無理に張り合わず、自分の居場所を探す。Thinkings CHROが考える「キャリアアップ戦略」|前編
Thinkings株式会社 |
佐藤 邦彦 さん
2024.01.10
採用管理システム「sonar ATS」を中心とした、HRテックサービスを提供するThinkings。組織づくりの方法を変え、より創造的に働ける社会実現を目指す同社で、CHRO(最高人事責任者)を務めるのが佐藤邦彦さんです。
佐藤さんは複数の事業会社での人事経験に加え、リクルートワークス研究所が発行する人事のための研究雑誌『Works』の元編集長という経歴の持ち主。そんな人事の第一線で活躍する佐藤さんですが、もともとはやりたいことが見つからないことに悩み、人事の道も消去法的に選んだといいます。
そこで前編では、やりたいことが見つからなかった就活時代の話から、いかにして人事の道に辿り着いたのか聞きました。
Profile
佐藤 邦彦
Thinkings株式会社
1999年東京理科大学理工学部卒業。同年、外資系コンサルティング企業に入社。業務改善・IT導入支援などのコンサルティングに従事したのち、2003年にITベンチャーに転職し、人事としてのキャリアをスタート。7年半の在籍中、採用、育成、制度運用、組織開発、労務などを幅広く担当し、後半はチームマネジメントを経験。その後、複数の事業会社での人事経験を経て、2020年4月よりリクルートワークス研究所に参画し、2022年8月まで『Works』編集長を務める。2022年10月にThinkings株式会社執行役員CHROに就任。
「やりたいことがない」から始まった最初のキャリア
現在はThinkingsのCHROですが、前職はリクルートワークス研究所で『Works』の編集長をされていたんですよね。転職しようと思ったきっかけを教えてください。
「また現場に戻りたいと思ったのが大きかったですね。もともと、私自身、複数の事業会社で人事として働いてきました。そのなかで、リクルートワークス研究所のWorks編集長というポジションに就いたのは、この特殊なポジションのオファーは誰にでもくる話ではないと感じたことが一番の理由です。まだまだ先のキャリアが長いなか、これまでの流れで事業会社の人事をやり続けるのではなく、HR向けメディアの編集長としていろいろな会社を取材したり研究したりする期間は、その後のキャリアにとって必ずプラスになるだろうと考えました。編集長として活動した2年半の間、数多くの企業に取材をしたり研究所のなかの研究プロジェクトに携わりながら、隔月発行のWorks誌を14号発行し、たくさんのインプットとアウトプットが実践できたと思います。その経験を携えて、また現場に戻りたいと考えたわけです。そのなかでThinkingsを選んだのは、もともと人事アドバイザーとして関わっており、経営陣とコミュニケーションを行う機会があったのが大きいですね。また、HRテックのツールを提供していることも決め手となりました。人事の経験を活かし、今後はビジネス企画やセールスにも関われる可能性があると考えたのです。というのも提供しているツールが人事向けなので、自分のこれまでの経験を直接、ビジネスにも活かせると思ったわけです」
改めて、Thinkingsではどのような役割を担っているのですか?
「現在の役割は大きく分けて2つです。まず、成長している組織の人事責任者という役割があります。当社は幸い順調に成長しているので、ベンチャーならではの課題も多いです。成長を止めることなく課題を潰していくための人事体制の構築と実践が求められます。もう1つは、人事の重要性をThinkingsとして社外に発信していくことです。これまでの人事経験に加え、元『Works』の編集長であることもうまく活かしながら発信していくことで、結果的にThinkingsや『採用管理システムsonar ATS』などの認知度向上につながると考えています」
現在は、CHROの役割を担ったりこれまでの人事経験を活かして発信を行ったりしている佐藤さんですが、キャリアのスタートはコンサルティング会社だったそうですね。コンサルティング会社を志望した理由を教えてください。
「いろいろな業界に関われるし、その後のキャリアにプラスに働くような力が身につくと思ったからです。とはいえ、本当のところやりたいことはありませんでした。ぼくは理工学部出身なのですが、学部を選んだのも、理系科目の方が得意だからという単純な理由です。大学を卒業する頃になっても、これといったやりたいことは見つかりませんでした。やりたいことがないからこそ、それを探す意味も込めて就活では幅広い業界を受けていました。ただ、探してみてもそもそも働いたことがないので『本当にやりたい』という熱い気持ちは持てず、『なんとなくやってみたい』と思う程度でした。そこで、本当にやりたいことがないなら、まずはいろいろな業界を見ることができるコンサルティング業界に行こうと考えたのです」
いろいろな業界を見るという点で言うと、佐藤さんはこれまで多くの事業会社を経験し、1社にこだわらない姿勢を感じます。もともと、そういう気質があったのですか?
「新卒で入社したコンサルティング会社のカルチャーが大きく影響していると思います。入社してみたら、長く勤めようと思っている人がまわりに誰もいなかったんですよ。当時は『次のキャリアを見つけて転職や独立する』という出口から逆算して考えている人がほとんどでした。そういったカルチャーが、社会人としてのDNAに刻まれたのだと思います」
優秀な人でもファジーな世界で苦戦。そこに活路を見いだす
コンサルティング会社から始まったキャリアですが、そのなかで人事にキャリアチェンジしたきっかけを教えてください。
「このままコンサルティング業界にいても、自分にとって幸せな未来が見えないと思ったのが大きかったです。当時は入社から4年半ほど経っており、そのままいけばマネージャーに昇格するタイミングでした。でも周囲の同期や先輩後輩がとても優秀で、自分はついていくのがやっと、ギリギリマネージャーになれるかどうかという状態。そんな状態でマネージャーになれたとしても、さらに責任は大きくなるし、この厳しい環境で自分の価値を発揮できる未来がイメージできないと思いました。まだギリギリ20代、辞めるなら『いまだ』と思い、転職を考えました。とはいえ、どこにいくかは明確に決まっていませんでした。私は入社以来、業務改善やシステム導入支援というロジックの世界で仕事をしていましたが、そこには能力的に優秀な人がたくさんいることがわかりました。そのような環境で自分の能力不足を痛感するとともに、わずかながら可能性を感じる場面も見えてきました。それは『人』を対象とするファジーな世界、つまりはあいまいで正解のない領域では苦戦している人も多いと感じたんです。だったら自分はダメ元でファジーな領域にチャレンジしてみようと思い、人と向き合う仕事として、人事のポジションに就ける転職先を探し始めました。その結果、ITベンチャーに未経験で人事として転職しました」
無理に張り合わない。すごい人に囲まれる環境だったからこそ見いだした戦略
人事として転職できたことで「やりたいことがなかった」状態から「やりたいことが見つかった」状態に変わりましたか?
「いえ。人事を選んだのも『いまの場所では戦えないのでそれ以外の生きる道はないか』と考えたうえでの候補の1つでした。なので、積極的なやりたいという気持ちよりもわずかな可能性に賭けたという感覚でしたね」
いまの場所で戦えないと思ったのは、なぜですか?
「コンサルティング会社にいた頃は、優秀な人たちに囲まれて刺激的でしたが、その一方でライバルとして戦っていくには圧倒的に力量不足という感覚がずっとあったんです。私は昔から、周囲を洞察して無理に張り合わず、自分の居場所を探すタイプで、ここでもその特性が発揮されたのだと思います。諦めるわけではないですが、やっぱり敵わない人はいますよね。私は中学でも高校でも大学でも、自分よりもすごい人の近くにいることが多かったんですよ。その究極が1社目のコンサルティング会社だったのかもしれません。こうした環境にいたから、自分の能力を客観視したり、優秀な人たちのなかでどういうポジションを築いていくのかを考えたりする力が鍛えられたと考えています」
すごく、達観されているように感じます。
「そうですかね…。でもたしかに、自分がどんなにがんばっても追いつけない世界があることを直感的に受け入れているところはあります。ただ、すべてを諦めているわけではなく、自分の強みや努力で輝ける場所が必ずあるはずだという根拠のない自信もありました。なので、挑戦する場所がここじゃないなと感じたところで身を引き、新たな場所で自分の役割を探そうと決めたんだと思います」
続く後編では、佐藤さんが人事になって感じたギャップや、やりたいことにとらわれないほうが良いと話す就活や会社選びの考え方について話を聞きました。
*本記事の掲載内容はすべて取材時(2023年11月20日)の情報に基づいています
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会社概要
社名 | Thinkings株式会社 |
---|---|
設立 | 2020年1月31日 |
事業内容 | HR Tech事業(sonar ATS、sonar store) |
従業員数 | 188名 ※2023年10月時点(正社員、パート、アルバイト含む) |
会社HP | https://thinkings.co.jp/ |
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