「より人にフォーカスした課題へ」多くの企業を見てきたからこそ感じる人事課題の変化(前編)

社会保険労務士という専門家の顔だけでなく、社内の人事課題解決に取り組むなど、人事としての一面も持つ新井さん。クライアントワークで数多くの企業を見てきたからこそ、企業の人事課題は個人の多様な働き方に合わせるなど「より人にフォーカスした課題へとシフトしている」と、その変化を感じるようです。そこで前編では、人事労務のコンサルティングを行う立場で感じる人事課題の変化やその対応策はもちろん、社内で取り組む人事施策の話までお聞きしました。

【後編では新井さんのご経歴に焦点をあて、社会保険労務士として人事労務分野に携わるまでの道のりに迫ります】

Profile

新井 将司

汐留社会保険労務士法人
事業統括役員 社会保険労務士/行政書士

大学卒業後、2009年に印刷会社へ新卒入社。社会保険労務士の資格を取得後、2011年に汐留社会保険労務士事務所(現法人)に企業コンサルタントとして転職。労働社会保険法に基づく各種手続きから人事制度の設計・提案等幅広い仕事を担当。2014年に同法人役員に就任。IPO準備、M&A、組織再編支援などを得意とし200社以上のコンサルティングを経験する傍ら、事業統括役員として現法人の事業戦略を担っている。

複雑化する人事課題への対応は「現状の見える化」がスタート

新井さんは、人事や労務のコンサルティングを通じて、これまで数多くの企業を見てきたかたと思いますが、企業の人事課題はどのように変わってきたと感じますか?

新井さん

「以前は人事課題もいまほど複雑ではなく、割増賃金を踏まえた給与体系の見直しや社会保険料の最適化、終身雇用や年功序列といったこれまでの雇用制度の見直しなど企業ごとの課題が似ている部分も大きかったんです。ただ、いまはもっと課題が複雑化、細分化されていますよね。360度評価のような多面的評価制度を導入する企業も増えてきていますし、リモートワークや時短勤務、副業など働き方も多様化してきている。とくに現在は同一労働同一賃金や時間外労働時間の上限規制といった法改正への対応は徐々に終わり、どちらかというと個人の多様な働き方に合わせる、人にフォーカスした課題にシフトしてきているように感じます。多様な個性を持つ人への対応が求められるからこそ、解決策にも正解がない状態。だからこそ、こちらから一方的な提案をするのではなくて、クライアント企業様と膝を突き合わせて話し合いながら、最適解を一緒に見つけていく過程を大事にしています

正解がないからこそ、クライアント企業様と一緒に答えを見つけていくのですね。

新井さん

「はい。お客様と話していると、よく『離職率を改善したい』『社員満足度が高い評価制度を作りたい』といった直接的な課題を言われるのですが、それに単純に対応すれば問題が解決するとは限りません。例えば『評価制度に問題がある』と言われても、制度自体に問題はなくて運用に問題があることもあり、具体的なお悩みがあってもどこを改善すべきかわかっていないケースもあります。従業員の満足度やコンディションといった人にフォーカスする課題も増えており、ルールを改善すれば必ず効果が出るというわけでもなく…。運用面や組織​​作りまで考える必要もあります。逆に言うと、制度面でのベースが整ってきたからこそ、より高いモチベーションを維持できる環境作りなど、制度を変えるだけでは実現できない課題も見えてきたのがいまだと思います。そんな課題を解決するためにも慎重なヒアリングはもちろん、まずは現状の可視化が必要ですよね」

課題が細分化され、しかも解決策に正解がないなかでクライアントに合った提案を行うのはなかなか難しいお仕事ですね…。

新井さん

「一筋縄ではいかなくなったと感じています。前提としてお客様の課題感が本当に従業員の求めることとマッチしているのか、本質的な課題は何かを把握するためにも、ES(従業員満足度)調査や組織分析などを通じた現状の見える化から始まると考えています」

スキルの可視化で「クライアント」と「社内担当」をスムーズにマッチング

新井さんは対クライアント業務だけでなく、事業統括役員として自社の事業戦略や人事の取り組みも行っていますよね。元々、社内にはどういった人事課題があったのですか?

新井さん

「汐留は人事領域を総合的に支援しているので、社員のスキルも多様です。制度設計よりも運用面の提案が得意な人、給与計算システムや勤怠管理システムなどITツールの導入支援が得意な人など、強みや業務経験はさまざま。そこでクライアントの課題に応じて担当をアサインするのですが、誰が何をできるか、どの領域までできるか、といったことが非常に見えにくい状況でした。プロジェクトのたびに『この仕事に詳しいのは誰?』といったことを聞いて回ることもあり、効率が悪い…。以前からそうしたスキルの可視化が課題だと思っていたので、事業統括をする立場になったいま、本腰を入れて取り組んでいるところです。カオナビを導入した目的の一つでもありましたので」

カオナビはどんな使い方をされているんですか?

新井さん

「使い方の一部にはなってしまいますが、私たちの仕事では勤続年数よりも業務経験のほうが大事なことも多く、『この仕事をやったことがあるかどうか』が差を生むんです。そこで『プロファイルブック』に詳細な業務経験を入力してもらっています。『ピックアップリスト』で業務経験別にリストを作成できたりもするので便利ですね。クライアントや案件ごとに誰を担当にあてるかというマッチングは、前と比べてかなりスムーズになってきたと思います」

ちなみに汐留さんは弊社で紹介パートナー契約も結んでいただいているかと思います。クライアント企業様に対しては​​どんな用途でカオナビを提案する機会が多いですか?

新井さん

「あくまでも普段のコンサルティング業務のなかで出てきた課題への解決策の一つとして、提案できるのであればするスタンスなのですが、評価運用への活用が多いですね。評価は企業ごとの独自性が強いので、フォームや権限設計などのカスタマイズ性に優れたカオナビはマッチしていると感じています」

トライ&エラーの繰り返しが最適解を導き出す

自社の人事施策に関して、今後、取り組みたいことがあれば教えてください。

新井さん

「カオナビを通じて業務経験などは可視化できたものの、そのレベルが相対的に見てどの程度かは可視化できていないんです。そこで、スキルレベルを定義したり、業務経験の点数化を行ったりしてスキルマップを作成したいと思っています」

スキルマップは将来的に評価とも連動できそうですね。

新井さん

「まさに、そこを目指しています。汐留には本当にさまざまなキャリアの方がいて、制度設計、アウトソース、人材開発、安全衛生など幅広く専門化しています。各々が専門性を突き詰めた結果がしっかりと評価に反映されるためにも、やはりスキルマップが重要な要素になると考えているんです。また、汐留は働き方も時差出勤やフルリモート、育児休暇を取得する男性もいて、それを認め合う風土があるんです。社労士としての専門性を活かした独立以外にも、どういう働き方をして、どんなキャリアを目指したいのか、その人にあった道を提示し、応援できる環境を作っていきたいですね」

続く後編では、社会保険労務士になったきっかけなど、新井さんご自身の経歴を紐解いていきたいと思います。

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会社概要

社名 汐留社会保険労務士法人
設立 2008年11月(2014年8月 法人設立)
事業内容 労働・社会保険の適用・給付事務手続き代行、給与計算・人事労務のアウトソーシング、人事考課制度導入等の企画・立案・実施など
従業員数 36名(うち社会保険労務士17名)
会社HP https://www.shiodome-sr.jp/

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