転職して自分の力不足を実感。自信がついてきた人事の仕事を一度は諦めた理由

創業75年以上の歴史を持つ学研グループに新たな風を吹かせるべく、EdTech(エドテック)領域で事業を展開するGakken LEAP。2021年12月に設立したばかりの同社で、唯一の人事専任担当として採用や制度設計・運用に取り組むのが、星野絵里子さんです。

星野さんは新卒から人事のキャリアを歩み始めたものの、転職で自分の力不足に気づき、一度は人事の道を離れます。なぜ、人事を離れようと思ったのか。前編では、新卒から人事になり、力不足を味わった経験について話を聞きました。

後編では人事に戻るきっかけや、現在推進している施策について紹介

Profile

星野 絵里子

株式会社Gakken LEAP

大手SIer、IT系コンサルティング企業の人事担当を経て、2013年に学研グループに転職。2回の産育休取得後、2022年よりGakken LEAPへ所属し、1人目の人事専任メンバーとしてエンジニア採用や制度設計・運用を担当する。

会社合併で前例のない業務を経験。自分のやりがいに気づく

まずは、星野さんが人事になったタイミングについて教えてください。

星野さん

「新卒で大手SIerに入社し、研修後、縁あって人事部に配属となりました。入社前の配属希望先アンケートで、第三希望に人事と書いたのを覚えています。もともと興味はあったのでしょうね。家が自営業で、はじめてスーツを着ている人とちゃんと話をしたのが新卒採用担当の方だったので、単純にかっこいいなと感じていたんだと思います。元々、当時はITバブルが始まり、『女性でも総合職でずっと働ける』という時代の空気感も生まれていました。就活でもそういった時代の変化を感じており、私も働き続けるために『手に職を』と考えて志望したのが、IT系の会社でした。一方でもともと人と接するのが好きでしたし、間近で見た採用担当の方の印象も受け、第三希望に『人事』と書いたのかもしれません」

人事の仕事をやるようになり、就職前にイメージしていた社会人像とギャップはありましたか?

星野さん

「仕事がどんなものかも具体的なイメージはあまりなかったので、人事の仕事に対して大きなギャップといったものはとくに感じませんでした。大きな会社で大きな人事部でしたので、とくに労務系など表に見えづらい役割について『会社を動かすにはこれだけの人が必要なんだ』という驚きがあったくらいでしたね。一方で、私が自分自身に対して持っていたイメージと、実態とのギャップという点では発見がありました。割と、学生時代から率先して手を挙げていろいろとやるタイプで、『これしよう』とみんなを引っ張るタイプだと思っていたんです。でも、働き始めると実際はそんなことはなくて、リーダーとして先陣を切っていくよりも、組織としての目標を達成するためにスケジュールを管理したりタスク整理して必要なものを揃えたり、チームの実行推進役にやりがいを感じる自分に気づきました」

自分のやりがいに気づいたきっかけはあるのですか?

星野さん

「所属していた会社が同業の別会社と合併するタイミングでした。合併のためのさまざまなプロジェクトが人事部でも立ち上がったのですが、そのなかで人事システムの統合を担当するチームに参加することになったんです。これまでの、ある程度決められた手順に沿って行う業務とはまったく違っていました。合併することは決まっており、合併の翌月には全員に給与を支払わないといけないのに、新たに導入する給与システムの要件定義を行う時間の余裕がない状況。不明点も課題も山積みだけれど、期日だけは決まっているからとにかく進めないといけない。そんなこれまでになかった状況に置かれ、はじめて自分がチームのなかで価値を発揮できていると強く感じられました。というのも前例がなく誰も正解を持っていないなか、統合する各社の業務を整理したり、システムの統合に向けたタスクを洗い出して優先順位を調整したりするのが、すごくおもしろかったんです。とても大変な仕事でしたが、それで、仕事への自信がつきました。そのため、システムの統合が終わったタイミングで、もっと正解がない領域で新しいチャレンジをしたいと思うようになり、転職を決めました」

会社の合併をきっかけに経験した業務が自信につながり、次のステップへと後押ししてくれたんですね。

星野さん

「そうです。また、合併する前から人事だけで30人近くいる会社でしたが、合併してからは人事が50名ほどになっていました。こうして会社規模が大きくなればなるほど、人事の人数は増えます。ただ、人数が増えるほど役割は細分化されていくので、すごく単純に言うと、これまでの人事の仕事全体が50分の1になるイメージなんです。もちろん専門性を突き詰めていくには良い環境かもしれませんが、私はもっと幅広く人事業務を経験したいと思いました。そこで、小さい組織で、幅広い業務を経験したいと思い、30歳になったタイミングでIT系のコンサルティング会社に転職しました。その会社は、人事でなおかつITの知識もわかる人を求めていたので、自分の経験ともマッチしていると思ったんです」

転職で気づいた、井の中の蛙だった自分。人事のキャリアをあきらめることを決意

2社目ではどのような業務に取り組まれましたか?

星野さん

「人事制度の改革を行うというフェーズで採用されたので、人事制度の見直しから携わりました。ただ、当時は働き方改革が叫ばれる前でしたし、IT業界はまだまだ忙しく、ピーク時期は毎日タクシー帰りみたいな環境。さらには会社のアイデンティティが強く、元の人事制度もオリジナリティがはっきりしており、すでに社員に浸透していたので、忙しいうえに見直しの難易度も高いという苦しい時期が続きました。結局、人事制度の大幅な改革はトーンダウンし、そのあとは他の業務にも携わらせていただいたものの、早々に退職を決めました。人事として、自分の力不足を痛感しましたね…

どうして、力不足を感じたのですか?

星野さん

「結局、井の中の蛙だったのだと、いまは思います。同時期に採用された人は、同世代でもとても優秀で、すでにマネジメント経験があるなど、経験の面でもマインドの面でも、私とはまったくレベルの違う人たちでした。私はというと1社目で研修や制度運用に携わっていたのですが、その業務も上司が目をかけてくれる環境で、一人で責任を追うようなことはあまりなかったんです。そのため、転職してはじめて『自分は温かく守られた環境でぬくぬくと育ててもらい、上司にサポートしてもらったり、仕事をつくってもらったりしていたからやってこれたんだな』と気づきました。まわりと比較することで、思っていたよりも『自分の能力はあまりないんだな』と感じてしまったんです」

そこで、2社目を辞めて次の会社への転職につながるのですね。

星野さん

「はい。なので、2社目を辞めて学研グループに入ったときは、人事じゃない職種として入社しています。一旦、人事としてキャリアを積むことを諦めたんです。学研グループを選んだきっかけはエージェントさんの紹介でした。出産や子育てなど、今後のライフプランを考えると、もう少しゆとりを持って働ける会社で働きたいことを話したら、幅広い職種を募集している学研グループの事業会社を紹介してくださいました。とくに教育領域は、『人の成長』に関われそうと思ったのも決め手です。学研グループに入社後は、学習教室・塾を運営する先生や子どもたちが使う、システムやアプリの企画から運用サポートを担当しました。人事としてこれまで培った人に説明するスキルや、説明用の資料作成スキル、もともと強みと思っていた推進役としての力などは十分に活かしながら働くことができたので、仕事自体は満足していたんです。ただ、育休から復帰したのをきっかけに、また人事に戻ることになりました

新卒から続けてきた人事の仕事。しかし、転職を期に自身の力不足に気づき、一旦は人事を離れることになります。そんな星野さんですが、学研グループに入社後、育休から復帰したことをきっかけに、再び人事の仕事に戻ることになりました。そこで後編では、人事の仕事に戻るきっかけや、現在推進している施策について話を聞きました。

*本記事の掲載内容はすべて取材時(2023年11月24日)の情報に基づいています。

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会社概要

社名 株式会社Gakken LEAP
設立 2021年12月1日
事業内容 Ed-Tech事業の開発、構築及びコンサルティング業務、学研グループ各社およびグループ外企業のIT事業・サービスに関する企画、設計、開発、導入支援及び運用並びにそれらに関するコンサルティング、ベンチャー企業・ベンチャーキャピタルに対する投資と養成
会社HP https://gakken-leap.co.jp/

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