人事に復帰して2度目の制度刷新へ。「人材不足」や「多様化する従業員ニーズ」に対応するための改革
株式会社ロフト |
人事部 部長
駒場信剛 さん
2025.01.17
2008年に大幅な人事制度改革を成し遂げた後、一度は人事を離れた駒場さん。13年のときを経てふたたび人事部に戻り、多様化する従業員のニーズに応えるべく、2度目の人事制度改革に取り組んでいます。後編では、なぜ2度目の人事制度改革に取り組むのか、現在の課題と、今後の取り組みを聞きました。
【前編では、店舗運営から人事へと転身したこれまでのキャリアと、未経験から取り組んだ人事制度改革について話を聞きました】
Profile

駒場信剛
株式会社ロフト
人事部 部長
1989年に、㈱西武北海道(当時)入社。1997年3月にロフトへ転籍。宇都宮ロフト店長、コンパクトロフト事業部、渋谷ロフト販売促進担当などを経て2006年より人事へ。「全員がロフト社員」という考えのもと、「社員区分」撤廃の制度改革を実施。その後、店舗運営管理に戻るが、2022年、13年ぶりに人事部へ異動。人材不足や多様化する従業員ニーズに対応するため2度目の制度改革への取り組みを行っている。
現場から人事、ふたたび現場を経て13年ぶりに人事復帰。2度目の人事制度改革に挑戦中
社員区分を撤廃する人事制度改革に取り組んで以降、どんな人事のキャリアを歩んできたのですか?

「人事制度改革の期間も含め、人事を3年経験した後、実はふたたび店舗運営に戻るんです。このまま自分は店舗運営の道を歩んでいくのだろうと思っていたところ、2022年、13年ぶりに人事部への異動が決まりました。なので、人事経験だけを見ると実はそんなに長くないんですよね。今回も、自分が人事を任されることに対して少し戸惑いはありましたね…。しかし、現在の私は50代後半。経歴や年齢を考えると、以前のように『これから人事として成長していけばよい』と悠長に構えるわけにはいきません。残りのキャリアで、全社に、そして全従業員に貢献するという意識で臨まなければならないと感じます」
人事に戻ってきて、現在はどんな取り組みを進めているのですか?

「実は、現在もまた人事制度の見直しを進めています。今回のポイントは、多様化している従業員のニーズに対応しながら、人を活かす新たな評価制度や育成の仕組みを整えることです。まさに、タレントマネジメントですよね。近年、人的資本の重要性が叫ばれ、コロナ禍を経て世の中の働き方も大きく変わりました。その中で、特に若い世代の方々にはさまざまな価値観の変化も見られます。従来の制度が今の時代に沿っているかを改めて見つめ直すとともに、新しい制度を構築する必要があると感じます。まだまだ構想段階ではありますが、等級制度にて本人の意欲やスキルが認められれば飛び級できる仕組みなども取り入れる予定です」
制度の見直しを検討する背景には、自社ならではの課題もあったのですか?

「というよりも、どの企業でも似た悩みを抱えていると思いますが、やはり一番の課題として捉えているのは人材不足です。当社は離職率こそ高くないものの、新規出店のスピードに対して人材の確保が十分とは言えない状況が続いています。その上、各店舗のリーダー育成には一定の時間もかかります。ロフトでは、お客さまにリアル店舗ならではのワクワクする買い物の体験を提供したいと考え、VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)に力を入れていますが、こういったスキルや知見はすぐに身につくものではありません。だからこそ、当社で能力を発揮していただける人材の確保や既存社員の育成を、さらに推進していきたいと考えています」
制度改革を進めていくにあたって、工夫していることはありますか?

「2008年に実施した社員区分の撤廃と同じく、やはり大切なのは現場の声を聞くことだと考えています。例えば、有志メンバーによる『エンゲージメント向上委員会』を発足させ、従業員の声に耳を傾ける機会を多く設けています。具体的には、役員とミドルマネジメント層が直接対話する座談会や、異なる店舗で働く従業員が横のつながりを作るための他店交流会です。こうした場では、業務上の悩みやノウハウだけでなく、働き方に関する意見やアイデアも活発に共有されています。その声を人事も聞き、制度の改訂に反映したいと考えています。最近では従業員の声を反映し、配属先を決定する前に希望をヒアリングしたり、ある程度の範囲を決めて転勤できる制度を準備したりと、制度や運用を少し見直しました。もちろん、全員の希望を100%考慮することは難しいのですが、従業員と会社の意向を擦り合わせながら、柔軟な働き方を実現できる制度を整えていくつもりです」
点在する情報の一元管理・見える化でタレントマネジメントをさらに推進
今後、取り組みたいことを教えてください。

「カオナビを導入した理由の1つでもありますが、今後はさらにタレントマネジメントを推進していきたいです。当社は拠点が多いこともあり、従業員に関するさまざまな人事情報が点在してしまっているのが現状です。従業員数も多いため、1人ひとりの情報を人事が正確に把握しておくのも現実的ではありません。そこで、どの部門にどのような人材がいるのかといった情報を一元管理・見える化し、人事部だけでなく経営陣も直接アクセスできる環境を整備していきたいと考えています」
人事情報の一元管理化によって、どのような効果が期待できそうでしょうか?

「例えば年に一度実施している『自己申告制度』では、上司との面談を通じて従業員が自身のキャリア目標について改めて確認し、今後のキャリアプランや具体的な希望を伝える機会を設けています。ただ、これまでは面談で話し合われた内容が現場だけに留まってしまい、人事部にまで共有されていなかったんです。しかし今後はカオナビに蓄積されることで、会社として本人の希望を反映したキャリアパスの提示も可能になります。また、研修受講履歴や社内公募への応募状況なども蓄積できるので、1人ひとりの志向をより把握しやすくなるのではないかとも期待しています。当社では、カオナビ上でeラーニングの受講ができる『ラーニングライブラリ』の機能も活用しているのですが、予想以上に多くの従業員が受講しており、自己研鑽への意欲の高さを実感してるところです。こうした従業員の姿勢を受講履歴を通じて知ることができるのも、システム導入の大きなメリットですよね」
最後に、今後の目標も教えてください。

「最も重要なのは、従業員が長く働き続けたいと思える、そして従業員に選ばれる会社づくりです。現在取り組んでいる人事制度の見直しも、その実現のために大きく関わるミッションだと捉えています。さらに、従業員1人ひとりが主体的にキャリアを考え、歩めるような制度にしていきたいという思いも強くあります。単に上司からの指示を待って行動するのではなく、『自分は将来こうなりたい』『この仕事にチャレンジしてみたい』と、自らビジョンを描き、その実現に向けてアクションを起こせるような環境を整備していきたいですね。簡単に答えが出るものではありませんが、まずは基盤となる仕組みから進めていきます」
編集後記
2度の人事制度改革に取り組むという、珍しい経験をする駒場さん。現場での経験が豊富であり、従業員の声をわかっているという理由から人事へ異動しました。さらに、本人がおっしゃるように長年人事を経験してきたわけではないものの、2度の改革を任されるのは駒場さんならやってくれるという信頼があるからでしょう。また、店舗運営の経験が長いからこそ、店舗で働いている従業員の方目線で話すのが印象的でした。人事経験が長くなくとも、これまでの店舗運営経験を活かし、課題を解像度高く理解していることが、2度の人事制度改革を推進するエネルギーになっているのでしょう。
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会社概要
社名 | 株式会社ロフト |
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設立 | 1996年8月8日 |
事業内容 | 雑貨専門小売事業 |
従業員数 | 5,321名(2024年2月末時点) |
会社HP | https://www.loft.co.jp/ |