IPO準備から人材育成まで、やるべきことは尽きない。成長を続ける組織の人事戦略
株式会社J Institute |
総務人事部 部長
安西龍志さん
2025.02.13
ベンチャーから上場企業までさまざまな経験を積み、人事の“ジェネラリスト”としてキャリアを築いてきた安西さん。後編では、IPOを目指す現在の職場での人事課題や取り組みに迫ります。人材情報のデジタル化による業務改革から、管理職育成、タレントマネジメントの推進まで、成長し続ける組織を支える人事戦略を語ってもらいました。
【前編ではどのように人事のキャリアを積み重ねていったのか、聞きました】
Profile

安西龍志
株式会社J Institute
総務人事部 部長
輸入建築資材の販売会社での営業職を経て、未経験から人事へ転身。労務業務からベンチャー企業での人事、そして上場企業での人事と幅広く経験。その後、フリーランスの人事を経て株式会社J Instituteに入社。人事部長として人事戦略を掲げながら、タレントマネジメントを推進する。
IPO準備中の会社で、タレントマネジメント推進を見据えた「システム導入」を実現
上場企業での人事を経験した後、現在のJ Instituteに至るまでの過程を教えてください。

「上場企業を退職し、フリーランスとして、複数の企業に対して採用領域を中心とした支援を行っていました。現在、売り手市場により多くの企業が人材確保に苦戦しています。そのなかで、従来のエージェントやハローワークに頼る採用手法から、スカウトメールを活用したダイレクトリクルーティングなど攻めのアプローチへの転換が求められるようになりました。しかし、何から始めればよいのかわからない、人事担当者の手が足りないといった悩みを抱える人事の方は少なくありません。そのような企業に対し、自社で一から運用できる体制づくりをサポートしたいと考えたんです。J Instituteに入社してからもフリーランス活動は続けており、単なる作業代行やコンサルティングで終わらせず、各社の自律的な採用活動に伴走できるように意識しています」
フリーランスの活動も続けながら、なぜJ Instituteへ入社したんですか?

「フリーランスとしてさまざまな企業の相談に乗るなかで、J Instituteに出会いました。IPOに向けて、採用活動の強化や人事評価制度の構築や改善運用を担う人材を求めており、ざっくばらんに話を伺ってみると、内部の状況は想像以上に課題が山積みでした。これは業務委託というかたちでは解決が難しく、また、IPOの対応に本格的に携わるのは初めてで、このような新たな挑戦ができる環境に魅力に感じたこともあり、入社を決意しました」
当時、社内にはどんな課題がありましたか?

「過去に所属していたベンチャー企業と同様に、社内に人事関連のデータが点在しており、人事部門がアナログ作業を余儀なくされていました。例えば、300名弱の正社員に対して年1回実施される人事評価はすべてExcelで管理されており、評価者と上長が1つのファイルを更新する形式だったため、ファイルの破損やバージョン管理の問題が常にあり、対応工数も莫大なものでした。さらに、人事部内の業務プロセスも不透明で、過去の経緯を尋ねても誰が把握しているのか判然としないという状態。まずは、どこにどのような情報があるのかを、一から整理することから始めました。整理が一段落したところで、次に目指したのはシステムによる情報の一元管理です。カオナビの導入を決めたのもこの頃で、入社から約半年程度かけて導入を実現しました」
システム選定の際に重視されたポイントは何でしたか?

「せっかくシステムを導入するなら、人事評価の構築・運用にとどまらず、将来的にタレントマネジメントの観点でデータを有効活用できるようにしたいと考えていました。そこで、もっとも重要な選定基準に置いたのは『社内の誰もが使いやすい』ことです。以前のシステム導入経験で直面した最大の課題は、業務の属人化でした。一部の担当者しか操作できないようなシステムでは、この問題を解消できません。また、人事部門の業務効率化だけを追求し、現場で使いにくいシステムを導入しても、社内に混乱や分断が生まれてしまいます。その点、カオナビは操作性やUIの見やすさに優れていた点が決め手となりました」
システム導入では、まさにこれまでの経験が活かされたわけですね。

「そうですね。一方で初めて挑戦することも少なくありませんでした。その1つが、英語講師の採用です。当社は英語塾を運営しているため、英語を母語とする従業員と接する機会が多くあります。私自身は英語が得意ではないため、資料の英訳や細かいニュアンスの理解が必要なコミュニケーションには、今も苦労していますね…。そこで、英語圏の文化や歴史的な背景を理解するよう努めると同時に、バイリンガルの人事スタッフも採用しました。過去の経験から、すべてを1人で解決しようとするのではなく、自分の苦手分野を得意とする人材と協力して対応していくことが大切だと考えています」
人事キャリアを積み重ねてきた今でも、やりたいことは尽きない
人事として、今後の取り組みや展望についても教えてください。

「当社の事業は現在、右肩上がりで成長を続けています。事業拡大に伴い、組織構築と人材育成が次の課題として顕在化してきました。とくに、次世代管理職の育成における研修の体系化に取り組みたいと考えています。人事部門では、本人の意欲や適性を踏まえ、適正な評価のもと管理職への登用を進めています。しかし、マネージャーに着任した後に『マネジメントの正解がわからない』と壁にぶつかる従業員は少なくありません。これは会社として解決すべき課題のひとつだと認識しており、人事である私たちが率先してサポートを行っていくつもりです。また、中途入社社員へのオンボーディングや社内研修も、今後はさらに強化していきたいですね。そのためにも、改めて当社が求める人物像や必要なスキルの定義から始めていくことが重要だと考えています。とはいえ、教育プログラムをいきなり内製で企画・実施するのはハードルが高いため、外部の協力を得ながら段階的に進めていく予定です」
先ほどお話に出た、タレントマネジメントについてはどう進めていく予定ですか?

「いまお話したこともタレントマネジメントの一環ですが、加えてカオナビを通じて社内のあらゆるデータを溜めていきながら、人員配置の最適化につなげたいと考えています。これまでは、従業員のバックグラウンドや入社後のキャリア、成果等についての人材情報は主に代表が把握しており、代表とのブレスト等を通じて各プロジェクトやポジションへの登用を行ってきました。しかし、組織の規模が拡大していくなかで、そのやり方では限界があります。データの活用によって、誰もがベストな意思決定をできる状態にしていくことが理想です。やるべきことは多くありますが、まずは自社の現状と向き合い、課題を的確に捉え、解決に向けて1つひとつ行動するのみです。他社の事例なども積極的に参考にしていきたいですね」
正解がないなかで施策を進めていくにあたり、他社の事例は気になりますよね。

「はい。業種や規模を問わず、人事部門が抱える課題には共通点が多いはずです。各社がどのような悩みを抱え、どうアプローチしているのかといった体験談を共有することで、自社の課題解決にも有用なヒントが得られると思っています。その観点で、カオナビのユーザーコミュニティ『カオナビキャンパス』も大いに活用していきたいですね。以前、ユーザー会に参加して機能設定の相談をしたとき、その場で他社の人事担当者とお話しする機会もあり、業務上の課題について意見交換ができたのが印象に残っています。人事は機密情報を扱うことも多く、社内になかなか相談できる相手がいないため、ときとして孤独を感じることもある仕事。そのため、些細な悩みでも共有できる場があることは、非常にありがたく感じています」
安西さんの人事経験が、他社にとってヒントになることもたくさんありそうですね。

「そうだと良いのですが(笑)。私も人事としてキャリアを積み重ねてきましたが、人事部門としてやるべきこと、やりたいことは尽きません。そう考えると、人事の仕事には『これで十分だ』というゴールは存在しないのかもしれませんね。それがこの仕事に感じる最大のおもしろさであり、『自分自身が成長し続けなければならない』という原動力にもなっています。今後も、課題解決に対して自分の価値を活かせる場で、挑戦を続けていきたいです」
編集後記
営業から偶然にも辿り着いた人事のキャリア。人事の仕事は安西さんとうまく合致し、ベンチャー企業から上場企業まで、キャリアを積み重ねていくことになるわけですが、営業職から環境を変えるという選択がなかったら人事の仕事はしていないかもしれません。
新しい挑戦をするために環境を変え、できることが増えていく。その結果、ジェネラリストのキャリアが極められていく。人事キャリアの一つのロールモデルを見た、取材でした。
気になる企業の人事と気軽に情報交換できます!
会社概要
社名 | 株式会社J Institute |
---|---|
設立 | 2013年7月 |
事業内容 | 小中高生対象の英語塾運営, 英語教材販売 |
従業員数 | 500名 |
会社HP | https://jprep.jp/ |