「スコーンが好き」と「いろいろな人への興味」からはじまった湖池屋人事への道(前編)
株式会社湖池屋 |
経営管理本部 人事部 人材マネジメント課
大倉 奈々さん
2022.10.11
国内で初めてポテトチップスの量産化に成功し、その後も「カラムーチョ」をはじめとする数々のヒット商品を世に送り出してきた、湖池屋。同社で2013年より人事部に在籍し、採用や制度設計に関わってきた大倉さんは、就職活動の時点で「メーカー志望」と「人事志望」とはっきり決めていたといいます。前編では、人事に興味を持ったきっかけから、実際に働き初めて感じたギャップについてお聞きしました。
【後編では、湖池屋の人事課題や施策に迫ります】
*本記事の掲載内容はすべて取材時(2022年8月2日現在)の情報に基づいています
Profile
大倉 奈々
株式会社湖池屋
経営管理本部 人事部 人材マネジメント課
早稲田大学を卒業後、新卒で株式会社フレンテ(現 株式会社湖池屋)に入社。経理部へと配属後、2013年より人事部に異動。採用活動、各種研修プログラムの企画運営をはじめ、人材育成に携わる。2017年より人事制度設計チームに加わり、組織開発・制度全般の見直し・改定も手がけたほか、現在はタレントマネジメントの推進にも取り組む。
会社は人が起点。そこを支える人事の仕事が魅力的だった
元々、就職先として湖池屋を選んだ理由は何かあったのですか?
「家族がメーカー勤めだったこともあり、商品愛を感じる環境で育ちました。親の勤める会社以外の商品を使うと怒られてしまう…そんな家庭です(笑)。ある意味厳しいのですが、私は自社の商品を『好き』と胸を張れる働き方に、憧れていたんです。だから、自然と自分が好きな商品を扱っているメーカーを志望していて、そのなかで湖池屋から内定をいただき、入社を決めました。湖池屋の『スコーン』が好きで、学生時代にテストが終わった後など、ご褒美としてよく食べていたんです。自分の好きなもののために働けるなら、自然とモチベーションも湧くと感じた。だから、私の『好き』を扱っていた湖池屋を選んだんです」
人事の仕事にも、就活のときから興味を持っていたんですか?
「これも、メーカーを志望した理由と同じで、家族の影響でした。というのも、家族が人事をしていたので人に関わる仕事って面白そうだなと感じ、メーカーでなおかつ人事の仕事をしたいというのは、就活の時点で決めていましたね」
ご経歴を見ると、大学で心理学を専攻されたのも「人」に関心があったからなのですか?
「そうですね。子どものときに複数回の転校を経験し、いろいろな人と関わる環境で育ったせいか、誰ひとり同じ人がいないという点が、子どもながらに不思議だったんです。顔も性格もみんな違う。好きなものも違う。そういった純粋な興味から、中学生になって心理学の本を読むようになり、大学でも学び、いろいろな個性の人と接する機会の多い人事の仕事にもつながっているんだなと感じます」
好きなものを製造するメーカーと、人に関わる人事の仕事。2つの興味が結びついての就職活動だったんですね。
「はい。私自身、会社は『人が起点』だと考えているんです。商品が生み出され、使う人の手に渡るまでには、多くの人の手を介して届けられます。それらの『人』を支える仕事、つまり人事の仕事がしっかりと機能していれば、商品に関わる大勢の人たちがスムーズに働くことができる。最終的にそれは商品に転嫁され、使う人たちも幸せになる。どの会社にも人がいないとはじまらないからこそ、それを支える人事の仕事は魅力的だと思いますね」
「人事はどんどん外に出ていく」湖池屋人事の基本スタンス
湖池屋に入社後、早速、人事部に配属されたのですか?
「いえいえ。もちろん入社前に希望は伝えていたのですが、実際の配属は想像していなかった経理部でした。就活で『人事希望』と伝えたときに、湖池屋の面接では好意的に捉えてもらっていたため、勝手に人事に配属されると思っていたので驚きました(笑)」
そこからどのようなきっかけで人事部に異動になったのですか?
「きっかけというよりも、機が熟したという言い方のほうが合っているかもしれません。後から聞いた話ですが、いきなり人事の配属では視野が広がらないので、修行の意味でも経理部に配属した意図があったそうです。ずっと『人事をやりたい』と言い続けていたのを忘れずにいてもらえたのと、経理部のなかで地に足をつけて仕事に取り組むようになったのを評価してもらえたのかなと思っています」
実際に働くようになって、思い描いていた人事の仕事とギャップはありませんでしたか?
「ギャップというよりは、経理部の視点で見ていた会社像とはまた違うと感じました。経理部のとき工場は、製造と原価計算の観点で捉えていました。でも、人事になると当たり前ですが、一人ひとり製造に携わる社員がいて、工場ならではの採用や研修もあってと、見え方がまるで違ったんです。人事に配属されてたくさんの人が見えるようになってきたからこそ、こんなにも私は社員のみなさんのことを知らないんだなと思いました」
社員の方を知るために取り組まれたことはありますか?
「当時は、ことあるごとに接点を持つようにしていました。電話で話を聞くのはもちろん、実際に現場にも足を運び、工場勤務の方が働く環境や採用・研修の苦労など、知るようにしましたね。採用業務で各支店に行くこともありました。基本的に『人事がこもってはいけない』と言われているんです。以前、育児休業から復帰した際、社長からも『どんどん出て行けよ』と背中を押してもらいました」
上長に「やりたい」と直談判して実現した社員紹介ページ
人事に配属されて、はじめはどんな業務を担当されたんですか?
「主に新卒採用業務でした。なかでも、自社の社員を応募者の方に知ってもらうために、新卒採用サイトの社員紹介ページを作ったのが印象に残っています。というのも、元々やる予定があった施策ではなく、私のほうから上長に『やりたい』と直談判したことでした。当時は社員の露出が少なく、一緒に働く人がどんな人なのかを伝えきれていませんでした。私自身、就活のときに「どんな人が働いているのかもっと知りたい」と思ったのもきっかけです。おこがましいとは思いつつ、魅力的な社員をもっとフロントに出すべきだ!と熱くなっていましたね。しかし採用にかけられる予算はすでに決定済み。人事も人が少なかったため、取材から執筆まで一人で担当したのは、いまになると良い思い出です(笑)」
すごい熱量ですね!
「大変でしたが、憧れていた人事の仕事にようやく就けたタイミングだったので、苦労を苦労と感じない、良い意味で鈍感でした。熱量といえば聞こえはいいかもしれませんが、ちょっと暑苦しい私を受け入れてくれた上司には、とても感謝しています」
2017年からは人事制度の設計にも携わったそうですね。
「2016年に現社長が就任し、経営戦略に合わせた人事制度改革が行われました。年功序列的な評価軸から当時はコンピテンシーを使った評価軸に、職能給を役割給に変更するものです。そこで私は、社員向けの制度説明会の運営を任されました。本社・支店・工場と全国行脚です。採用業務とはまた違う難しさを経験しましたね」
どんな難しさがあったのですか?
「まず説明会の目的は、変更する制度の内容を社員のみなさんに理解してもらうことです。そのためには、制度をかみ砕いてわかりやすく、ポイントを押さえて社員属性に応じた説明を行う必要がありました。年功序列廃止を前提とする制度でしたので、改革への印象は社員によって異なることが予想されたためです。比較的年次が若い社員はポジティブに捉え、年齢や役職によっては抵抗感を抱く社員の方もいると考えました。そのため説明会の参加者を年齢や役職といった属性で分け、その属性に応じた説明をしていきました」
対象者に応じて内容を変えたということですか?
「扱う内容自体は全く一緒なのですが、属性によって新制度に対する期待や不安の種類・大きさが異なります。不安を取り除き、新制度のメリットを感じてもらいやすいように、構成を工夫しました。採用の会社説明会のように明るく話すだけではない説明の仕方を求められたのは初めてでしたので、パッションと、ロジカルに伝える部分のバランスは模索しましたね」
社員の方に真摯に向き合う機会だったのですね。
「人事制度は社員の方のモチベーションもエンゲージメントも、そして生産性にも直結する、いわば会社の肝です。だからこそ、導入段階で社員の方が感じる疑問や不安をできるだけ軽減した伝え方をしたいと思ったんです」
後編ではタレントマネジメントの推進をはじめとした大倉さんが取り組む施策を中心に、話を聞いていきます。
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会社概要
社名 | 株式会社湖池屋 |
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設立 | 1958年1月 |
事業内容 | 菓子製造業 |
従業員数 | 909人(国内604名、海外305名。2022年3月31日時点) |
会社HP | https://koikeya.co.jp/ |