答えがないから「まずは試す」。課題解決を前進させる私の行動指針(後編)
ソフトブレーン株式会社 |
人財開発室
江原 仁美さん
2022.09.22
新卒と比べると高い中途採用者の離職をどう抑制していくのかが、今後のソフトブレーンの大きなチャレンジだと話す江原さん。離職防止の観点で同社が現在取り組んでいるのが、パルスサーベイです。コンディションの把握だけでなく、マネージャー陣が、部下のことを考える機会が確実に増えたほか、社員自身の自省の機会にもなっているそう。後編では、そんな同社の人事課題や施策について江原さんに詳しく聞いていきます。
【前編はこちら】
*本記事の掲載内容はすべて取材時(2022年6月3日現在)の情報に基づいています
Profile
江原 仁美
ソフトブレーン株式会社
人財開発室
大学卒業後、IT企業にシステムエンジニアとして入社したものの、大学時に専攻していた国際関係の仕事をしたいという思いが日に日に強まり、国際協力事業に取り組む独立行政法人へと転職。その後、ビジネスを動かす現場に戻りたいと転職した会社で人事職の魅力に気づき、現職も含めて計3社で人事業務を経験。2019年9月には国家資格キャリアコンサルタントを取得し、今後はキャリアに関する悩みを抽出できる体制を構築しながら、個々がイキイキと働けるキャリア形成のサポートなどにも注力。
離職防止の観点で導入したパルスサーベイで、部下と上司のコミュニケーションが活性化
ソフトブレーンに転職してからは、まずどういった業務から担当したんですか?
「エンジニアの新卒採用ですね。今までの自分の経験を生かすことはできたんですが、前職は会社の知名度もあり、そこまでエントリー数に困りませんでした。ただ、私たちはまだまだ無名の会社だと感じているので、こちら側から能動的にアプローチをしないと、エントリー数を増やせない状況。そこで合同説明会や採用イベントなどで会った方には、これまではメール1本で『またお会いしましょう』と連絡するところを、オーソドックスな方法ですが、できるだけ電話を通して採用熱を伝えるようにしました。決して効率的とは言えませんが、人同士のやり取りだからこそきちんと熱意を伝えることで着実にエントリー数を増やすことができましたね」
そして3年以上、ソフトブレーンで働かれていると思いますが、現在はどのような人事課題を抱えていますか?
「課題というか、今後の大きいチャレンジとして、離職の抑制です。ここ数年で国が働き方改革を推進していることあり、ビジネスパーソンのなかでキャリアに対する柔軟な思考が確立され、キャリアチェンジ・ジョブチェンジで一定数の離職があることは承知していますし、当社のようなIT企業の場合、ある程度の人員の流動があるのはどこの会社も一緒だと考えています。そのなかで、活躍している社員・その可能性を秘めている社員にはもっとその力を発揮して欲しいと思いますし、そういった社員のコンディションを把握しながら、フォローする体制を構築する必要があると感じています」
具体的に、実施している施策はあるんですか?
「他社の人事の方にも相談したところ、『パルスサーベイをまずやってみたら?』と言われ、まずは無料で使えるGoogleフォームで1ヵ月に1回程度アンケートを取り、コンディションを把握するようにしました。元々、パルスサーベイ自体は知っていたのですが、自社と同じ規模感で、似た課題を持っている人事の知り合いに直接言われると、やってみようと思いますよね(笑)」
なるほど。その知り合いの人事の方の後押しもあり、まずはパルスサーベイを実施されたわけですね。
「はい。ただ、回答をExcelに集めて分析していたのですが、集計作業などに2~3時間程度の工数を取られてしまう。いい加減システム化しようということで、カオナビさんの『パルスサーベイ』を導入させていただきました。結果、分析が簡単にできるようになってとても便利ですね。前回と比べたときのスコアの上げ下げがすぐ分かりますし、適性検査の結果もなども照らし合わせて、この人がどういうタイプなのか把握しやすくなった。また、調査結果の画面には面談結果や日常の会話で気づいたことも入力しています。パルスサーベイを導入してから、マネージャー陣が部下のことを考える機会も着実に増えたんです。月に1回、パルスサーベイの回答データが集まってくるので、考えざるをえない。そのおかげで、上司が部下に気を配る機会も増え、コミュニケーション活性化にもつながっていると感じます。パルスサーベイを導入したのは、分析の効率化と社員のコンディション把握が主な目的だったのですが、これは思わぬ効果でしたね。また、マネージャー陣だけでなく、入社して1ヵ月経ったけどどうだったのかなど、社員本人の自省の機会にもなっていますね」
コンディション把握を目的に導入したパルスサーベイですが、そのほかにも意外な効果があったわけですね。
「そうなんですよ。やはり、同じ規模・課題感の企業が取り組んでいて、一定の成果が出ている施策は真似して、まずは試してみたほうが良いなと思いました。その結果、上司と部下のコミュニケーション活性化のように、当初は予想していなかった効果を得る可能性もありますからね。人事の課題解決に向けた取り組みは、なかなか社内に相談できる人がいなくて、明確な答えがあるわけでもない。だから、他社の人事の方に聞いたことや、他社事例で参考になったことは、まず試してみるんです。他社の事例を参考にするなかで、自社なりのやり方も見えてきますから。例えば、パルスサーベイでは捉えづらい悩みも会話のなかで拾っていこうと、弊社では定期面談も並行して行うことに決めました。現在、中途社員は入社後の2ヵ月目と3ヵ月目に、新卒社員は入社半年目までは、毎月人事マターで面談をしています。今後は現在の業務に限らず、今後のキャリアに関する悩みを抽出できる体制も作っていきたいので、私は国家資格キャリアコンサルタントの資格を持っているのですが、希望者に対して面談をしていく予定です。面談結果はパルスサーベイと紐づけて、より精度高く、離職の原因や傾向を分析できたらと思っています」
企業説明会で話す経験が社員の「自社理解」と「成長実感」につながる
そのほかに、実施している施策はありますか?
「会社全体の話になりますが、フレックスやシフト制なども取り入れながら、働き方を見直しているところです。残業抑制についても、私が入社した頃に比べ、かなり積極的に取り組んでいますね。例えば、19時にはオフィスのパソコンが全部シャットダウンします。生産性向上を後押しするソリューションを提供している会社なので、そんな会社の従業員が残業していたらダメだよねという理屈もあります」
ソフトブレーンの使命である「顧客の生産性の最大化」を、自社でも実践されているわけですね。最後に、今後、取り組みたい施策があれば教えていただけますか?
「これまで採用に注力してきたのですが、今後は育成を機能させたいと考えています。育成研修のブラッシュアップはもちろん、カオナビで可視化した人材データをもとに、個々人の適正にあわせた業務のアサインを実現したいですね。育成とは少し異なるかもしれませんが、企業説明会などでは人事だけでなく、とくに若手社員に自社のことを話してもらう機会も設けるようにしています。そうすることによって、自社の理解が深まるだけでなく、学生時代と比べることで社会人として成長している実感も得られると思うんです。学生から見ても、近しい年代の人が話している姿を見て『この会社なら成長できそうだ』という実感を得てもらいたいんですよね」
説明会を通して、社員の方が自社の理解を深めたり、成長を実感したりする機会になっているんですね。
「はい。また、社員の離職の抑制と定着はもちろんですが、個人的には評価制度の改善にも取り組みたいんです。というのも、昇格や昇給の基準がまだまだ管理職側の判断にゆだねられている部分があり、やはり社員側からすると何をしたら給料が上がるのか、昇給できるのかが分かったほうが仕事のモチベーションにもつながると思っています。ただこの分野に関しては私も勉強不足なので、もっと自社のことを理解してから着手することになるのかなと想像しています」
ありがとうございました!話を聞くと、本当に人事の仕事が好きなんだなと感じました。
「同僚からは『天職だよね』って言われます(笑)。仕事が面白くなってきてからは、プライベートと仕事を連動して考えることも増えたんですよね。私は休みの日に演劇を観に行くことが多いんですが、役者さんのお芝居を見て、会社説明会など人前で話すときの口調や表情などの参考にしているんです」
編集後記
システムエンジニアからスタートし、まったく予想もしなかったと話す人事のキャリア。遅咲きのキャリアと話しながらも、同僚からは『天職だよね』と言われるほど仕事を楽しまれている感じは、江原さんの話ぶりからも伝わってきました。いろいろな仕事を経験をしたからこそ自分に合う合わないがわかり、結果的に「人事」という自分に合う仕事に出会えた江原さん。その道のりは、回り道のようで案外、近道だったのかもしれませんね。天職を見つけた実例のような取材でした。
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会社概要
社名 | ソフトブレーン株式会社 |
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設立 | 1992年6月17日 |
事業内容 | 営業イノベーション事業 |
従業員数 | 単体:213名、連結:1,056名(2021年12月末時点) |
会社HP | https://www.softbrain.co.jp/ |