営業から人事へ転身して30年。「大企業での人事経験」と「突然の異動」で考えた、50歳からの挑戦

多彩なジャンルのイベントや体験を創造するプロフェッショナル集団として、コンサルティング・プロデュースを行うTSP太陽株式会社。同社で総務人事部の部長を務めるのが、川端利博さんです。3社での人事経験がある、川端さん。現在は人事の集大成としてバックオフィスの立場から、安心して働き続けたい会社、外部から選ばれる会社、組織と社員の成長を追求する会社を目指し、日々の業務に取り組んでいます。今回はそんな川端さんの長年にわたる人事経験に、迫ります。

川端さんが向き合う同社の人事課題や、長年人事の仕事を続けてきたからこそ感じる今と昔の変化について聞きました

Profile

川端 利博

TSP太陽株式会社
総務人事部 部長

1992年に、金融系の会社に入社。2年目から人事採用に異動。その後、新規事業の立ち上げメンバーを経験後、人事の仕事をもう一度したいと思い、大手事務用品メーカーの事業会社に転職。マネージャーにも任命され、人事制度の企画から運用、採用、社員教育、労働安全衛生や社内広報まで幅広く経験。ホールディングスへの逆出向や転籍を経て、もう一度人事全体を見ながらイチから仕組みをつくる仕事をしたいと思い、TSP太陽に転職。現在は、総務人事部の部長として部門全体のマネジメントを行う。

これからの会社を担う就活生との会話が、人事キャリアの原点に

これまでのご経歴や、人事になったタイミングについて教えてください。

川端さん

「私は1992年に大学を卒業し、バブル経済の真っただなかで就職しました。当時は就職活動も売り手市場でしたし、正直、大学生の頃はあまり真剣に将来を考えておらず、授業もあまり出ないでサークル活動に夢中という感じでしたね…。しかし、就職は避けて通れない道でしたので、金融系の会社に入社しました。最初は営業を担当していたのですが、2年目から人事・採用に異動することになります

人事への異動はご自身の希望ではなかったのでしょうか?

川端さん

「最初はまったく希望していませんでした。営業であまり成績が振るわなかったこともあり、この仕事は合わないのではと悩んでいたところ『人事に異動してみないか』と言われたのがきっかけです。異動してからは採用と教育をメインに担当しました」

人事の仕事をすることに戸惑いはなかったですか?

川端さん

「正直、あんまり考える余裕はなかったですね。常に追われている感じでした。当時はまだインターネットのない時代でしたので、新卒採用もリクルートブックなどの就職ガイドといった媒体誌と郵送DMを中心に母集団形成を行っていました。まずはダイレクトメール(DM)を内容から企画制作して郵送し、応募者から返信を受け取り、とにかく架電する。今のように手軽に送れるメールと異なり、制作代や郵送料金がかかるので、1回で10万通くらい送ると費用としては1000万以上の金額がかかるんです。万が一、反応がなかったらどうしようというヒヤヒヤ感がありましたけど、反応があった時の喜びもあり、楽しくやりがいを感じていました」

人事に異動する前後で変化はありましたか?

川端さん

「最初は右も左も分からず、人を募集することも当然初めてでしたが、仕事をするなかでおもしろみを感じたのは、やはり実際に応募する学生さんと相対していろいろな話をすることでした。就活生と話をしていると自分自身が刺激を受けますし、改めて多様な価値観があることに驚きました。採用の仕事を続けていくと、総合力が試されます。例えば就活市場や広報活動などを見据えて母集団を形成するためのマーケティング力、応募してくださった方たちとの対話力、調整力など、総合力が試される。仕事のおもしろさも感じました。入社をしていただいた方に、この先、売り上げを作っていってもらうことを考えると、間接的ですが会社への貢献も感じることができました」

スペシャリストよりもジェネラリスト。「大企業での人事経験」と「突然の異動」が新たな挑戦のきっかけに

人事として今後のキャリアを考え始めたのはいつでしたか?

川端さん

「まず、前提のお話として私には人事としての経験が3社あります。1社目では基本的に採用に特化した仕事でしたので、人事全般の仕事はできませんでした。合計で14年ほど在籍していたなかで、最後の数年は新規事業の立ち上げのメンバーも経験したんです。そこで営業や営業企画、顧客管理をやっていたのですが、正直人事の仕事が性に合っていたんでしょうね…。会社の業績もかんばしくなく、この先続かないのではという疑念もあり、やはり人事の仕事をしたいと思い、転職を決意したんです。そして2社目の会社では、人事・総務などの管理系の仕事の方に就くことになりました。私が入社したのは、オフィス空間の新設・移転・構築などを手掛ける老舗の大手事務用品メーカーの事業会社でした。その会社が立ち上がってまだ1年経つか経たないかぐらいのタイミングだったので、人事制度は親会社のコピー。だからこそ、試行錯誤しながらその会社に沿った制度をゼロから作り上げていく経験ができました。マネージャーにも任命され、人事制度の企画から運用、採用、社員教育、それから労働安全衛生や社内広報まで幅広くやりましたね」

その後、転職されたのですか?

川端さん

「実は10年ほどしてホールディングスの方に逆出向し、その後、転籍しているんですよ。自分で希望を出しました。親会社は、人事だけで50人ほどいました。そうなると業務が細分化されており、ミーティングに参加したときに感じたのは、あまり子会社の目線に立っていないということでした。それは事業会社に所属しているときに感じており、それも逆出向を希望した理由で、なんとか風穴を開けたいなと(笑)。とはいえ、私も細分化されたなかの1つの仕事を任されることになり、新規事業の立ち上げプロジェクト、グループ全体の安全衛生と、健康経営の推進を担当しました。未知の領域でしたし、とくに全国の工場や物流拠点などに出向き現場の従業員と交流し、安全衛生に係わるイベントを開催するなど、やりがいもあっておもしろかったんです。しかし、人事全般を見る機会は減っていき、もっと幅広く人事の仕事をしたいと思うようになりました。そのときの経験から、私は人事領域のなかである部分に特化したスペシャリストよりも、人事のジェネラリストが向いてるんだろうなと感じましたね。でも、その当時もう50歳を超えており、このまま定年までいるイメージもありました。残る会社人生で、とにかくグループの皆さんの安全や健康に特化する仕事ができるならそれはそれでやりがいのある仕事だと感じました。ただ、その矢先に転勤をともなう異動を命じられたんです

それが、次のキャリアを考えるきっかけになったのですね。

川端さん

「はい。年齢も年齢ですし、生活の基盤も整っているなかでしたから、いろいろと考えた結果、自分の仕事人生の集大成として、もう一度人事全体を見ながらイチから仕組みをつくる仕事をしたいと思いました。もし思いが果たせる会社があればと思って転職活動をし、いまに至ります」

50歳からの新たな挑戦として、転職を決意した川端さん。続く後編では、TSP太陽に入社し、川端さんが向き合う人事課題や過去と現在における人事の変化について話を聞きました。

*本記事の掲載内容はすべて取材時(2024年7月3日)の情報に基づいています。

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会社概要

社名 TSP太陽株式会社
設立 1955年2月
事業内容 各種イベントの企画制作、会場の設計施工、運営管理、関連設備のレンタル他
従業員数 283名(2024年6月末時点)
会社HP https://www.tsp-taiyo.co.jp/

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