人事は事業を伸ばすための手段。ワンキャリア・CHROが語る、事業成長を牽引する人事戦略と組織づくり

「どこまでいっても、人事は事業を伸ばすための手段だと考えています」

そう語るのは、株式会社ワンキャリア・CHROの長澤さんです。

元々、高校の先輩である宮下さん(ワンキャリアの創業社長)に誘われ、取締役COOとして入社した長澤さん。当初は社員が3~4人だったそうですが、そこから250名以上を超える組織に拡大し、創業から上場、そして現在に至るまで同社の人事・組織づくりに深く関わってきた人物です。

そんな長澤さんに話を聞きながら、営業・カスタマーサクセスの採用強化やマネージャー層の育成など、事業方針と連動する同社独自の人事戦略に迫ります。

※この記事は、『HRzine』との合同企画です。HRzineではどのような経験を経てCHROに辿り着いたのかを深堀りしていますので、あわせてご覧くださいませ。

https://hrzine.jp/article/detail/6695

Profile

長澤 有紘

株式会社ワンキャリア
取締役副社長 執行役員COO兼CHRO

京都大学大学院農学研究科卒業。2011年にIT系ベンチャー企業に入社。WEBマーケティング業務、セールス業務に従事した後、2014年に株式会社トライフに入社。2015年よりワンキャリアの取締役COOとして、マーケティング、開発、営業の各部門の事業責任者を歴任した後に、2019年に管理部門管掌取締役に就任。2020年に取締役副社長に就任、2023年より現職。

営業・カスタマーサクセスの採用強化、マネージャー育成で事業に貢献

貴社では「契約数の拡大」と「顧客単価の向上」という大きく2つの事業方針を掲げています。これに対し、人事戦略はどのように連動させていますか?

長澤さん

「まず、大枠で言うと昨年から一昨年は契約数の拡大を目標に、主に営業部門の人員を増やしてきました。弊社はこれまで、企業と個人をつなぐメディアとして、情報収集力やユーザー獲得力が非常に強かったんです。しかし、企業側の開拓が十分に進んでいなかったため、そこを強化すれば売上が伸びると考えました。そこで営業組織の強化に取り組んだのです」

 

出展:2025年12月期 第1四半期決算説明資料

営業部門の強化が、まず第一だったのですね。

長澤さん

「はい。そして、その次のステップとしてマネージャー層の育成を強化する必要が出てきました。メンバーは増えたもののマネージャーの数が足りない、あるいはジュニアメンバーが増えた一方でシニアメンバーの数が足りず、マネジメントが十分に機能していないといった問題があったためです。マネージャー層の育成は、拡大した組織を効率的に支えるための指揮命令系統の強化につながります。それが実現すれば、たとえば営業部門では『一人当たりの売上』が伸びる、つまりは顧客単価の向上という目標の達成に大きく直結します」

メンバーが増えるに従って、マネジメント機能が追いつかなくなったわけですね。

長澤さん

「まさにそうです。さらに、営業を強化して多くの企業を開拓したものの、今度は解約が増えてしまうという問題も出てきました。これを防止するためには、カスタマーサクセスの強化も不可欠です。お客様に継続して満足してもらうための組織強化に取り組む必要があります」

こうした営業・カスタマーサクセスの強化、マネージャー育成という課題に対し、具体的にどんな人事施策を行っていますか?

長澤さん

「営業とカスタマーサクセスは、引き続き採用を強化します。採用においては2018年頃に、従業員の半分が辞めてしまった経験を活かし、カルチャーフィットを最優先にしています。半分辞めてしまった原因の1つは、組織を大きくするために、カルチャーよりもスキルを重視して会社の方針に合わない人を採用していたこと、もう1つは入社後の育成や方向性のすり合わせを怠ってしまっていたことです。このときの経験から、採用基準のアップデートと入社後のオンボーディングに注力し、期待値をすり合わせることにも時間を費やしています。さらに、マネージャー育成の観点では研修や育成プログラムに力を入れています。前提として、これまでほとんどのマネージャーを社内から引き上げていました。外部からマネジメント層を採用することは、ほとんどなかったんです。とはいえ、マネージャーに昇進した際のオンボーディングが何もなかった状態。そこでこの1、2年はマネージャーのオンボーディングや研修にかなり力を入れています。先日もコーチングの外部研修を導入したりしましたね」

マネージャー層の育成を強化することで、組織全体を底上げするわけですね。

長澤さん

「その通りです。ただ、育成だけでは、マネージャーを登用するスピードが追いつかないという課題も出てきました。そのため、現在は外部からマネジメントができる人材を採用することも検討しています。これまでのフェーズでは、20代の若手層が中心でしたが、これからはもちろんカルチャーフィットが前提ですが、30代・40代でマネジメント経験のある人材も積極的に採用したいと考えています」

「どうやったら事業が伸びるのか」を最優先に、人事施策を考える

組織が大きくなるにつれて、カルチャーの維持や浸透も難しくなると思いますが、そのあたりはどのように考えていますか?

長澤さん

「さまざまなバックグラウンドを持つ人が入社してくるため、これまでの『当たり前』が薄まっていくのは避けられないと考えています。カルチャーが平準化していくのは、ある意味で自然なこと。ただ、私は組織のフェーズが変われば、カルチャーも変わっていいと思っています。もちろん、事業を衰退させる方向に動く変化は受け入れてはいけません。例えば、これまでは1日でできていたことが、組織が大きくなったことで3日、1週間かかるようになるなど、スピード感が落ちることは最も避けるべきです。そこだけは『NO』とはっきりと線引きし、トップダウンで『これは1日でやるものだ』と示していくことが重要だと考えています」

とはいえスピード感の維持は、組織が大きくなると難しくなりそうですが、どう対応していますか?

長澤さん

「組織が大きくなるとどうしてもチェック階層が増えていき、構造的に避けようがない部分もありますが、稟議ステップの定期的な棚卸しを行うようにしています。稟議ステップは、一度入れると『とりあえず見ておいて』という軽い気持ちで設定したものが、形骸化してどんどん長くなっていく傾向があります。そのため、半年に1回や年に1回など、定期的に『この承認者は本当に必要か?』を見直しています」

不要なプロセスを削るということですね。

長澤さん

「はい。プロセスを『増やす』のは簡単ですが、『削る』のは現場にとって勇気がいること。だからこそ、トップダウンで削るという意思決定を定期的に行わなければなりません。削る勇気がなければ、事業のスピードは確実に遅くなります」

ありがとうございました!最後に、今後、検討している人事施策はありますか?

長澤さん

「昨年から今年にかけて、報酬制度と人材配置を変えようと検討しているところです。報酬制度については、人件費のアロケーション(配分)を最適化するために、変動報酬比率の調整を検討しています。人材配置については組織が大きくなり、機動性を担保するためにも、トップダウンである程度『この部署に異動してほしい』と指示するかたちにしたいと考えています。とくに全社最適で見たときに、伸びている事業領域にきちんと人を配置することが、会社としての成長にもつながっていくと思いますので。どこまでいっても『事業が伸びるのか』に、どの選択肢が最も貢献するのかを最優先で考えます。それが一番の軸です。もちろん個人の意向も尊重しながら、なぜここに移ってほしいのか、それが個人のキャリアにどうつながるのか、これまでやってきたことがどう活かせるのかを丁寧に説明し、納得してもらうことが重要だと考えています」
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写真:北浦 汐見

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会社概要

社名 株式会社ワンキャリア
設立 2015年8月18日
事業内容 キャリアデータプラットフォーム事業(採用DX支援サービス、その他)
会社HP https://onecareer.co.jp/

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