「人の成長に携わりたい」幼少期のゲーム体験で見つけたキャリアの軸(前編)

ソーシャルゲームの企画・開発や、ワンストップで開発から運営まで請け負う受託事業などを展開する株式会社ダンクハーツ。同社で人事を担当する長谷川春菜さんは、前職にはゲームプランナーとして入り、プロジェクトマネージャーまで経験。その後、人事のポジションを求め、ダンクハーツに転職しました。小学生の頃のゲーム体験をきっかけに、作る側に回りたいと、クリエイターとしてスタートしたキャリア。そこから、なぜ人事の仕事に興味を持つようになったのか。そこには、長谷川さんだから気づいたゲーム作りと人事の共通点がありました。

【後編では人事業務の苦労やダンクハーツの人事施策についてお届け】

*本記事の掲載内容はすべて取材時(2022年5月26日現在)の情報に基づいています

Profile

長谷川 春菜

株式会社ダンクハーツ
管理部長 兼 人事責任者

新卒でゲーム会社にプランナーとして入社し、3年目でコンシューマーゲームやアプリ開発チームのプロジェクトマネージャーに抜擢。その後、会社説明会へ登壇したことをきっかけに人事の仕事へと興味を持ち、人事としてダンクハーツに入社。プロジェクトマネージャー時代の経験を活かして管理体制の構築や採用フローの見える化、プロジェクトアサイン検討時の効率化に着手。現在は管理部長と人事責任者を兼任する。

小学生から続けている小説の執筆と、ゲームがキャリアの原点

長谷川さんは、前職でゲームプランナーとしてキャリアを積まれていたそうですね。クリエイティブ業界で働こうと思ったきっかけはあったんですか?

長谷川
さん

「元々のきっかけは、小学生のときから趣味で書いている小説なんです。小学3年生の夏休みに、宿題で絵本を作ったのが始まりでした。『うさぎのいいところ』というお話で、森に出かけたうさぎが、力持ちの熊や綺麗に空を飛ぶ鳥、スイスイと泳ぐ魚たちに出会うんです。『皆にはいいところがあるのに、私にはない』と悲しむうさぎですが、母親に『あなたにもよく聞こえる耳があるよ』と教えてもらい、嬉しくなって森の皆に伝えにいくという物語です。それだけならよくある夏休みの宿題なんですが、なんと当時の担任の先生がこの作品をもとに、年に一度の学校祭で披露する劇を創作してくれて。このとき、自分の頭の中にある世界が形になることに喜びを感じたんです。形にしたことによって周囲から『よく考えたね』『面白いね』と、反応をもらえることも嬉しかった。それで、中学・高校の頃は小説のコンテストにたくさん応募するようになりました。自分で何かを作るのが好きだったので、クリエイティブな仕事には自然と興味を持ったんです」

クリエイティブな仕事の中でも、ゲーム制作会社を選ばれたのは何か理由があったんですか?

長谷川
さん

「就職活動が始まったとき、改めて人生を振り返ってみると、ゲームが自分自身の成長に大きく関わっていたからです」

ゲームとご自身の成長が、つながった経験があるんですか?

長谷川
さん

「そうなんですよ。小学生時代『FINAL FANTASY Ⅸ』をやっていたとき、台詞に出てきた熟語の意味を調べたり、経験値の計算を暗算でずっとやったりしてたんです。すると、気づかないうちに国語や算数の知識がついていった。それに、ゲームの主人公が発した『誰かを助けるのに理由がいるかい?』というセリフに大きな影響を受け、私自身も『仲間を守ること』を生きる上で一番大切にしていこうと思ったんです。今でもこの価値観を大切にしています。楽しくて夢中になれる。しかも自分の成長にまでつながっているゲームって改めてすごいなって思いました。私も『誰かの成長につながるゲームを作りたい』と思い、ゲーム業界を第一志望にしたんです」

『誰かを助けるのに理由がいるかい?』というセリフが刺さったのはどうしてなんでしょうか?

長谷川
さん

「単純に『主人公がかっこよかった』という子どもらしい理由です(笑)。主人公が命を顧みず人を助ける姿を見て、助ける行為に理由はいらないのか、助ける相手が誰かは関係ないのかと知りました。それが私にはとても響いて、『自分もそんな風に生きたい』と思ったんです」

「誰かの成長に携わる」という点で共通したゲーム作りと人事

そうした幼少期の原体験があるなかで、新卒ではゲーム会社に入社されたと。

長谷川
さん

「はい。会社説明会で、”絶対ここに就職したい!”と思えた第一志望の企業に入社することができました」

ここに就職したいと思った理由はなんだったのですか?

長谷川
さん

説明会がとにかく楽しかったんですよ。質疑応答では『本当に何でも聞いていいよ』と言われたんですが、バーベキューでナンを焼く社員さんの写真を見た一人の学生さんが『なんでナンを焼いているんですか?』って聞いたんです。説明会でそんなん聞く!?って衝撃で(笑)。でも、そこで社員さんが『別にダジャレじゃないんですけど、ナンでやろな』って返したんですよね。そのときに、緊迫した雰囲気から一気に笑いが起きて。こういう人がいる会社だったら絶対楽しいじゃん!って思ったんです」

すごくフランクな会社で、長谷川さんのお人柄とも合いそうですね。

長谷川
さん

「そうなんです。あと、真面目な話をすると、ゲーム制作を効率化する『ゲームエンジン』というソフトウェアを、自社で開発していたことも決め手でした。通常、ゲームエンジンはすでに世の中に提供されているものを借りてきて、新しいゲームを制作することが多いんです。でも、前職ではよりクオリティの高いゲームを作るために、ゲームエンジンそのものから開発することにこだわりを持っていた。しっかりとした技術力をもとに自分たちでゲームを作り、上辺ではなく根本から物事を理解しようとする姿勢があるんだなと感じられたのも、入社の決め手でした」

前職では、どんな業務を経験されたんですか?

長谷川
さん

「入社後まずはゲームプランナーとして経験を積みました。一例としては、すでに販売されているゲームソフトを当時の最新ハードに移植するプロジェクトなどに携わっていました。移植にあたってはハードの機能自体がそもそも違うので、それに応じた修正をしなければなりません。先輩方が、右も左も分からなかった私を育てながら大きなタイトルを経験させてくださいました。2年ほど経ったタイミングでプロジェクトマネージャーへのお話をいただき、他社の有名タイトルや自社のオリジナルタイトルを担当させていただきました。プロジェクトマネージャーとしての主な業務はチームメンバーのタスクや進捗の管理なのですが、オリジナルタイトルでは声優さんやサウンドクリエイターを探す活動、広報業務としてイベント出展の申し込みや展示方法を決めるなどプロモーション部分も担当していました。手が足りないときにはセリフ作成も担当しましたね」

そこから、人事に転職しようと思ったきっかけは?

長谷川
さん

「前職で、会社説明会へ登壇したことがきっかけでした。プロジェクトマネージャーになった頃、現場の社員の声を届ける目的で、まさに私が就活していたときに参加した会社説明会で、仕事について話す機会が増えてきたんです。会社の代弁者として、学生さんに自分の声を直接届けられることがすごく嬉しかった。そこから人事として働ける会社を探し始めたんです。今になって思うと、誰かの成長に携わるという意味で、ゲーム作りも人事の仕事も共通していましたね」

なかでも、ダンクハーツに決めた理由は?

長谷川
さん

「面接担当の方とすごく波長が合ったというか、話しやすくて。それで、もうここしかないと。ただ、不安もあったので、現場の人とも会わせてくださいとお願いしました。一次面接は管理部長、二次面接は社長・取締役と偉い方ばかりで、もう少し現場の方とも話しておきたいと思ったんです。ざっくばらんに話をすることができ、ここなら大丈夫じゃないかなと思えた。前職もそうでしたが、やっぱり誰と働くかという人の部分は、すごく重要ですよね」

新人研修にゲームの要素を盛り込み、実践から得られる学びを重視

前職の会社で、現在の人事の仕事に活かせていることはありますか?

長谷川
さん

「もちろんすべて活きているのですが、何か問題があるときにどう解決できるかを考える姿勢は一番活きていると思います。実際に、入社当時見つけた問題点を解決に導けるようにと、社内の研修を作りました。こうして私が自分で手掛ける研修には、全部ゲームの要素を入れるようにしているんです。例えば、『人間知恵の輪』というゲームを研修に取り入れたことがあります。5人以上で円になって右手と左手をそれぞれ遠くにいるメンバーとつなぎ、つないでいる手を一回も離さずに手の下をくぐったり上を跨いだりしながら、皆で一つの大きな円を作るゲームです」

そのゲームにはどのような狙いがあったのでしょうか?

長谷川
さん

「コミュニケーションの重要性に気づいてもらう狙いがありました。自分から見えている手の絡まり方と、相手から見えている手の絡まり方って違うので、ある人が『手を下げて』と言ったとしても、相手からすると『いやいやその手を下げたら、そいつ腕折れるで』みたいなことになるわけです。お仕事ではこれとまったく同じことが起きますよ、と。つまり『あなたから見えている事実と、他の人から見えている事実はまったく違うもの』ということに気づいてもらいたかったんです。その上で、こうした齟齬をなくすために取るのがコミュニケーションであり、だからこそ必要なものなのだと、座学ではなく実体験で知ってもらうことを大事にしています」

言葉だけでコミュニケーションの重要性を伝えるだけではなく、体験してもらうことを大事にしているわけですね。

長谷川
さん

「そうですね。ほかにも、スケジュール管理やメンタル管理の大切さを伝えるワークなども実施しています。例えば『夏休みが残り5日間で、算数・国語・英語の宿題がまだたくさんあります。あなたはどうやって宿題を終わらせますか?各自スケジュールを立ててください』というワークをグループで取り組んでもらうんです。最後、皆で突き合わせると、やっぱり皆スケジュールの組み方が違うんですよ。国語から一気に終わらせる人、算数と国語と英語を少しずつ進める人、夜になってからしか宿題をしない人などさまざまです」

夏休みの宿題という切り口が面白いですね。

長谷川
さん

「実際の仕事でのスケジュール管理も、もし上司から『このスケジュールでお願い』と言われたとして、それを真に受けるだけではダメ。自分のスケジュールや性格をきちんと把握しているのは自分だけなので、難しいときには自分から『ここはこういう感じなんで自分はこのスケジュールだったらできます』と言わないといけません。その訓練にあたるワークという感じですね。聞いているだけのセミナーだと、どうしても理解はできても納得レベルまで落とし込むのは難しいですからね」

続く後編では、未経験の人事で苦労した経験や、現在注力しているという会社の認知度を上げる施策についてお届けします。

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会社概要

社名 株式会社ダンクハーツ
設立 2005年6月21日
事業内容 コンテンツメディア事業、ソーシャルゲームコンテンツの企画・開発・運営
従業員数 92人(2022年5月現在)
会社HP https://www.dank-hearts.co.jp/

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