ベンチャーから上場企業まで。人事キャリアを積み重ねた先に見えてきた「ジェネラリスト」の道
株式会社J Institute |
総務人事部 部長
安西龍志さん
2025.02.07
世界に通用する英語力を養成する、小学生〜高校生対象の英語塾「J PREP」を運営する株式会社J Institute。2012年4⽉の創業以来、着実に校舎の展開と組織規模を拡大してきた同社の総務人事部で部長を務めるのが、安西龍志さんです。
輸入建築資材の販売会社での営業職を経て人事の世界に飛び込み、ベンチャー企業や上場企業でキャリアを積み重ねてきた安西さん。前編では、「人事という仕事の奥深さに触れ、どんどん興味が広がっていった」という安西さんが、どのように人事のキャリアを積み重ねていったのか、聞きました。
【後編では、現在の会社で向き合う人事課題や取り組みを聞きました】
Profile

安西龍志
株式会社J Institute
総務人事部 部長
輸入建築資材の販売会社での営業職を経て、未経験から人事へ転身。労務業務からベンチャー企業での人事、そして上場企業での人事と幅広く経験。その後、フリーランスの人事を経て株式会社J Instituteに入社。人事部長として人事戦略を掲げながら、タレントマネジメントを推進する。
壁にぶつかった営業時代。一念発起して人事へ転身し、興味が広がる
現在、人事部長ですが、最初のキャリアはどんなお仕事でしたか?

「新卒で入社した輸入建築資材の販売会社で2年間、営業職として働いていました。営業は、売り上げを生み出すためにフロントに立ってお客様とのコミュニケーションを図る、ビジネスの核となるポジションです。学生時代に漠然と抱いていた『事業の根幹は営業にある』というイメージから、営業職を志望しました。中学時代からずっとバスケットボール部に所属していた私は、チームプレーや仲間とのコミュニケーションには一定の自信を持っており、これらの強みを仕事でも活かせると思ったんです。しかし、実際にその世界に足を踏み入れてみると、まったく想像とは異なっていて…。早々に壁にぶつかってしまったんです」
壁とは…?

「部活動は県大会優勝や全国大会出場など、目標がシンプルで明確ですよね。その目標に向かってメンバー同士でコミュニケーションを取ったり、ハードな練習をしたりするわけです。一方でビジネスの場ではそれぞれが置かれている状況がより複雑で不明瞭、課題や目標をどう設定したら良いのか、という部分から悩みます。求められるコミュニケーションもまったく異なっており、人見知りという性格も相まって、新規開拓で初対面のお客様といきなり話すなど、仕事とは割り切ることもできず、当時はハードルが高かったです。加えて、私は会社にとって久しぶりの新卒社員だったこともあり、同期が誰もいない状況にもなじめずにいました。状況を打開したいものの思うようにいかず、モヤモヤした期間が続きましたね」
モヤモヤを、どうやって打開したのですか?

「相談をした知人から『今後のキャリアに悩んでいるんだったら、私の職場でがんばってみないか?』と声をかけてもらい、転職しました。紹介されたのは、人事のポジションです。もちろん未経験の職種で、どのような仕事なのかあまり理解していませんでしたが、現状を変えるには環境を変えるしかないと思い、一念発起で決断しました。偶然に近いかたちで人事の世界に飛び込み、このキャリアを積み重ねて今では18年ほどになります」
人事として、どのようにキャリアを積み重ねていったのか教えてください。

「最初に担当したのは労務管理系の業務で、給与計算や社会保険の手続きなどでした。営業から一転して事務作業が中心になりましたが、数字の照合など細かい作業が意外と性に合っていると気づきました。思えば、学生時代には数学が得意かつ好きだったので、こうした業務は自分の適性と合致していたんでしょうね。また、その会社で、限定的ではありますが採用業務にも携わる機会を得ました。求人媒体への出稿などが、当時の担当業務でした」
少しずつ、担当領域が広がっていったんですね。

「実務を通じて『人事にはこんな業務もあるのか』と知っていくうちに、人事という仕事の奥深さを実感し、興味が広がっていきました。次第に、もっとこの領域を深めていきたいという思いが芽生えたんです。そこで、人事として全方位的に携われるポジションに挑戦しようと、再び転職を決意しました。『人事のことなら、安西に聞けば答えが返ってくる』と頼ってもらえる存在を目指して、次に選んだのが、今までよりさらに規模の小さなベンチャー企業です。自分が何でもやらざるを得ない環境に飛び込み、自分の幅を広げたいと考えました」
ベンチャーから上場企業まで、人事の“ジェネラリスト”として道を切り拓く
転職先のベンチャー企業では、どのような取り組みをされましたか?

「入社後すぐに取り組んだのが、勤怠や人材情報を一元管理するシステムの導入です。当時の社内は、人事・労務業務においてまだアナログ作業が多く残っていました。勤怠の打刻システムはあるものの、Excelへのエクスポートができない仕様で、人事部がすべての勤怠データを印刷して目視でチェックを行う、といった状況だったんです。従業員情報も紙で管理していたため、蓄積されず、会社として管理に限界を感じていました。そこで、私が旗振り役となって人事部門のデジタル化を進めることになりました」
具体的に、どのように進められたのですか?

「私はプロジェクトマネージャーのような立ち位置で、システムを自社向けにカスタマイズする工程に深く携わりました。人事として必要な機能要件を洗い出す一方で、現場の従業員にも『どのようなシステムであれば使いやすいか』とヒアリングを重ねていったんです。こうした一連の業務は、自分にとって非常におもしろく感じられました。システム導入の目的は、もちろん“業務効率の向上”のためです。ですが、私のなかではもっとシンプルに『面倒な業務をラクにしたい』という思いがありました。本当に必要な仕事に集中するためにも、ルーチン業務をいかに自動化できるか、といった視点が大切だと考えているからです。仕組みを整えるためには苦労や面倒はつきものですが、目指したい未来に向かって自分が手を動かし、成し遂げられることが何よりやりがいに感じるんです」
初挑戦の業務にもかかわらず、システム導入というプロジェクトを成功に導かれたわけですね。

「成功というと言い過ぎかもしれませんが、システム導入も含め、ベンチャー企業で人事としての自信がつき、次は上場企業でチャレンジしたいと考えました。小さな規模の企業で培った人事スキルは、外の世界でも通用するのか確かめたいと思うようになったんです。いざ転職してみると、ベンチャー企業とは環境や文化がまったく異なりました。とくに大きな違いを感じたのは、意思決定のスピード感です。前職では社長に直接相談し、その場で承諾が得られればすぐに実行へと移せました。一方で上場企業の場合、まず上席に確認を取り、経営会議にかけて、最終的に稟議を通すなど、承認のプロセスが何重にもあります。とはいえ、最初はギャップを感じたものの、この環境下で自分がどのように貢献できるのか、楽しみな気持ちが大きかったですね」
上場企業で人事を経験してみて、どうでしたか?

「とくに、上場企業であるからこそ、コーポレートガバナンスや内部統制の重要性を学びました。これまで自分が体当たりで経験し、習得してきた人事の知識やスキルが役立つこともわかり、自信も持てましたね。会社分割やグループ会社の人事を兼務するなど、新たな領域にも携わり、上場企業ならではの経験ができました」
とにかく、環境を変えて新しいことをやりながら、人事としてのキャリアを築き上げてきたのですね。

「そうですね、興味が広がるままに行動し、周囲が潜在的に求めている課題を模索し、課題解決に取り組み続けてきたことが、今の自分につながっていると感じます。そのなかで、私は人事のスペシャリストではなく、ジェネラリストを目指すようになりました。組織や事業を推進していくためには、組織や現場から求められる本質的な課題に向き合い、それを解決していく存在になることが大事です。そのためには、社労士の方々をはじめとするスペシャリストの力を借りながら、私自身はジェネラリストとして広く組織を見る必要があると感じます。正直なところ飽き性なので、特定の領域を突き詰めるよりさまざまな課題に幅広く取り組むことが性に合っている…という面もありますよ(笑)。今でも自分の強みを聞かれるとよくわかりませんが、会社や組織、そしてそこで働く人たちから求められることにとにかく応えるというのが、私の使命だと思ってます」
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会社概要
社名 | 株式会社J Institute |
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設立 | 2013年7月 |
事業内容 | 小中高生対象の英語塾運営, 英語教材販売 |
従業員数 | 500名 |
会社HP | https://jprep.jp/ |