「顔と名前の一致」が開発にもプラスに働く。ロケットベンチャーのひとり人事が”2度”にわたり行う施策(後編)
インターステラテクノロジズ株式会社 |
人事責任者
片桐 哲さん
2023.01.27
これまで都内で人事をしていた片桐さん。次に選んだキャリアは、インターステラテクノロジズという北海道のロケット開発ベンチャーで、人事をやることでした。このときの転職の軸が、「これから成長していく業界」「人事がまだいない組織」。そんな転職の経緯を詳しく聞くとともに、インターステラテクノロジズの人事課題や施策に迫ります。
Profile
片桐 哲
インターステラテクノロジズ株式会社
人事責任者
1990年生まれ山形県出身。2013年にパーソルキャリア株式会社(旧インテリジェンス)に入社し、営業として従事。その後は株式会社MTGの「SIXPAD」ブランドの採用責任者、株式会社EVERINGの設立とOperation Manager、株式会社Libryの採用責任者として従事。2022年7月から現職。
「成長業界」かつ「人事がまだいない」。転職の軸と一致した今の会社
前職のLibryから、インターステラテクノロジズに転職しようと思った経緯を教えてください。
「このときの転職活動では、「成長している業界」かつ「人事がまだいない」という基準で会社を探し始めました。そして成長している業界を調べていくなかで、宇宙業界に強く惹かれたんです。GAFAをはじめ、宇宙ビジネスへの投資は年々加速しています。なかでも、衛星などを宇宙へと輸送するためのロケットに興味を持ちました。ロケットはこれから宇宙への輸送インフラとしてスケールしていく可能性も高く、未来の成長にとてもワクワクしたんです」
そもそもなぜ、衛星を宇宙に運ぶ必要があるのでしょうか?
「衛星があることで、近くに基地局がない例えば富士山の頂上や海上でもインターネット通信ができるようになるんです。最近では、地上の通信インフラが破壊されたウクライナに、イーロン・マスクが『スターリンク』と呼ばれる人工衛星を使った通信サービスを提供したことでも話題になりました。スマホやインターネットを使うのが当たり前の時代になったからこそ、衛星への注目度も急激に高まっているんです。事実、2011年に世界全体で打ちあがった衛星はたった約30基程度でしたが、2021年は約1,700基以上も打ち上がっているんです。衛星のニーズが高まるなか、自然とそれを運ぶロケットのニーズも高まっているんです」
ロケットをはじめとした宇宙ビジネスへの投資が進む理由がすごくわかりました。もう1つ転職の軸として挙げていた「人事がいない」の理由も、詳しく聞いていいですか?
「ほかに人事の方がいないからこそ、制度の構築や評価方法の根本的な改善など、自分の担当範囲が広くなると思ったんです。人数が多くなるとどうしても業務は細分化されてしまうので…。人事のスキルを深める前提で、人事制度構築も評価の見直しも人材開発も幅広くやっていきたいと考えていました。その点、インターステラテクノロジズは、私が入社する段階で専任の人事はいない状態。つまり2つの転職の軸が満たせるのが、インターステラテクノロジズだったんです」
インターステラテクノロジズへの転職を機に、北海道へ移住した片桐さん。移住後の生活は以下のnoteでも紹介されています。
都内で働いていた人事が、北海道のロケット開発ベンチャー企業に転職してみて
「知っている会社」から「働きたい会社」へ。候補者のインサイトから採用戦略を立てる
インターステラテクノロジズの現在の人事課題についても教えてください。
「正直、課題はたくさんあるのですが、もっとも緊急度が高いのは人材採用です。なかでも、ロケット開発に携われるエンジニアの採用です。当社ではこれまで観測ロケット『MOMO』を開発しておりましたが、現在は超小型人工衛星打上げロケット『ZERO』の開発を行っています。開発を加速させるためにはまだまだエンジニアが不足している状態なので、それを解決するために動いています。当社の場合、ロケット開発の会社として認知はしてもらえているのですが、転職市場での存在感はまだ強くない状況なんです。なので、『知っている会社』から『働きたい会社』と思ってもらうためにはどんな施策が必要か、考えているところです」
『働きたい会社』と思ってもらうために、現在はどんな施策を打っているのですか?
「現在は、当社に応募してくれる人はどんな動機や経緯で応募に至ったのか、これまでの経歴や面接などを踏まえて応募者のインサイトを発見しようとしています。発見できた後は、採用の全体像を整理していくのが次のステップですね。そして、リファラルの推進やオペレーションの改善など、各論に取り組もうと考えています」
エンジニアの採用は、基本的に宇宙業界の経験者を採用するのでしょうか?
「いいえ。モノづくりの基本的な考え方は業界が変わっても変わらないことが多いので、ロケット業界の経験者にかかわらず採用を行っています。とくに、自動車業界などから転職してきた社員が多いですね。宇宙や航空業界の出身者は2割程度といったところです。ロケット開発や今後成長する産業であると確信して転職される方が多いです」
2021年7月3日、打上げに成功した観測ロケット「MOMO7号機」
チームの一体感を高める第一歩として「顔と名前を一致させる」
ほかには、どんな課題がありますか?
「大きなものを挙げると、人事制度ですね。とくに等級制度や評価制度を組織の現状に合わせてブラッシュアップしていく必要や、代表など一部の人に評価業務が依存している状況を変えなくてはいけません。前職でも同様の課題感だったので、この部分はこれまでの経験を活かして評価軸の設定やプロセスの明確化をしているところです。入社して1ヵ月後に実施した人事評価では、グループリーダー以上の方にも評価者として入ってもらうように設計変更しました。オペレーション面で言うと、評価シートがスプレッドシートで行われていたのですが、どうしても煩雑になってしまっていたんです…。そこで、カオナビに移行することにしました」
片桐さんは前職のLibryから、転職した現在もカオナビをお使いいただいてますが、現在はどんな用途で使用しているのですか?
「基本的には前職と同じ用途で、まずは社員全員がそれぞれの顔と名前を一致させることを目標に、社員情報を拡充しているところです。これから社員数が増えるに従って、『この人は何をしている人だろう』と思う機会も増えてくると思います。とくに弊社は、1つのロケットを社員一丸となって作るので、チームとして一体感を高めることはロケット開発にもプラスに働くと考えています。その第一歩として、まずは顔と名前が一致するようにしたいと考えました」
Libry時代を含め、二度のカオナビ導入を経験した片桐さん。noteで「カオナビを導入して良かったこと」も書いてくださりました。
1年で2回カオナビ導入をして良かったこと
カオナビを使ってみた社員さんからの反応はどうですか?
「顔写真を登録したときに、画面を見て社員たちも盛り上がっていたので、まずはカオナビを見る習慣がついたかと思います。そして今は、カオナビに情報を集約させることで、社員が見たい情報へと簡単にアクセスできるようにしました。また情報が一元管理できることで、管理部の業務工数も削減も実現しました」
そんな片桐さんが、人事をやっていてやりがいに感じる部分はどこですか?
「ロケット開発にエンジニアが欠かせないように、事業成長には人が欠かせません。そんな人という視点から、会社のお金の動きが見えたり、事業戦略などの上流の部分も考えられたりするところですね。そのなかで社員の方とも話しますし、経営陣とも議論します。社内のあらゆる立場の方の視点を借りながら、人事施策を推進していける部分は本当にやりがいを感じる部分です」
逆に大変なところはありますか?
「人事は領域が幅広い分、タスクも山ほどあります。その数多のタスクに優先順位をつけて、今やるべきものは何かを見極めていくのが難しいですね…。だからこそ、社内の状況を俯瞰して見たとき、今何をするべきかを決めることを心がけています。こういった優先順位付けは、総合的な力が試される新規事業の経験がすごく活きていると思います」
ありがとうございました。最後に、今後やりたいことがあれば教えてください。
「今は採用という入り口の部分がメインになっていますが、ゆくゆくは入社した人がきちんと活躍できる土壌も作りたいです。そのためには入社後の研修や育成制度を整えるのはもちろん、成長につながる評価にも力を入れたいと考えています。私自身も感じてきた部分ですが、評価は成長の機会が得られる良いタイミングだと思うので」
編集後記
最初のキャリアである営業から一転、トレーニングジムの新規事業立ち上げなど、これまでやったことのない分野に自ら足を踏み入れ、挑戦してきた片桐さん。そんな片桐さんだからこそ、宇宙業界×人事というレアなポジションを見つけ、転職と北海道移住という大胆な行動にも踏み切れたのでしょう。取材時は、まだインターステラテクノロジズに入社して5ヶ月とのことでしたが、宇宙ビジネスの可能性や、自社のロケットについて語る姿は、業界に足を踏み入れてまだ数ヶ月とは思えませんでした。そのぐらい仕事を自分ごと化する姿勢が、片桐さんの成長の原動力につながっているんだろうなと感じた取材でした。
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会社概要
社名 | インターステラテクノロジズ株式会社 |
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設立 | 2013年1月 |
事業内容 | ロケットの開発・製造・打上げサービス |
従業員数 | 100名 |
会社HP | https://www.istellartech.com/teaser/index.html |