『事実』『データ』『感情』でちゃんと説明する。社員の心を動かすためにぼくが意識していること(後編)
アンファー株式会社 |
人事部 労務研修ユニット リーダー
中村 竜次郎さん
2023.01.18
中村さんの入社時は200名に満たなかった社員数も、この2年で300名規模までに急成長するアンファー。そのなかで中村さんが現在、注力しているのが人材開発です。元々、同社では専門性を追求するべきという意見もあったそう。しかし現在は、業務の領域を広げつつパフォーマンスを高める「総合力」を身につけてもらう方針で人材開発を行っています。
そこで、後編では総合力を身につけてもらうための施策をご紹介。社員が人事に対してネガティブな印象を抱かないために大切にしていることや、組織としての行動指針も聞きました。
【前編はこちら】
*本記事の掲載内容はすべて取材時(2022年11月4日)の情報に基づいています
Profile
中村 竜次郎
アンファー株式会社
人事部 労務研修ユニット リーダー
大学卒業後、サッカーでドイツ5部リーグにトライアウト挑戦。その後、帰国し、新卒で食酢メーカーに入社し、人事業務を担当。整骨院専門の経営コンサルタントを経て、アンファー株式会社に人事として入社。サッカーで培ったチャレンジ精神、現場第一の目線、コンサルで得たロジカル思考を活かしながら、日々人事課題の解決に取り組む。
会社の成長に必要なのは、一人の「総合力」
アンファーでの現在の業務を教えてください。
「この4月からは労務研修ユニットのリーダーになりました。労務研修という名前ですが、業務は多岐に渡ります。もともとは人事ユニットという名前で4名のメンバーが在籍していたのですが、元々人材業界出身のメンバーが採用を選任で行うことになり、それ以外の業務をぼくが引き受けました。そのため、組織改編や評価の見直し、制度設計なども担当します」
いま感じている人事課題は何がありますか?
「人材開発による社員の生産性向上です。スカルプシャンプーなど商材の知名度で大きな会社というイメージを持たれることもあるのですが、社員数的にはまだまだ。そのため、一人ひとりが総合力を身に着け、活躍の可能性を広げることが企業成長につながります。ビジネスを持続的に大きくするには、一人ひとりのパフォーマンスを高め、結集したときのチームのパフォーマンスを最大化させる必要があります。そこで、人事として何ができるのかを考え、取り組む日々です」
総合力を身につけてもらう方針なのですね。
「社内で活躍している人を分析したところ、マルチに活躍し、やったことのない仕事に挑戦する意欲が高い傾向にあることが見えてきたんです。数年前までは、システム関係やWEB関係の人材を採用し、専門性を追求するべきという意見が強い時期もありました。でも、現在は業務の領域を広げつつパフォーマンスを高める方針をとっています。スキルの幅を広げつつ、マネジメント力も高める。そういった意味での総合力ですね」
総合力を身につけてもらうために実施している施策があれば、教えてください。
「従業員のパフォーマンスアップのため、学ぶ意欲を刺激するような制度を導入しました。1人につき年間5万円まで、研修補助費用を支給するキャリアバックアップ制度のほか、資格取得時のお祝い金などを設けています。ほかにも、これまで若手中心に行ってきたキャリアに関するビジョン研修を、30代のミドル層まで広げることも検討しています。そのなかで、現在、希望のキャリアや個人のスキルなどを可視化できていない部分があるので、カオナビ上の情報をもっと拡充したいと思っています。現在は半期に1回、社員全員と30分ほど人事面談を行うのですが、そこでヒアリングした内容などもカオナビに蓄積して可視化できれば、人材配置や育成にも活かすことができますからね」
「会社と社員の双方が幸せになる」選択を促すのが、人事の役割
社員全員と面談を行うことで、人事と社員との距離感も近くなりそうですね。
「はい、それはかなり意識している部分です。ほかにも、声をかけたりご飯を食べにいったり、積極的に社員と接点を作るように意識しています。当社では従業員満足度アンケートを行っているのですが、人事施策満足度という項目があり、だいたい70%近くの社員が『満足』と評価しているんです。一方、不満を抱いている人の理由は多くの場合が『何をやっているかわからないから』というもの。知らないことについては、人はネガティブな印象を抱きがちです。だから施策一つにとっても、ちゃんと説明して従業員を安心させることが、人事のやるべきことだと思っています」
そんな中村さんが、仕事をする上で、大事にしていることはなんですか?
「当社では『ホワイトエンジン』として『お客様の立場に立とう』『スピードとクオリティを両立しよう』『新たな挑戦に参画しよう』『失敗から必ず学ぼう』『御礼は3回言おう』という行動指針を重視しているのですが、この浸透ですね。例えば、『新たな挑戦に参画しよう』という行動指針があるので、組織としてはチャレンジングな行動を社員に求めるんです。けれど、人の考えはそれぞれなので、なかには安定志向の人もいるかもしれません。となると、組織の求める方向性と、本人の希望とのずれが見えてくるわけです。もし安定を求めるのなら、ほかの場所に移り、空いたポジションに挑戦意欲の高い人が入れば、個人も組織も幸せになる。そのため、この行動指針を組織に浸透させたうえで、社員が会社の求める方向性とずれていないかを確認し、会社と社員双方が幸せになる選択をできるように調整するのが、ぼくの役割だと思っています」
だからこそ、社員の方との面談を通じて「聞くこと」を大事にされているんですね。
「はい。これは人事制度を見直すときにも大事にしていることです。基本的に、まずは経営陣の意向をミーティングで確認し、そのあと、評価者や被評価者の意見を人事面談で聞いたり、各種アンケートで収集したりして制度の仮案を作ります。そして、その案をもとに、また各所に意見を聞いてかたちにしていくんです。話を聞くことで、経営陣が納得し、社員の皆さんが使いやすい制度設計になることを目指しています」
『事実』『データ』『感情』でちゃんと説明して相手の心を動かす
今後、人事として取り組みたいことはなんですか?
「繰り返しにはなりますが、『何をやっているかわからない』と社員にネガティブな感情を抱いてほしくないので、ちゃんと説明することは引き続き取り組みたいです。人事施策の説明もそうですが、社員同士の距離が近い会社なので、経営陣の取り組みや方向性について『〇〇らしい』と噂が先行することもあるんです。そのとき、ちゃんと説明することで社員の不安を取り除き、安心して個々のミッションに取り組める環境づくりがぼくの仕事です」
説明するときに意識していることはありますか?
「前職のコンサル時代も大事にしていた、『事実』『データ』『感情』の3つを重視することです。事実やデータだけだと形式的に聞こえるし、かといって感情だけで突っ走っても客観性が足りません。3つがそろって初めて、相手の心に届くと思うんです。なので、現状足りない事実やデータの部分をカオナビに情報を集約することで補い、『この社員の得意領域はこんなところなんですよ』と、経営陣やマネージャー陣にフィードバックしながら、一人ひとりの生産性向上につなげたいと思っています」
ありがとうございました。最後に、個人として今後やりたいこともお聞かせください。
「個人としての目標は『関わるすべての人と組織のWell-beingを実現する』ことです。勉強しているコーチングを取り入れながら、相手が本当にやりたいことに導くお手伝いができれば、社内外問わず、関わる人みんなを幸せにできると思うんです。あとは『中村が元気だから、ちょっと頑張ろうかな』というように、人にエネルギーを与えられる自分であり続けたいです」
編集後記
海外でプロになる道から一転して就職に切り替え、最終的に辿り着いた人事のキャリア。大胆な経歴をもとにした話に引き込まれながらも、とくに印象的だったのが、熱量とロジックのバランスです。ご本人も説明するときには『事実』『データ』『感情』の3つを重視すると話していましたが、取材中の話も過去の出来事にもかかわらず最近あったことのような熱量と、筋道を立てて話してくださる姿が印象的でした。現在の人事は、組織というチームのパフォーマンスを最大化する役割。サッカーで言う監督のような立場で、社員の方の多様な個性を活かしながらアンファーらしいチームを作って欲しいなと思います。
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会社概要
社名 | アンファー株式会社 |
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設立 | 1987年10月8日 |
事業内容 | 化粧品、サプリメント、健康食品、専門医師監修によるクリニック専売品などのオリジナルエイジングケアプロダクツの研究開発及び製造・販売・卸業務 |
従業員数 | 235名(2022年6月時点) |
会社HP | https://www.angfa.jp/ |