株式会社Showcase Capital)、情報通信関連事業(日本テレホン株式会社)、リユースモバイル事業
従業員数 87人(2021年3月現在)
会社HP https://www.showcase-tv.com/

この記事をシェア

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

人事のヨコガオTOPに戻る

あわせて読みたい記事

社員一人ひとりの個性と向き合う人事の方にも個性がある 社員一人ひとりの個性と向き合う人事の方にも個性がある

正解がないと言われる人事の仕事。お手本も「一つ」に限定する必要はありません。
いくつもの生の声を聞きながら、最適解を導いていく。

人事のヨコガオは、人事として奮闘する人たちの
あまり知られていない“ヨコガオ”に焦点を当て、
行動思想やストーリーから正解のない人事の仕事のヒントをお届けします。