体系的に学べるのが資格のメリット。社内で戦略人事の実現を目指す私の「受験動機」と「キャリア観」
エスペック株式会社 |
組織・制度改革プロジェクト
南 勇太さん
2024.10.02
「正解のないタレントマネジメントについて実績を証明する資格があれば嬉しい」というユーザーさまの声が後押しになり、スタートした資格制度「タレントマネジメントプロフェッショナル」。
正解のないタレントマネジメントに携わる人事のキャリアにも、正解はありません。そこで資格を取得した方に、受験の動機や感想はもちろん、これまでの人事経験や今後の目指す姿を聞くことでキャリアのヒントをお届けできればと思います!
今回お話を聞いたのは、大阪市に本社を持つ環境試験器の世界トップメーカー「エスペック株式会社」で、人事を務める南さん。組織・制度改革プロジェクトの一員として、社内で戦略人事を進めています。そんな南さんの受験動機を入り口に、ご自身が考える人事の役割やキャリア観について話を聞きました。
※資格制度「タレントマネジメントプロフェッショナル」の合格者インタビューと合わせて、人事としてのキャリア観もお聞きしています。
Profile
南 勇太
エスペック株式会社
組織・制度改革プロジェクト
新卒で入社した会社で営業職を経て、2社目の会社から人事のキャリアがスタート。給与計算や社会保険関連など労務領域の仕事をメインに行う。その後、3社目で、制度企画や新卒採用、中途採用、教育と幅広い仕事を経験。もっと人事の価値を発揮できる会社に転職したいと思い、現在のエスペックに転職し、組織・制度改革プロジェクトで主に組織開発、人材開発を担当する。
ダイジェスト
【受験の動機】
・資格取得は、体系的に新しいことを学ぶ良い機会
・戦略人事を推進していくうえで、タレントマネジメントの知見をより深めたいと思った
【受験した感想】
・解き応えがあり、自分に足りない知識を振り返る良い機会になった
・資格受験に限らず「カオナビ」を使いこなしていくことが戦略人事の実現につながると考えている
【今後のキャリア】
・人事の側面から経営戦略の実現に貢献したい
・インプットと実践をひたすら繰り返し、自分のスキルを高めていく
・経営と現場、双方向の伝達を強化して会社の方向性と従業員のベクトルを合わせたい
資格取得は、体系的に新しいことを学ぶきっかけになる
まずは、受験の動機を教えてください。
「もともと、体系的に新しいことを学ぶのが好きなんです。これまでも『資格を取りたい』というよりも『体系的な知識をインプットするきっかけ』として、数多くの資格試験を受けてきました。例えば、社会保険労務士や中小企業診断士、年金アドバイザーなどです。そのなかで、今後社内で戦略人事を推進していくにあたり、タレントマネジメントの知見をより深めていきたいと考えていたため、今回、受験しました」
受験した感想を教えてください。
「いざ受けてみると、とくに『カオナビ』というシステムの活用を問う問題はなかなか難しく、解き応えもあったし、自分に足りない知識を振り返る良い機会となりました。さらに言うと、今後はタレントマネジメントをはじめとした戦略人事を、もっと体系的に学べるようになると嬉しいです。とはいえ資格の受験に限らず、カオナビは機能のアップデートも早いので、そうした機能拡充に付いていきながら、人事施策の幅を広げていくことで自然と、タレントマネジメントの知識が深まると考えています。とくにカオナビの機能は世のトレンドや今必要とされていることを押さえて開発されていると思います。だからこそ、カオナビを使いこなしていくことが、タレントマネジメントや人的資本経営の考え方に沿った人事施策の実行など戦略人事の実現につながると考えています」
ありがとうございます。ここからは、南さんのキャリアについてもお聞きしたいです。まず、ご経歴を教えてください。
「元々、新卒で入社した会社で営業職をしていました。人事になったきっかけは、2社目の会社。転職活動をし、2社目の会社で内定をもらったときは営業職として働く予定でした。しかし、入社前に『人事総務で欠員が出ることになったので人事総務はどうか』と打診されたんです。親が人事をしていたことや前職の商談相手のほとんどが人事の方だったこともあり、元々興味があったことから、その打診を受けて人事のキャリアがスタートしました。とはいえ、いわゆる採用や教育業務というよりも、給与計算や社会保険関連など労務領域の仕事がほとんどでした。採用の権限もすべて現場にあったため、もっと人事として専門的かつ幅広く仕事をしたいと思い、前職となる3社目の会社に転職したんです。そこで、制度企画や新卒採用、中途採用、教育と幅広い仕事に挑戦させてもらいました。ただ、コロナ禍の影響をもろに受ける業種で、会社の業績がだんだんと悪化していきました。そのなかで、採用や育成コストが削減されるようになり、人の面から会社の成長や挑戦に対して貢献できなくなってきたのです。そのため、もっと人事の価値を発揮できる会社に転職したいと思い、現在のエスペックに至ります。当社は環境試験器で、国内シェア60%以上、世界でも40%以上のシェアを誇る企業です。ただ、逆に言うとまだまだシェアを取りに行く余白がある状況。今後はより一層、世界での存在感を高めていきたいフェーズです。『人事としてグローバルな事業に貢献したい』という自分の欲求と一致し、入社を決めました」
入社後、どんな仕事に取り組んでいますか?
「簡単に言うと、会社が目指す姿と現状とのギャップを、人材開発や組織開発、風土改革を通じて埋めていく仕事です。当社の主力商品は環境試験器ですが、もともとは、研究や理科の実験で使われるような理化学機器を製造していました。環境試験の可能性に気付いた創業者が、環境試験器の開発、製造へ方針を転換し、今に至ります。こうした変革があったからこそ今があるのですが、それから40年以上経ち業績も堅調になってくると、どうしても安定志向の従業員の方が増えてきました。創業者が、もともと大切にし、いまの会社の重要な考え方であるプログレッシブ(進取的)との乖離が生まれている状態でもあるんです。また、2025年までに目指すべき姿として『クリエイティビティとバイタリティに溢れる成長企業』を掲げていますが、社内ではどちらかというと保守的な空気もあり、まだまだ、この目標とのギャップを感じています。これらのギャップを埋めるために、評価制度の改定や管理職のマネジメントスタイルを変革する施策などさまざまなことを実行しています」
人事として悩んだ過去。「まずは会社側を見る」という自分なりの答えに辿り着く
これまで、人事をしてきたなかで苦労はありましたか?
「人事になってしばらくした頃、誰のため何のために仕事をしているのかを見失ってしまったことがありました。というのも、当時の私は従業員の方がいかに満足して働けるかを追求するのが人事だと思っていたんです。だからこそ、従業員の方の声を聞くことが大事だと捉えていました。しかし、従業員の方々は、当たり前ですが一人ひとり別の観点の意見を持っています。人事が彼らの話を聞くと、多くの従業員は『解決してくれるんだ』と思うかもしれませんが、実際には一人だけでの意見を聞くとほかの従業員に不利益があることもありますし、何より会社の方向性と異なることも多く、簡単には解決できないことも多いんです。そのうち、人事は何のためにあるのか、わからなくなってしまいました。そうして悩んでいましたが、次第に自分のなかで答えがまとまってきて、ヒト・モノ・カネのヒトの部分で会社に貢献するのが人事であり、まずは会社側が何を考えているのかを見る必要があると気づいたんです。会社をより良くするために従業員のほうを向くのであって、それが逆になってはいけないのだと。これに気づけたからこそ、いまの自分がありますし、イチ従業員の視点から会社視点へと視座が上がったように感じます。会社が戦略を実現するための人事であることを意識して仕事をするようになりました」
そうした自分なりの最適解を見つけ出せたきっかけは、なんだったのですか?
「ただひたすら、自問自答しながら考えることです。私自身、誰かに話を聞いたり、本を読んだりして何かが劇的に変わった経験はほとんどないんです。もちろん本もたくさん読みますし、セミナーを受けることもありますが、そうして吸収した多くの知識を自分のなかで熟成させて考え抜くことで、悩みや迷いを解消してきました。誰かが言った言葉より、自分の納得感をとにかく大事にするタイプなのかもしれません。自分の納得感を大事にするため、結論に辿り着くまでに時間がかかることもあり…長所でも短所でもあると考えているんですが、やはり『答えは自分で出すもの』という意識が強いんだと思います」
そんな南さんにとって、人事の仕事はどういうものだと捉えていますか?
「成果が見えにくく、終わりがなく、100点のない仕事だと思います。こうやって話すとものすごく大変そうに感じますが、試行錯誤しながら自分なりの答えを出したいと思うぼくにとってはおそらく向いているんでしょうね(笑)。私は制度の改定や導入を行っていますが、もし制度導入をしたとしても、それはスタートでしかありません。何かの目的達成のために制度を作るので、その目的を達成できてやっと成功です。非常に時間軸が長い仕事でもあるからこそ、試行錯誤の余地がある仕事だと思います」
経営戦略の実現に貢献するため、インプットと実践を繰り返して自分のスキルを高めていく
南さんがロールモデルとしている人事の方がいれば教えてください。
「ロールモデルとは少し違いますが、社会人として影響を受けたのは父親です。父親は人事をしていたのですが、就活の時に内定をもらった会社について相談したら『そこはあかん、俺の知っている会社で厳しい会社があるからそこを受けろ』と言われ、そこに入社しました。入社後は勝手の知らぬ東京に配属され、知り合いもいないなか、父親の会社の東京支社のサッカーチームに入れてもらいました。そこで、従業員の方から父親がどう見られているかを知ったことが、『人事っていい仕事だな』と感じるきっかけです。今思い返してみると、就職先もそうですし、人事という仕事の印象も含め、父親の影響をかなり受けていると思います。また、他社の取り組みを紹介するセミナーなどを受ける事が多いのですが、そこで登場するいわゆるCHROと呼ばれる方たちは、本気で経営戦略と連動した人事戦略に取り組まれており、自分も少しでもそこに近づきたいと考えています」
これからのご自身のキャリアにおいて、何が必要だと考えていますか?
「まず、前提として人事の側面から経営戦略の実現に貢献できるかが、私のミッションです。そのためには、経営の基本的な知識はもちろん、人的資本に関する知識、組織心理学、産業心理学など多岐にわたる知見が必要です。さらに時代の変化も激しく、得た知見がすぐに陳腐なものになってしまうかもしれない。だからこそ、インプットと実践をひたすら繰り返し、自分のスキルをもっと高めなくてはいけません。どうすればスキルを高め、視野を広げることができるのかを考え、行動することが今の自分にできることです。また、まだまだ突破力が足りていないと感じます。突破力とは、人事施策を遂行していく力です。改革や変化には抵抗がつきものです。それに折れることなく、自分のミッションを信じて立ち向かっていく力や、ネガティブな声があっても説明を尽くして突破していく力が必要だと感じています」
最後に、これから南さんが人事として取り組みたいことを教えてください。
「会社の規模が大きくなってくると、どうしても経営と現場、双方向のコミュニケーションの分断が生まれるものですが、そのパイプ役としての機能も人事の重要な役割だと考えています。メンバーから管理者に現状や思っていることを伝え、管理者はメンバーがどう思っているかや現場の状況を経営に伝える。そして、経営からは、直接、または管理者を通じて会社の方向性を伝える。こうした双方向の意思疎通が強化されれば、自ずと会社の方向性と従業員のベクトルが合い、目指すべき姿に近づくと考えています。この伝達が円滑に行われる環境づくりとして組織開発や、会社の方針を実現する従業員の育成、社員の働きがいを高めることなどにより注力していきたいです」
人事の側面から経営戦略の実現に貢献するため、インプットと実践を繰り返して人事のスキルをもっと高めたいと話す南さん。そんなインプットの手段として、まだ受験していない方もぜひ、「タレントマネジメントプロフェッショナル」を活用していただけると嬉しいです。
気になる企業の人事と気軽に情報交換できます!
会社概要
社名 | エスペック株式会社 |
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設立 | 1954年(昭和29年)1月13日 |
事業内容 | 環境因子が製品に及ぼす影響を分析・評価する環境試験器などを提供。環境試験器で培った技術を応用し、計測システムや半導体関連装置などの分野にも事業を展開 |
従業員数 | 連結:1,775名 |
会社HP | https://www.espec.co.jp/ |